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鉱物の部屋へのいざない

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虫入り琥珀

2014-09-05 18:07:55 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「虫入り琥珀」です。昨日の「珪化木」と同じように「タイムカプセル」からの流れからです。

昨日の珪化木もそうだと思いますが、化石にはタイムカプセルのような一面があり、石の中に過去の情報が記録されています。そのような化石の中でも特にタイムカプセルという比喩が相応しいのは何と言ってもやはり「虫入り琥珀」だと思います。

琥珀は太古の樹木が分泌していた“樹脂”の化石です。そのような琥珀の中に当時の虫が入り込んでいるものが「虫入り琥珀」です。「虫入り琥珀」には太古の情報と共に当時の虫そのものが閉じ込められている訳ですから、それはまさしくタイムカプセルそのものと言えると思います。

映画「ジュラシックパーク」のストーリーのように「虫入り琥珀」の中の蚊が吸った恐竜の血液のDNAから恐竜を復元するという様な事は不可能だと思いますが、その発想は非常にSF的で興味深いお話だと思います。もしかすると未来の科学テクノロジーでは可能になるかも知れません。ただし、恐竜もその時代の環境に合った生存をしていた訳ですから、復元された恐竜がその時代の環境下で生存できるかは分かりません。生物の生存はその生物が生存していた時代の環境と共にあるのであって、異なる時代の自然環境の元で異なる時代の生物が共存できるとは限りません。生物の生存は自然環境に依存します。そのように考えるとSF的な夢物語なのかも知れません。

さて、恐竜の復元は不可能だとしても、「虫入り琥珀」には地球の歴史という時間的ロマンが詰まっていると思います。現生の虫には何のロマンも感じませんが、「虫入り琥珀」には太古の虫が入っているとすると何となく貴重なものという印象を受けてしまいます。確かに琥珀そのものは貴重な宝石に違いないのですが、その中に太古の虫が閉じ込められているとすると、その宝石の価値も高まります。その付加価値とは虫の価値というよりも、その時間的ロマンの価値と言った方が良さそうです。虫マニアではない普通の人にとっては虫という存在はどちらかと言うとネガティブなものだと思います。そのようなネガティブな虫がポジティブな付加価値を持つという事はその時間的ロマンという価値に起因します。それは虫以外のものでも構いません。

そうそう、「虫入り琥珀」に閉じ込められているものは蚊や蟻や蠅などの虫だけではなく、木の葉や場合によってはトカゲ等の爬虫類が入っている場合があり、それらはそれなりに非常に貴重なものです。閉じ込められるのは虫である必要性はありません。要は琥珀に閉じ込められている時間的ロマンが貴重なのです。

「虫入り琥珀」が貴重なものだとすると、世の中にはそれを模したフェイクを作ってしまう人間がいます。骨董市やインターネットのオークションに出ているものの中にはそのような偽物が多々あります。安価なサソリ入り琥珀などはその典型です。プラスチックに閉じ込められた原生生物には何の時間的ロマンも感じません。そのような偽物に騙されてはなりません。プラスチックやガラスや陶器は簡単に安価に作れます。骨董の世界に偽物が多いのも、そのような騙し易い時間的ロマンという価値を安易に作れるからです。そのような偽物を平気で作ってしまう人間がいるのです。残念ながら同じような事は石の世界でも横行しています。偽物には気を付けなければなりません。

「虫入り琥珀」に似ているものに「虫入りコーパル」というものがあります。琥珀とコーパルの違いはそれができた年代の違いで、琥珀の方が古く、コーパルの方が新しいのです。ただ、新しいと言っても数万年以上前のものですから、「虫入りコーパル」にはその時代の虫が入っており、人間的な時間をはるかに超えた時間的ロマンが詰まっている事には変わりありません。それは決して人が作った偽物ではありません。自然が造った本物なのです。

今日の写真は「虫入り琥珀」?か「虫入りコーパル」?のどちらかです。

Photo

見た目の肉眼鑑定だけではどちらか?分かりません。それは中に入っている虫が物語っているのでしょうが、私には判断できません。

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珪化木

2014-09-04 15:33:29 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「珪化木」です。このブログでは意外にも過去4回しか「珪化木」という言葉は登場しておりませんでした。タイトルとしても初登場となります。

このところ、落ち着いてブログを書ける機会が少なくなってきました。先週の土曜日は名古屋ミネラルショーに行ったり、他にも書いておきたい事があったりしたのですが、その機会を逸してしまいました。そんなこんなで、何について書こうかと迷った挙句、「タイムカプセル」からの流れで今日は「珪化木」とします。

昨日は定休日で、所用で小松に行ってきました。久しぶりに芦城公園に立ち寄り、それこそ何十年ぶりに公園内に置いてある巨大な珪化木を見て来ました。その芦城公園名物の珪化木は私の小さい頃からのお馴染みの存在で、それが木の化石である事を知るずっと前から、そこに存在していました。そこは、子供の頃の私にとっては、かくれんぼや缶けりなどの遊び場だったのです。昨日、あらためてその珪化木を見ると、今更ながらその巨大さに驚きました。それは巨石・巨岩信仰の対象になりうる程の存在感があると思いました。それは芦城公園のお宝的存在だと思います。それは雨ざらしの外に置いてあるのですが、元々自然にあったものです。これからも風雨にさらされて風化していくのでしょうが、人間的な時間の尺度では、大勢に影響がありません。その「珪化木」には、小さな芽から巨大な木に成長する時間と、その木が地中に埋もれ石に変化する時間と、人に発見され芦城公園に移されてから現在までの時間と、の様に、様々な複層した時間があります。

複層した時間と言うと、その昔、故関戸信次先生から面白い話を聞いた事を思い出します。それは珪化木でできた礫岩がある、という話です。確か、能登の方にその礫岩が存在する、という事でしたが、その礫岩の何が面白いかと言うと、そこには何重もの複層した時間があるからです。まず、植物の木に成長する時間があります。その木が珪化木に変化する時間があります。そして、その珪化木が岩ごと風化や浸食を受けて礫に変化する時間があります。また、そのそれぞれの礫は川や海などに流され丸くなり堆積します。長期に渡る続成作用でできた堆積岩としての礫岩は再度の風化や浸食を受け、最終的に珪化木でできた礫岩になるのです。

そのような「珪化木」には石の輪廻転生があります。面白いと思います。

そういえば、先日、神奈川県からの旅行者の男性が店に置いてあった流木に見える白い珪化木を購入されました。その男性はビーチコーミングが趣味とおしゃっており、当初は購入した珪化木を流木だと思ったらしく、それが珪化木だと知ると即決でした。その男性はその流木のような珪化木の複層した時間が気に入ったような事をおしゃっていました。

「珪化木」の魅力のひとつは化石になった複層した時間にあるような気がします。

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