日本裁判官ネットワークブログ
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1 私が裁判官であった頃,3~4年ごとに転勤したが,どこの裁判所もとても忙しかった。その後弁護士になってみると,弁護士も思っていた以上に多忙である。そして両者の仕事の大変さはやや性質が異なる。裁判官は事件がどんなに難しくて判断に迷う場合であっても,判断して結論を出さなければならず,逃げるわけにはいかない。これは結構苦しいことである。また裁判官が不足している現状では,土,日も含めて判決書マシーンとなることを強いられている。スポーツや趣味などもなかなか思うように楽しむ余裕はない。このことは,このたびの司法改革においても余り改善されていない。裁判官の仕事は現状ではかなり肉体労働化しており,その意味でのハードな頑張りを要するが,本来は知的で楽しい仕事であるということができる。

2 他方弁護士も皆さん多くの事件を抱え込んで,多忙な日々を送っている。勿論事件を断ることもできないわけではないが,大変な事件だからといって安易に事件を断るというわけにも行きにくい。時に少し親切過ぎるのではないかと思い悩むこともある。一応親切をモットーにしているので,ニッチもサッチも行かなくなることがある。時に「法曹の道は修羅の道」と自分に言い聞かせることで,困難を乗り切る強い心構えが必要となることもある。

3 法曹の道は,人の悩みを飯の種にしている。自嘲気味に「人生裏街道」ということもある。民事紛争や家族間の対立,そして犯罪などを扱って生活費を稼ぐのであるから,平坦な道である筈がない。中国の「白髪三千丈」風に大げさに言えば,「嘆息三千回」ということになる。ストレスは甚だ大きい。しかし嘆息してばかりもいられない。「法曹の道は修羅の道!平坦である筈がない!」と腹を括ってかかると,思ったよりも平坦に感じることもある。

4 私の親しい裁判官や弁護士で,自ら死を選んだ人は決して少なくない。その理由はほとんど正確なことは分からない。人に語れない悩みもあったかも知れないが,しかしそのような選択は何としても避けなければなるまい。残された家族が余りにも悲しい思いをすることになる。万一仕事の悩みなどで行き詰まって,死を選びたい衝動に駆られるときは,裁判官や弁護士を辞める道を選べばよいのである。いやな仕事から潔く逃げ出すのである。死ぬほど嫌な思いをするのであれば,仕事を辞めることを,家族は喜んで許してくれるに違いない。

5 先ころ脳科学者茂木健一郎という学者が,「笑いの効用」について,笑うことはいろいろな効用があると話していた。脳が活性化し元気が出るというのである。その放送を見て,悲しいときにも苦しいときにも微笑みを忘れず,鼻歌を歌おうと思った。その心がけが生きる力を与えてくれるときがあるかも知れない。わが人生を笑いと鼻歌人生にしてやろう。多少苦しいからと言ったって,人生どうせ大したことはない。もっともこれで人生に活力が増すことになるかどうかは,やってみてからの話である。(ムサシ)


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