日本裁判官ネットワークブログ
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1 このブログの「毛利甚八さんを悼む」という追悼文を読んで,種々の感慨が湧いてきて,私も少し書きたいと思うようになった。漫画「家栽の人」は私の愛読書であり,何度も繰り返して読んだ。テレビでも「家栽の人」がドラマ化されて放送され,俳優片岡鶴太郎が主人公の桑田判事を演じた。これらは全てビデオに録画した。
2 私が鳥取地家裁米子支部に勤務していた平成5年ころ,毛利さんが私を訪ねて下さったことがある。毛利さんは検察関係の取材で鳥取地検米子支部長にお会いしたとのことであった。私は格別取材を受けたわけではないが,楽しくお話しした。そのとき毛利さんは色紙を書いて下さり,わが家の家宝として額に入れて,客間に飾ってある。
3 私は裁判官のころも弁護士になってからも,離婚調停などの家事事件や少年の非行事件などを多く担当してきた。そして弁護士になってからは,「家栽の人」の漫画をコピーしてお母さんに渡して,「これを読んでいただけませんか。」と言ったことが何度もある。もっともその事件の状況に応じた内容のものを選んでいることはいうまでもない。
4 私が好きな「家栽の人」の漫画に「ホウセンカ」(「家栽の人」第4巻CASE7)がある。母が自分を捨てて家出したと誤解して,母を恨んでいたある少年が非行に走り,その鑑別所の心理テストに,「私はホウセンカが好きです。」と書いているのを目ざとく桑田判事が見つけたことがきっかけとなって調査した結果,少年が3歳のときにお母さんと一緒に種を撒いたことから,今でも家の庭にホウセンカが沢山咲いていることが判明した。「ホウセンカが好きです。」と少年が書いたのは,少年が今も母を恋しく思っているためではないかと見抜いた桑田判事が,審判の日に審判廷の隣室に母を待機させていたことから,母を「絶対覚えてねえ」と言い張る少年が,隣室に母が待機しており,希望すれば会うことができると知って大泣きし,母への誤解も解けて更生するという話である。この話は何人ものお母さんにコピーを配布した。
5 また私は以前このブログに,「家栽の人」がテレビで放送された「スイセン」を取り上げて,「水仙の 香(か)に君がいる 暖かさ」という俳句を巡る一文を書いたことがある。ある裁判所長が転勤されることになり,夫婦裁判官であった私たちがご挨拶に伺ったところ,所長の奥さんから,丁度所長官舎の広い庭に咲き誇っていた日本水仙を一抱えも切って下さったときのささやかな会話を書いたもの(2008年(平成20年)2月1日「水仙のこと」)である。所長を少し慌てさせてしまったという笑い話であるが,このたび久しぶりに読み返して,毛利さんを忍んだ次第である。
6 毛利さんが書かれた本で,まだ読んでいないものも多いので,少しずつ読むことにした。それにしても若過ぎるご逝去であり,甚だ残念な思いが強い。心からご冥福を祈りたいと思うのである。(ムサシ)



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