火星への道

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火星での通信衛星はどこを飛行するのか?

2013-07-06 22:55:40 | Weblog

6月27日のEmilyさんのブログで火星での通信衛星について考察しています。
Planetary and Space Science の "Optimal longitudes determination for the station keeping of areostationary satellites."をみて気になったので著者のJuan Silvaさんから論文のコピーを入手したそうです。
Emilyさんは、火星での静止軌道については、考えたことが無かったとのことです。私も初めての話なので興味深いです。
結論は、火星の任意の経度で静止軌道を維持するのは、地球で行うより大変だということです。

地球での静止軌道は、地表面から35,786キロメーター(42,155キロメーターの軌道半径に対応する)です。
赤道上の平面に有る場合は、緯度と経度ともに固定されて静止しているように見えます。 
火星の静止軌道高度は、地表面から13,634キロメーター(20,428キロメーターの軌道半径に対応する)です。

 

それで、地球や火星がまん丸(真球)で均質な物体であったら、この話はこれでお仕舞いとなります。
でも、地球や火星は、決してまん丸でも均質でもないので、お話が続くわけです。 

地球では、1つの位置にとどまろうとする衛星に対する主な影響は月の存在と地球の極の平滑化です。
これらの影響が結合して衛星の軌道の平面を傾けます。
さらに、地球の非球状の形は、衛星を経度の中で移動させます。
漂流割合が無視できる安定した2ポイント(75.3E、104.7W:インドとメキシコの経度に対応する)および不安定な2ポイント(165.3E、14.7W:ソロモン諸島の経度およびアフリカの西の端に対応する。)があります。
しかし、これらのポイントにない衛星は、不安定なポイントから安定したポイントへ経度の中で時間をかけて移る傾向があります。
安定したポイントは、地球の重力の影響です。

意図した位置にとどまるために、静止衛星は、上記の力を打ち消すためには、スラスターを使用しなければなりません。
スラスターの使用は、衛星が積んでる制限のある資源(燃料)を使い果たすことを意味します。
したがって、ステーションキーピングは、静止宇宙船の寿命を制限する1つ要因です。
地球軌道の中で静止衛星を維持するためのデルタvは、毎秒約50メートルです。そのほとんどすべては、経度中の東あるいは西を漂流させる傾向ではなく緯度中の北および南を傾ける傾向を打ち消すことに使用されます。
衛星が経度漂流を打ち消すために必要とされる最大のデルタvは、毎秒約2メートルです。
よって、経度の選択は、静止衛星の寿命にとって主な影響ではありません。

ところが、火星は、地球と比較して球状では無いので、火星の場合は地球と異なる条件であることをSilvaさんRomeroさんは論文の中で示しています。
そして、火星の重力場は、地球が持つより理想的な平滑からはるかに大きな偏差を持っています。
地球と同様、2つの重力最低値の上に安定したポイントおよび2つの重力最高値に不安定なポイントがあります。 

地球と異なり、火星では、安定したポイントと不安定なポイントの間の経度で衛星を静止させたければ、大きなコストが掛かります。
SilvaさんRomeroさんは、これらのスポットのうちの1つで静止宇宙船を置くのにデルタvが毎秒22メートル必要であることを推定しました。
さらに、地球で行うより火星に於いては、ステーションキーピングを非常に頻繁に行なわなければならないでしょう。

火星の静止軌道用の安定した経度は、地球とほぼ同じ経度に位置します。
火星での安定した経度は、17.92Wおよび167.83Eです。また、不安定な経度は、105.55W、および75.34Eです。
下図の経度との誤差がありますが、下図の数値は、十分に精査される前の数字です。 

現在の火星ミッションに関して--それらの経度のうちの1つの衛星は、通信衛星として使えるのでしょうか。
現在、私たちは、Curiosityが137.4°E、そしてOpportunityが6.0°Wにいます。
Opportunityは、比較的安定した経度の1つ近くです;好奇心は、安定な経度と不安定な経度の中間で比較的不安定な位置です。

下図は、地球での静止衛星がカバーする範囲を示しています。
静止軌道(35,786キロメーターの高度の)上の宇宙船は、その位置から表面を81度以内を見ることができます。
しかし、コミュニケーションのためにより実際に有用な限界は、約75度(青い実線)です。
科学的目的に使用された気象衛星データは、ヨーロッパのミーティオサット宇宙船の場合には60度(レッドライン)までさらに抑制されます。

しかし、火星では、CuriosityとOpportunityが火星表面でほぼ反対側に置かれているということです。
そして、火星での静止衛星は、かなりコストが掛かることが予想されている訳です。
したがって、直近で火星の静止衛星を期待しないほうが良いということです。
火星のために提案されたのは、約5000キロメーターの中間の高度でのテレコミュニケーション・オービターです。
着陸船と地球間で、それは、ほどよい長さのコミュニケーションを与えるということです。
*しかし、(but canceled)と書かれていますので、結論はどうなったのでしょうか?
私の読み取りが間違っていますでしょうか? 

どうも論文は、重要な部分で修正や訂正が有りますので かなり急いで提出されたものかも知れません。
それだけ、火星に関する研究の競争が激しいということでしょうか? 
でも、こうした議論が出てくる背景には、有人火星探査が現実のものになりつつあるということがあるのでしょうね。
全くの素人ですが、面白かったです。Emilyさんありがとう!

コメント (6)
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