北海道新聞 社説(10月20日)
アイヌ民族の遺骨のずさんな管理が、北大でまたしても発覚した。
北大は、研究者が戦前から戦後にかけて研究目的で集めた遺骨の一部をそれぞれの埋葬地に返還してきたが、別人の骨と取り違えた疑いが出ている。
信頼性を揺るがす事態だ。解明を急ぎ、返還先に経緯を説明する責任がある。保管する一体一体を再度、記録と照合し直すべきだ。
北大は、保管する千体余りのうち、35体を2001年までに北海道ウタリ協会(現・北海道アイヌ協会)の各支部と旭川アイヌ協議会に返還した。
ところが、あらためて調査した結果、返還したものと同じ識別番号が付いた遺骨が学内に5体存在することが明らかになったという。
本物は返した方か、それとも大学に残る方か、判断できない状態だ。
アイヌ民族の遺骨は現在、全国11大学が1635体を保管している。遺骨の返還要求に最大限応え、それでも実現しなかった遺骨は、胆振管内白老町に創設する慰霊施設に納骨するのが政府の方針である。
今回発覚したような取り違え疑惑が生じるようでは、返還手続き自体、信ぴょう性を失いかねない。
保管する11大学には遺骨と収集記録の照合や埋葬地、個人の特定などに慎重を期して対応することを強く求めたい。
作業が困難だとして返還を早々に断念し、慰霊施設にまとめて納骨することは断じて許されない。
遺骨返還をめぐっては、高橋はるみ知事が今月、菅義偉官房長官に慰霊施設の設置を20年から18年に前倒しするよう要請した。
官房長官から前向きな回答を得たとされるが、北大では今年3月にも、個別の箱に複数の頭骨を収めるなどのずさんな管理が発覚している。
知事がこうした状況を知ったうえで前倒しを要請したのであれば、なし崩し的に決着を図ろうとしていると受け取られても仕方ない。
遺骨が大学に保管されていることで祖先の供養が妨げられ、憲法が保障する信教の自由が侵害されているとして、北大は日高管内浦河町出身のアイヌ民族から返還訴訟も起こされている。
政府は遺骨の問題を大学任せにせず、アイヌ民族と有識者の委員会を設置して助言を得るなど、返還が適正に行われるか、外部の目でチェックする必要がある。
先祖の遺骨を自分たちの元に返してほしいという当然の願いをこれ以上、踏みにじってはならない。先住民族の尊厳にかかわる問題だとの認識を持ち、返還作業を着実に進めてもらいたい。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/499046.html
アイヌ民族の遺骨のずさんな管理が、北大でまたしても発覚した。
北大は、研究者が戦前から戦後にかけて研究目的で集めた遺骨の一部をそれぞれの埋葬地に返還してきたが、別人の骨と取り違えた疑いが出ている。
信頼性を揺るがす事態だ。解明を急ぎ、返還先に経緯を説明する責任がある。保管する一体一体を再度、記録と照合し直すべきだ。
北大は、保管する千体余りのうち、35体を2001年までに北海道ウタリ協会(現・北海道アイヌ協会)の各支部と旭川アイヌ協議会に返還した。
ところが、あらためて調査した結果、返還したものと同じ識別番号が付いた遺骨が学内に5体存在することが明らかになったという。
本物は返した方か、それとも大学に残る方か、判断できない状態だ。
アイヌ民族の遺骨は現在、全国11大学が1635体を保管している。遺骨の返還要求に最大限応え、それでも実現しなかった遺骨は、胆振管内白老町に創設する慰霊施設に納骨するのが政府の方針である。
今回発覚したような取り違え疑惑が生じるようでは、返還手続き自体、信ぴょう性を失いかねない。
保管する11大学には遺骨と収集記録の照合や埋葬地、個人の特定などに慎重を期して対応することを強く求めたい。
作業が困難だとして返還を早々に断念し、慰霊施設にまとめて納骨することは断じて許されない。
遺骨返還をめぐっては、高橋はるみ知事が今月、菅義偉官房長官に慰霊施設の設置を20年から18年に前倒しするよう要請した。
官房長官から前向きな回答を得たとされるが、北大では今年3月にも、個別の箱に複数の頭骨を収めるなどのずさんな管理が発覚している。
知事がこうした状況を知ったうえで前倒しを要請したのであれば、なし崩し的に決着を図ろうとしていると受け取られても仕方ない。
遺骨が大学に保管されていることで祖先の供養が妨げられ、憲法が保障する信教の自由が侵害されているとして、北大は日高管内浦河町出身のアイヌ民族から返還訴訟も起こされている。
政府は遺骨の問題を大学任せにせず、アイヌ民族と有識者の委員会を設置して助言を得るなど、返還が適正に行われるか、外部の目でチェックする必要がある。
先祖の遺骨を自分たちの元に返してほしいという当然の願いをこれ以上、踏みにじってはならない。先住民族の尊厳にかかわる問題だとの認識を持ち、返還作業を着実に進めてもらいたい。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/499046.html