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鉱物の部屋へのいざない

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宝飾5

2014-09-28 10:31:18 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「宝飾5」です。「宝飾4」(2013.03.04)以来となります。

先日、近所に住んでいるお客さんTさんが面白いものを持って来て見せてくれました。それはアクアマリンの原石から作った宝飾としての指輪です。それが下の写真です。

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この指輪はTさんの東京の知り合いの方に作ってもらったそうなのですが、それは4ヵ月前に「石の華」から購入したブラジル産のグリーンアクアマリンの原石から作ったものです。私はその原石の時の姿を良く知っていましたので、その変身ぶりを感慨深く見ました。アクアマリンは宝石鉱物なので宝飾品になるのは当たり前の事なのですが、実際に原石から宝飾品に変身する姿を見る機会は滅多にありません。今回はTさんのお蔭で貴重な経験をさせてもらったと感謝しております。

幸い、その原石時代の写真が残っていましたので、その写真も出します。

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今回の指輪とその残りの原石

当初、Tさんは指輪を2つ作ろうと思っていたそうなのですが、予算の関係と原石もとっておきたいという気持ちから指輪をひとつだけ作る事にしたそうです。残った原石もその原石ならではの魅力的な個性が残っており、正しい選択をされたと思います。

私自身はそれが宝石鉱物だとしても宝飾品になるより原石のままの方が良いと思う傾向があります。ただ、世の中の大半の方々、特に女性は、原石よりも宝飾品を好む傾向が強いように感じております。どうも石の価値は宝飾にあり、原石としての価値はそれだけでは無いと思われているようです。また、そのような意識はルースに対しても同じようです。日頃、お客さんから良く聞こえてくる言葉はルースケースに入っているルースを見て、「何に使うの?」という言葉です。それから「何でこんなに安いの?」という言葉です。

私は原石やルースそのものの美しさを愛でたいと思うのですが、多くの方々は宝飾としての実用性を求めるようです。

私にとってはその石の持っている美そのものの価値が大事なのです。高価な宝飾にはそれほど魅力を感じません。むしろ実用的ではない原石そのものの方が大事なのです。それは金銭的な価値とは違う価値観です。美の価値は実用の価値とは別次元のものだと思っております。それは金銭的な価値に置き換える事はできないものです。

私は純粋な美そのものである「結晶の美」は実用的ないわゆる「用の美」とは次元が違うと思っております。それはイデア的な美であって、日常的な現実的な美とは次元が違うのです。「美」には様々な側面があるとは思いますが、次元の概念を取り入れると理解し易いような気がします。「結晶の美」と「用の美」とは同じ次元では比べられない、という事です。

そうそう、宝石の世界のカットは数学的、幾何学的な結晶美に近い関係性があると思います。カットされた宝石ルースから感じられる美は装飾された「宝飾」の美とは違う次元にあるような気がします。

世の中の価値観には多様性があっても良いとは思っておりますが、宝飾の事を考えると、石の世界の価値観の多様性の事を想ってしまいました。

コメント
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