まっぷるトラベルガイド2024年2月14日
自由の国アメリカは、各国からの移民たちが自由と仕事を求めやってきたことに始まります。
多民族国家アメリカを形成している移民たち。彼らはどのような理由があって海を渡ってきたのでしょうか。そのさまざまな出身地の移民のうち、アジア系・ヒスパニック系からの移民が増加している時代背景とは。
アメリカの移民の歴史と経緯①~ヨーロッパ人がアメリカに来た理由と時期
アメリカの多様な人種構成を端的に物語るのが、ニューヨーク市です。
白人の割合は42.7%と半数以下。ヒスパニックとラテン系が29.1%、黒人が24.3%で、アジア系は13.9%と少なくなっています。インディアンおよびアラスカ先住民が0.4%、ハワイ先住民およびその他太平洋の島々の人が0.1%です(※ヒスパニックは黒人と白人を含みます。そのため割合の合計は100%を超えます。)。
最初にやってきたアメリカの移民は、インディアン
アメリカに最初にやってきた移民は、氷河期に陸続きだったベーリング海峡を渡ったインディアンです。彼らはそれぞれ独自の文化を発展させながら、北米から南米へと散っていきました。今日彼らがニューヨーク市にほとんどいないのは、後にヨーロッパ人に、徐々に追いやられたからです。
そのヨーロッパの移民たちが、主に北西ヨーロッパから植民地開拓者としてやって来たのは1600年代。最も多かったのがイギリス人で、さらにドイツ人、オランダ人と続きました。この動きと前後してカナダとミシシッピ川流域(ルイジアナ)にフランス人が、西海岸南部にスペイン人が入っていきました。
アメリカの移民の移り変わり
アメリカの移民の流れは1760年から1815年にかけて、ヨーロッパとアメリカとの間で起きた断続的な戦争のために停滞しました。ただし、これは一時的なことに過ぎませんでした。
その後1914年に第一次世界大戦が始まるまで、移民の移住は増加し続けます。特に第一次世界大戦が近づくと、南欧や東欧からの移民が多くを占め、イタリア、オーストリア・ハンガリー、ロシアの人々が多かったのでした。
その大きな理由は18世紀から始まり、約150年間にわたり進んだ産業革命です。伝統的な農民が、急速に発達する都市と工場にひかれ北米へ向かったのです。
移民のピークは、ヨーロッパでの飢饉の時期
移民が増加した1番目のピークは1840年から60年にかけて。ヨーロッパでの飢饉と人口増が原因で、一説には毎年約500万人が故郷を離れたためです。特にジャガイモ飢饉で国家存亡の危機に立たされたアイルランドからの人々が多かったといいます。
他には1848年のドイツ革命の失敗で、国外へ逃れたドイツ人の多くがアメリカを目指しました。続く1880年代には、東欧でユダヤ人の迫害が横行したため、彼らもやはりアメリカへ身を寄せました。
アメリカの移民の歴史と経緯②~マイノリティが アメリカに来た理由と時期
アフリカ人たちは、南部の大農場で働く労働力として強制的に連れて来られました。奴隷と呼ばれるアフリカ人たちは、劣悪な環境で海を渡ってきました。目的地はカリブ海地域や南米の北東部沿岸、そしてアメリカです。
こうして連れ出されたアフリカ人は約2000万人といわれており、このうち当初からアメリカ合衆国に渡った黒人は50万人未満だったとされます。
アメリカ南部から北部へ向かう黒人たち
南部のプランテーションに多かった黒人たちのなかには、1865年の奴隷制廃止後も南部に残る人々がいた一方で、半数以上が仕事と自由を求めてアメリカ北部へ向かいました。特に1916年以降の大移動をグレイトマイグレーションと呼び、その人数は100万人以上と考えられています。
アメリカが移民の制限に乗り出す
一方アジア系の移民の場合、ゴールドラッシュで西海岸に急増していた中国人の移民をアメリカは制限しました。1882年には中国人移民が、1924年には日本人に加え、東欧と南欧からの移民まで制限されました。
この流れは1943年の中国人移民制限廃止と、1965年の移民法改正まで続きます。
そして近年急増しているのは、アジア系に加えてヒスパニックの移民です。その理由はアメリカの産業が多様化し、サービス業の割合が高まっていることと無関係ではないでしょう。
アメリカの移民マイノリティは、アメリカのどこに暮らしているのか?
※拡大できます
【出典】William H. Frey analysis of US Census population estimates, 2018, Brookings Metropolitan Policy Program
これは、アメリカの人種割合の平均値と比べた図です。
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“合衆国”というように50州からなるアメリカは、それぞれが独自の州憲法、政府組織を持ち、強い個性を放つ、いわばモザイク国家。それだけにアメリカの素顔は日本人にはなかなかわかりにくいもの。アメリカを知るには俯瞰的に眺めるのではなくそれぞれの州について知らないと、国の姿が見えてこないのです。本書では、それぞれの歴史や特徴を豊富なイラストとともに紹介。
さらには、日本でも毎回大きく報じられる4年ごとの大統領選挙について、各州のページで選挙人の数と民主党と共和党どちらが優勢であるか(2020年7月時点)を説明し、巻末には、大統領選挙のしくみ解説や歴代大統領のデータなども掲載。大統領選への理解も深まります。
【見どころ―目次より抜粋】
1章 北東部
■各州紹介
■<歴史解説>自由と仕事を求めた移民たちが、多民族国家アメリカを形成していった。
■<歴史解説>アメリカの根底にあるゴーウエスト思考、東海岸から始まった領土拡大の歴史。
■<コラム>4大プロスポーツのチームがない州
2章 南部
■各州紹介
■<歴史解説>南北戦争とリコンストラクション 敗北した南部州は深い傷を負った
■<歴史解説>人種差別を跳ね返した公民権運動 キング牧師の夢が叶う日はいつ
■<コラム>地下鉄道
3章 中西部
■各州紹介
■<歴史解説>アメリカ2大政党、民主党と共和党はいかにして今日の姿になったのか
■<コラム>アメリカの地勢
4章 西部
■各州紹介
■<歴史解説>銃による犯罪、学校や公共施設での銃乱射事件が止まらない。それでも銃規制が進まない理由。
■Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)
巻末資料
■<大統領選挙しくみ解説>民意がストレートに反映される国政、一年かけて国民が自らのリーダーを選ぶ
■歴代大統領
■人口ランキング
■面積ランキング
■銃規制(拳銃の公然携行の可否)/同性婚
■死刑の存続と廃止/消費税率(セールス・タックス)
【監修者】デイビッド・セイン
アメリカ生まれ。証券会社勤務を経て来日。30年以上にわたり翻訳や英語指導に従事、自身が代表を務めるAtoZ 英語学校で教鞭をとるかたわら、英語学習執筆、教材プロデュース、Webコンテンツ制作、動画制作と幅広く英語教育事業に関わる。NHKレギュラー出演ほか、日経・朝日・毎日新聞などにも連載。主な著作に『1日15分18日で英語の達人に 魔法の英語脳トレ』(InteLingo)などがあり、現在まで累計400万部を超える著書を刊行。
https://www.mapple.net/articles/bk/26263/?pg=1