12月9日のWhat'sNewにCuriosityの成果が報告されています。
9月27日の報告に次いでのものとなります。
当ブログ「地表の土に2%の水分!でも、荷造りはまだ早いとのことです!」 でも紹介してます。
研究の主要舞台は、下記のところです。


研究者によって9日のScience Expressに6報のレポートが掲載されており、the American Geophysical Unionでの発表もありました。
主な成果は、以下の通りです。
1.火星の岩の年代測定
Curiosityが2番目にドリルした"Cumberland,"から採取したサンプルで年代測定をし、その年代を38.6億年前から45.6億年前と見積もりました。
(ドリルによるサンプリングは、Sol279でした。)
これは、Galeクレーターの岩の年代の当初予測の範囲にあります。
使用された年代測定方法は、地球で60年前から使われている方法ですが、火星では初めて使われたものです。
それは、カリウムのアイソトープの崩壊によりアルゴン(不活性ガス)にゆっくりと変わることを利用した放射分析法です。
岩が溶かされた場合、アルゴンは逃げますが、岩が再び固まる時に蓄積するアルゴンの量を測定することで年代を決定します。

また、Curiosityのロボットアームの届く範囲で岩の中のガスへの宇宙線の影響を測定することで"Cumberland,"が地表面にでた年代を推定しました。
3つのガスの測定によって、6000万~1億年前に地表面に出たことが分かったそうです。
この結果は、Curiosityが観察した風食の手掛かり(岩の比較的厚い層で風に吹かれた砂で砕かれたパターン)と結合しました。
下図のように侵食された層は、後退し、垂直の面あるいは急斜面を形成します。
2.有機物の存在
"Cumberland,"で他の場所のサンプルと比べて高濃度の有機物を検出しました。
ただ、地球から持ち込んだものではないと言う確信が持てないようです。
3.生命好適環境について
最初にドリルした"John Klein,"のサンプルを分析した結果、生命の生存に好適な環境であったことが確認されました。
(ドリルによるサンプリングは、Sol182でした。)
3月14日の当ブログ「ドンピシャ 大当たり!」で 紹介した内容の続報でしょうか?
Yellowknife Bayの粘土に富んだ湖底生息地は、生命のための重要な化学元素を提示し、それに加えて、あまり酸性でないまたは塩辛くない水およびエネルギー源を提示します。
エネルギー源は、多くの岩を食べる微生物によって地球で使用されるタイプのものです:電子の受取役である硫黄かつ鉄を含んでいる鉱物のミックス、およびバッテリーの二端子のように、電子の供与体である他のものです。
結果として、Curiosityは、生命を維持することができる古代の環境を立証する証拠を見つけるという主要目的を遂行しただけでなく、さらに、生命の好適環境が予期したより最近に存在し、何百万年もの間続いた証拠を提供しました。
ひとつの重要な問題は、Yellowknife Bayで早い時期に形成された粘土鉱物の生成源がどこであるかです。
Galeクレーターの外側で生成した粘土鉱物がGaleクレーターの縁を越えて流れてきたか、または、岩の微粒子が水に運ばれてGaleクレーター内部で堆積し粘土鉱物が生成したかということです。
化学的風化作用が生じたことを岩の中の化学元素が示すので、もしいくつかの火山の鉱物を粘土鉱物に変える風化作用が上流に起こっていれば、カルシウムとナトリウムのような容易に浸出する元素の損失は顕著であると考えられます。
ところが、科学者は、今回の分析でそのような浸出は見られないという結論を得ました。
従って、粘土鉱物は、Galeクレーター内で堆積してから生成したと考えられます。
さらに、今回の発表では、堆積物の中で橄欖石が少なく、磁鉄鉱が多いことが分かりました。
それは、流れに洗われた後、粘土に変わった岩を示唆します。
smectiteの存在は、粘土が生じた条件に関して伝えます。
smectiteは、湖沼堆積物中の典型的な粘土鉱物だそうです。
それは一般に膨潤粘土と呼ばれ -- そこに足を踏み入れるとブーツにくっつく種類です。
地球では、smectitesを見つける所に生物が豊富な環境を見つけることができます。
*smectite(スメクタイト)については、こちら
http://www.hojun.co.jp/51_what_smectite.html
今回の結論では、Yellowknife Bayでの生命に適した条件が何百万年から何千万年持続したかもしれないことを示唆してます。
その時間の間、川と湖が恐らく現われて消えたでしょう。
更に表面が乾燥していた時でさえ、岩の破砕の中に見られた地下水によって置かれた鉱脈によって示されるように、地表下の土壌は湿気ていたと考えられます。
現在得られた観測等から微生物好適環境が長い期間継続していたことを推定する根拠が得られたとのことです。
更に、Yellowknife Bayと似た環境であれば、火星表面の広い範囲で微生物好適環境が存在していたと考えられるとのことです。
4.放射線測定結果
6月3日の当ブログ「RADは、かく語りき 」でお伝えした情報の続報というかまとめです。
結果は、放射線の影響が大きいことが再確認されました。

有人火星探査を行う場合、地球-火星間を180日で移動することとし、火星に500日間滞在すると想定した場合、上図のデーターから約1,000ミリシーベルトの放射線を受けることとなります。
1,000ミリシーベルトという数値は、放射線被曝により、がんで死亡する確率を5%以上に高める値です。
ISSでの生涯実効線量制限値では、3パーセント程度で制限されています。
非常に重要な問題ですが、具体的な数値を確認できたことは、前進と受け止めています。
放射線の危険を避けるための英知が発揮されることを期待しています。
*事務局は、この研究は、将来の地球上での生活環境の改善にも役立つと思っています。
下図は、火星の地表面でのRADの測定結果です。
測定期間は、横軸で2012年8月から2013年6月までです。単位は、縦軸でマイクログレイです。
日々の変化は、大気の影響を表しています。
太陽風の大きなイベントは、1回だけで強度も弱かったです。Curiosityが着陸してから太陽活動が低下しており、その原因は、不明とのことです。
過去の例からすると300Sol間で8回くらいあっても良いとのことです。
その他、急激な減少が見られるのは、Sol50、97、208、259で原因は太陽からの惑星間コロナ質量放出によるシールドの影響です。
これは、Forbush decreasesと呼ばれるそうです。

5.これからのCuriosityへの期待
Curiosityのドリルで掘れる深さは、約5cmです。
その深さだと生命や有機物が存在していても放射線の影響で6億5千万年で1,000分の1まで減少すると考えられています。
しかし、今回、風食によって6000万~1億年前に地表面に出た場所を確認しましたので、そのような短い時間であれば、生命が存在していたとするならば、Curiosityの能力でその有機物の発見が可能であると言うことです。
研究陣は、生命はなくても隕石に乗って宇宙空間から飛来した有機物の欠片でも見つけたいと願っているようです。
6.有人火星探査への期待
着々と具体的な情報が集まりつつありますので、有人火星探査を行うための課題が明確になってきています。
課題が分かれば、解決も難しいことではないでしょう。
人類は、今までもそうしてきたのですから・・・
*レポートは、下記の通りです。「Dec. 9, 2013, Science Magazine Issue」
・Volatile and Organic Compositions of Sedimentary Rocks in Yellowknife Bay, Gale Crater, Mars
Abstract | Reprint
・Mars' Surface Radiation Environment Measured with the Mars Science Laboratory's Curiosity Rover
Abstract | Reprint
・Elemental Geochemistry of Sedimentary Rocks at Yellowknife Bay, Gale Crater, Mars
Abstract | Reprint
・In Situ Radiometric and Exposure Age Dating of the Martian Surface
Abstract | Reprint
・A Habitable Fluvio-Lacustrine Environment at Yellowknife Bay, Gale Crater, Mars
Abstract | Reprint
・Mineralogy of a Mudstone at Yellowknife Bay, Gale Crater, Mars
Abstract | Reprint