1 私の所属している弁護士会が,この9月1日に「医療仲裁センター」を立ち上げた。そしてその直前の8月29日(土)に設立記念シンポジウムが開催された。会場は満員の盛況で熱気に包まれた。新聞やテレビでも報道された。医療仲裁センターは,弁護士が調停者(仲裁人)となって医療事故による紛争を話し合いにより解決しようというものである。「医療ADR」ともいう。「ADR」とは,「裁判外紛争解決手段」のことであり,英語の「Alternative Dispute Resolution 」のイニシャルをとったものである。
2 シンポジウムの冒頭に厚生労働省の係官が,この医療仲裁センターの立ち上げに注目しているという挨拶をした。またシンポ終了後の懇親会での挨拶でも,ある大学教授から最高裁も同様に注目しているという紹介がなされた。
3 一般の「仲裁センター」は全国的にも多く立ち上げられているが,医療仲裁センターはまだ少ない。2008年9月に東京の三弁護士会の中に,合同で最初の医療仲裁センターが設立されたばかりであり,その後名古屋弁護士会も設立しているということであるので,あるいは当地で3例目ではないか(間違っているかも知れない)と思われるような状況である。
4 従来から調停は,主として調停者が両当事者を説得するという「説得型」で行われてきたのであるが,この方式では,調停が成立した場合にも,充分納得できないままに強引に調停に応じさせられたなどという不満が残ることが多いとされており,医療ADRにおいては新しい試みとして「対話促進型」調停が目指されている。これは調停者が両当事者の対話を促進し,両当事者が自ら解決案を模索してゆくという方式である。対話を促進することはとても意義のあることではあるが,説得しないで肝心の結論(損害額の合意)にどのようにして到達できるのかという難しさがある。そのため高度な研修や訓練が必要であり,当地でもこの2年余り,積極的にそのための様々な研修が行われ,私も熱心に参加した。
5 私はこれまで弁護士会の一般の仲裁事件は結構沢山担当してきたが,「医療仲裁センター」の担当者(調停者)としても登録したので,そのうち難しい医療過誤事件が配点されることになるだろう。上手く解決できるかどうかは事件を担当してみなければ何とも言えない。弁護士は裁判官と同様に,医療に関しては素人に過ぎない。「誠実に粘り強く」解決を模索するしかないだろう。
いずれ上手く解決できた事例を報告できればと思ってはいるが,軽率な報告は心して避けなければならないだろう。(ムサシ)
2 シンポジウムの冒頭に厚生労働省の係官が,この医療仲裁センターの立ち上げに注目しているという挨拶をした。またシンポ終了後の懇親会での挨拶でも,ある大学教授から最高裁も同様に注目しているという紹介がなされた。
3 一般の「仲裁センター」は全国的にも多く立ち上げられているが,医療仲裁センターはまだ少ない。2008年9月に東京の三弁護士会の中に,合同で最初の医療仲裁センターが設立されたばかりであり,その後名古屋弁護士会も設立しているということであるので,あるいは当地で3例目ではないか(間違っているかも知れない)と思われるような状況である。
4 従来から調停は,主として調停者が両当事者を説得するという「説得型」で行われてきたのであるが,この方式では,調停が成立した場合にも,充分納得できないままに強引に調停に応じさせられたなどという不満が残ることが多いとされており,医療ADRにおいては新しい試みとして「対話促進型」調停が目指されている。これは調停者が両当事者の対話を促進し,両当事者が自ら解決案を模索してゆくという方式である。対話を促進することはとても意義のあることではあるが,説得しないで肝心の結論(損害額の合意)にどのようにして到達できるのかという難しさがある。そのため高度な研修や訓練が必要であり,当地でもこの2年余り,積極的にそのための様々な研修が行われ,私も熱心に参加した。
5 私はこれまで弁護士会の一般の仲裁事件は結構沢山担当してきたが,「医療仲裁センター」の担当者(調停者)としても登録したので,そのうち難しい医療過誤事件が配点されることになるだろう。上手く解決できるかどうかは事件を担当してみなければ何とも言えない。弁護士は裁判官と同様に,医療に関しては素人に過ぎない。「誠実に粘り強く」解決を模索するしかないだろう。
いずれ上手く解決できた事例を報告できればと思ってはいるが,軽率な報告は心して避けなければならないだろう。(ムサシ)