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2014年1月と2月の観劇記録

2014年03月12日 | くまちん

  上記期間の観劇記録をまとめると、以下の通り。

   ◎は大満足、○満足、△まあ満足

  <>内の出演者はあえて一般的な知名度のある方に絞っています。あしからず

  1月 ◎こまつ座「太鼓たたいて笛吹いて」(紀伊國屋サザンシアター)<大竹しのぶ、神野三鈴、山崎一>

      「聖戦」「大東亜共栄圏」という美しい「物語」を作り、「物語」に合わせ、従軍作家として「太鼓たたいて笛ふい」た、作家林芙美子。終戦直前の時局講演会で「最早きれいに負けるしかない」「でもそんな技量と度量のある指導者はいない」と口走る林芙美子。戦後は、自らの戦争責任を果たすように庶民の物語をひたすら書きまくり「緩慢な自殺」を遂げた林芙美子。「司法改革」「法曹一元」という美しい「物語」を作り、美しい「物語」に合わせ、御輿を担いで太鼓たたいて笛ふいた私にグサッと刺さる芝居である。我々は、司法改革を「きれいに負ける技量と度量」を持った指導者を抱けるのだろうか。私は、司法改革のB級戦犯として、どのように「緩慢な自殺」を遂げて行こうか。

      大竹しのぶさんの圧倒的な熱量は言うまでもないが、一昨年の年末に見た「組曲虐殺」とかぶる役柄で神野三鈴さんと山崎一さんが好演。神野三鈴さんのファンクラブに入ってしまいました。笑。

      日弁連職員きっての演劇通Mさんとの立ち話で、お互いに見た芝居は違えども、今年に入ってのベストがこの作品であることは見解が一致した。

      3月には、これも林芙美子が登場する「女三人のシベリア鉄道」(劇団銅鑼、森まゆみ原作)を鑑賞する予定。

          ○世田谷パブリックシアター企画「トライブス」(新国立劇場小劇場)<中嶋朋子、田中圭、大谷亮介、鷲尾真知子>

           翻訳劇はどうもピンとこないものが多くてしばらく遠ざかっていたが、この作品は良かった。家族内で唯一聴覚に恵まれない主人公の疎外感。途中で聴覚を失ったため、聴覚障害者たちの仲間から疎外感を覚える主人公の彼女。コミュニケーションについて考えさせる好作品。中嶋朋子さんの手話が美しい。緊迫した場面で、主人公たちに敢えて手話のみで会話させる脚本の素晴らしさ。主人公たちの疎外感を、観衆も共有することになるのだ(パンフレットには、その場面のみ台本が抜き刷りされている)。

         △小野寺修二カンパニーデラシネラ「ある女の家」(新国立劇場中劇場)<浅野和之>

          「俳優・浅野和之」を期待して行くと裏切られるダンスパフォーマンス+無言劇。でも、「浅野さんって、あんなに踊れるんだ!」という嬉しい発見。

2月   △トム・プロジェクト「案山子」(下北沢本多劇場)<近藤正臣、田中美里>

        戦争が終結したにもかかわらず、案山子の兵隊をおとりに上陸した米兵と戦おうとする集団のお話。田中美里演じる戦争未亡人は、髪を切って入隊を志願して断られ、義父とともに案山子の軍隊を率いるのだが、国防婦人会の竹槍訓練やバケツリレーには、冷静な批判を加える理性を残している。ある集団に帰属することで自分の「居場所」を見つけた人々が、その所属する集団のおかしさに半ば気づきながらも、そこから離れられない怖さを感じさせる。

        △劇団NLT「OH!マイママ」(旭川市公会堂)

         正統派のフランス喜劇。比較的展開も読みやすく、演劇鑑賞団体向けの演目ではある。20年以上前の初演の頃とは、性同一性障害についての捕らえられ方が大幅に変わり、しんみりとした味わいが加わったと思われる。

         ○Bunkamura「もっと泣いてよフラッパー」(シアターコクーン)<松たか子、松尾スズキ、りょう、串田和美>

         20年代のシカゴを舞台に大人のエンターテインメントに徹したかつての「自由劇場」の代表作品。3時間20分の長丁場だが理屈抜きに楽しめ、長いと感じさせない。松たか子さんを間近に見られて感激。串田和美さんの世界に迷い込んだような松尾スズキさんが、一際可笑しい。

                                                                                      (くまちん)

 


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