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少年院の卒業式

2008年03月17日 | 蕪勢
 少年院の卒業式に参列した。
 正確には「中学校卒業証書授与式」という。
 少年院の教育は,通常の場合でも,仮退院までに概ね1年程度かかる。中学3年生の途中で入った場合は,その期間は,卒業時期をまたがることになる。
 不登校を重ね,ほとんど勉強をして来なかった中学生も,ここでは勉強せざるを得ない。目に見えて学力は上がる。漢字を覚え,計算に長け,文字式,英語にも親しむことになる。何よりも,そうした学力向上により,物事を考える力がついてくる。そして,3月には卒業時期となる。
 だが,残念ながら,元いた中学校の同級生達と一緒の卒業式には参加できない。
 そこで,この少年院では,保護者,来賓を招いて,盛大な「卒業式」を催し,みんなで卒業を祝うのである。それぞれ出身中学校の校長先生から,一人一人に卒業証書が手渡されるのだ。
 この日,24人の中学3年生が,卒業の日を迎えた。私が送った4人の少年もこの中にいた。
 在校生,保護者,来賓,講師,教官ら多数が着席する体育館。卒業生達は,一人づつ,大きく手を振り,しっかり足を挙げ,入場してきて,前二列に着席する。院歌斉唱等の後,卒業生が3人づつ壇上に登り,一人一人,出身校の校長先生から卒業証書が読み上げられて授与される。校長は,にこやかに大きな声で「おめでとう」と言葉を添える。生徒らの登壇,授与,降壇,着席までのきびきびとした動作は気持ちがいい。
 式辞,祝辞,来賓紹介,記念品授与,生徒代表の「贈る言葉」と続く。
 圧巻は,卒業生24名が全員壇上に登って披露した「僕たちの決意」であった。一人づつ,スポットライトを浴びる中,しっかりとした大きな声で述べる。これまでの非行と生活態度を振り返ったこと,被害者に大きな心身の傷を与えたこと,家族を心配させたことを訴え,そして,更生への固い決意を力強く誓うのである。多くの子ども達は「お父さん,お母さん,本当に,ごめんなさい!」と,ひときわ大きな声でお詫びの言葉を加える。
 審判の時のあの不安そうな顔,泣きわめいた顔を思い起こしながら,胸の熱くなるのを感じた。保護者席からは,すすり泣く声も聞こえる。
 式のあと,見送ってくれた卒業生と握手を交わす機会があった。どこの中学生にも負けない晴れやか顔が何よりも嬉しかった。ここまで指導するには,少年院の教官や講師たちは大変なご苦労があったと思う。
 少年院教育の尊さを改めて感じさせてくれた1日であった。
(蕪勢)

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