世の中、言葉、身体、生き方について、一般で言われていることは本当なのか?これらについて、一刀両断してくれています。ここでは、3つのことに関して書きたいと思います。
例えば、「そもそも、成功は努力の結果なのか?」については、ものの成就には努力は必要であるが、「成功や失敗には偶然が大きく関与する」はずであり、努力したうえでの偶然もないと、マイクロソフトやハリー・ポッターの成功はありえないとしています。そして、「偶然の出来事があるからこそ、世界は多様になり、豊かになるもの」であり、ひょっとしたら、偶然も必然なのかもしれません。
「本から得られるものなんてあるのか?」に関しては、ネットやデジタルの進展で十分ではないかということなのでしょうが、読書は生きていく上で欠かせないとおっしゃっています。ネットでは、検索する力が必要となりますが、「「全体の見取り図的な知識があって、様々なところにフックがるという状態が望ましい。そのような大きな枠組みを作るのは読書が有効」としています。また、「成功した人は読書をしている」という事実もあり、「読書は、注意が散漫になってしまいやすい世界において、『静かな革命の試金石』となる」ことは、もっと声をあげて発信するべきですね。
最後に、「生きることは学び続けることなのだ」はもう言うまでもないことでしょう。人生100年時代を迎え、また、AIが人の領域を脅かすに至り、学ぶことで創造力や発想力を発揮していくのが、これからの人間です。学校で勉強したからもうえぇやんではなく、学校での勉学は基礎づくりであり、人生を豊かにするには学び続けることが当然なのです。
著者の旺盛な読書の上に立った、様々な事象についての考察は極めて興味深い。
『さよなら自己責任 生きづらさの処方箋』(西きょうじ、新潮新書、本体価格760円)