北海道新聞2024年6月19日 10:30
母熊が子熊に語りかける様子をイメージした「親子熊」(部分)=2004年制作
国立アイヌ民族博物館では29日から第8回特別展示「生誕90年記念 藤戸竹喜の世界展」を開催します。
藤戸竹喜は1934年(昭和9年)にオホーツク管内美幌町で生まれ、旭川市近文で幼少期を過ごしました。父は「アイヌであればこそ熊を知り、アイヌだからこそ彫り上がりに何かがあるのだ」と語る木彫り熊職人。藤戸は父のもとで木彫り熊を彫り始め、その後は阿寒に移り、64年に30歳で民芸品店「熊の家」を構えました。
命ある木に敬意を払い、作品を彫る前はカムイノミ(神への祈り)をし、木を前に頭の中で考えて作品を構成し、デッサンは一切せず、イメージを大切に思いのまま彫り進めていったといいます。
納得がいくまで手抜きをせず作品に向かい、70年代には熊だけでなくエカシとフチ、狼(おおかみ)や鹿、狐(きつね)などの野生の動物を題材にし、90年代には先人たちの等身大の肖像彫刻や海の生き物と、制作の幅を広げていきました。
2000年代からは親子愛をテーマに・・・・・・・
<文・霜村紀子=国立アイヌ民族博物館研究交流室長、写真・露口啓二>