昨日、金沢アートグミで開催された「利益の石」展のトークイベント「飯盛里安を聞く」(飯盛里安氏の研究室でともに人造宝石を製作していた柴田満氏のお話を聞く会)に参加してきました。会場は金沢アートグミの展示会場内の一角の小スペースで、参加者は10人ほど(私を含めて石川県鉱物同好会員4名参加)でしたが、小人数だけに、密度の濃い一時間を過ごす事ができました。
話の内容は科学者であった飯盛里安氏の人となりやビクトリアストンなどの人造宝石の製作現場の話など、興味深い話が続きました。
その話の中で、私が特に興味深く思った話は、長手石発見の経緯の話です。
長手石は放射化学の研究者ならではの新発見放射性鉱物だったのですが、後に、それは褐れん石の亜種として新鉱物として承認されなかったものの、柴垣海岸の長手島産の鉱物という事で、石川県人にとっては貴重な石川県産鉱物です。
飯盛里安氏は柴垣海岸に落ちていたサクラガイを見て、それが美しいと思いつつ、それが放射能の影響を受けているかもしれないと思ったらしく、まず、それを調査されたそうです。その結果は、サクラガイからは何の放射能も検出されなかったのですが、その時、その近くの長手島のペグマタイト中で弱い放射能を持つ鉱物を発見します。
長手石発見にはサクラガイが関係していたのです。それが長手石発見の秘話でした。
「利益の石」展では飯盛里安氏の晩年の日記を延々と撮影した映像作品も展示してありましたが、その作品を見ていると、毎日繰り返す規則正しい生活や自宅の庭の花や鳥を美しいと思う事が繰り返しでてきます。そこからは異常なほどの清潔感や文人的な美意識を読み取る事ができると思います。
私には柴垣海岸で見たというサクラガイの秘話が飯盛里安氏を象徴しているように思われました。
今日の写真はそのサクラガイです。ピンク色の貝殻に見える構造色の虹色が美しいと思います。
このサクラガイは私が珠洲市の道の駅で買ったお土産物なのですが、能登の海岸ではあちこちで、このようなサクラガイを拾う事ができます。
今後、私の中ではサクラガイと長手石、飯盛里安氏の人となり及び人造宝石が結び付くようになりました。