あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

落語に花咲く仏教

2017-09-30 15:47:36 | 

 9/25(月)の天満天神繁盛亭の夜席『天神寄席9月席《落語に花咲く仏教~河合隼雄学芸賞受賞記念~》』を聴きに行きました。落語の中には仏教ネタが多く、また、笑えるネタが豊富なので、楽しみでした。以前に一度聴いていますが、特に、桂米紫師匠の「宗論」では大笑いしました。

 この寄席に先立って、『落語に花咲く仏教』を読みました。落語だけでなく、日本の伝統芸能は仏教との関係が深い。仏教とともに伝来した歌舞音曲が基本となり、仏教での法会、法要での「声明」と「説法」、そして、法会・法要終了後の娯楽が法要文化として、伝統芸能が形作られていきました。「声明」からは能、狂言、歌舞伎、浄瑠璃、謡、長唄・小唄、民謡などが、「説法」からは落語、講談、浪曲などへ広がって行きました。

 特に、落語のネタには、仏教の説法で語られるものが多く、「寿限無」や「始末の極意」、「松山鏡」などは今でも高座にかけられています。落語の原点である「醒酔笑」を書いたのが、浄土宗西山派の日快(別名策伝)が書いていることにも起因します。

 「宗教というのは凝縮していく方向性をもつ。(中略)その枠を芸能が揺さぶる。芸能は拡散していく方向性をもつ。」この両輪の凝縮と拡散の相互作用で、布教と娯楽がひとつの仕組みとして成り立って行きました。このように考えると、桂枝雀師匠の笑いの理論である、「緊張と緩和」と同様、真反対の力関係があれば、ものごとは一般的にうまくいくのでしょうね。私自身は、今後は、仏教ネタにも取り組んでみたいですねぇ。

『落語に花咲く仏教 宗教と芸能は共振する』(釈 徹宗著、朝日新聞出版、本体価格1,400円)

 

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漂流家族

2017-09-18 16:54:02 | 

 NHKでドラマ化された『珈琲屋の人々』シリーズが好きで、家族を題材にした池永陽さんの8つの短編集を手に取りました。

 毎日、同じ屋根の下に暮らす家族のことは良く知っているはずだ。それが娘のことになると熟知しているからこそという設定で書かれたのが「父の遺言」。嫁いで行った娘の将来を見通して、遺言をしたためていた父。結婚の挨拶に来た彼とはキャッチボールをして、その性格を見抜く父。すべては娘への思いやりの上でのストーリーを自ら描くお父さんに感服しました。私もこうなりたい。

 毎日、同じ屋根の下に暮らす家族のことにも秘密がある。宝くじが当たった両親。そのことを近所の人から聞いた子どもたち。その宝くじを子どもたちは当てにしようとしていたが、両親が秘密を明らかにすると…。宝くじに当たらなければ、秘密は墓場まで持って行く予定だったんだろうという「いやな鏡」。

 最後にもう一つ紹介するのが「十年愛」。17歳の少年が、アルバイト先のコンビニで好きになってしまった20歳上の女性。恋に発展するも、彼の母親と同年配の女性としては、このままの関係を続ける勇気もないし、彼の将来に自分の存在は不要だと考え、10年後に待ち合わせ場所に、お互いが同じ気持ちで居合わせたら、結婚しようと約束して別れる。そして、10年後、上野公園の西郷さんの銅像の前で…。こんな純愛ドラマが現実にあれば、世の中も変わるだろうなぁ。

 現代の家族が抱える問題にフォーカスして書かれた短篇はどれも心揺さぶられます。電車でスマホをいじるのなら、こんな文庫を読んで、心の洗濯をしてもらいたいなぁ。

『漂流家族』(池永陽著、双葉文庫、本体価格602円)

 

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完全版 生ごみ先生が教える「元気野菜づくり」超入門

2017-09-08 16:52:28 | 

 さて、2択問題です。

1.「虫はおいしい健康な野菜を食べる」  2.「虫は不健康で元気のない野菜を食べる」

どちらが正解でしょうか?答えは2です。虫の役割は、「弱ったものを土に還して、世の中を元気な『いのち』で満たす」、「地球の大事なお掃除屋さん」です。では、健康な野菜と不健康な野菜はいかにして生まれるか?その答えは

「土」

です。土が完熟な状態か、未熟、つまり腐敗しているかが決定打になります。その状態を左右するのが微生物です。彼らの活発に動ける環境の土こそ、元気野菜の土台です。元気野菜の定義を著者の吉田さんを次のようにしています。

「土と微生物と太陽の力を自分の力に変えて、病原菌、害虫、紫外線、強風、雨、温度変化、その他まわりのあらゆる障害を『自力で』乗り越えて生きる野菜のこと」

ですから、生命力のある野菜となります。

 さて、もう一問。「今の野菜は昔の野菜より栄養価が高い」〇か×か?

答えは×。今の野菜の栄養価は昔の野菜の10分の1です。普通に食べても栄養失調になる。これも土や栽培方法によるところが大きい。さらには、今の野菜は、ニトロソアミンという発がん物質を作りだす硝酸性窒素を多く含み、食べれば食べるほど危ない。

 他にも、本書には野菜の食べ方やその実践で健康増進している実例など多くを紹介。そして、この本のツボは、生ごみを土とよく混ぜて、完熟した土を作り、自宅で元気野菜をつくるノウハウも掲載。自分の健康維持や増進には土づくりから始めましょう!

完全版 生ごみ先生が教える「元気野菜づくり」超入門』(吉田俊道著、東洋経済新報社、本体価格1,500円)

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センスは知識からはじまる

2017-09-06 16:35:21 | 

 くまモンの生みの親・水野学さんの本を片っ端から読んでいます。現在のビジネスにおいて、「センス」は非常に大切になってきています。商品のデザインやスペックも似通って、価格勝負、便利さ勝負になっている中、選んでもらえるには、「企業の価値を最大化する方法の一つ」であるセンスを磨くべきです。その理由は

 「人間というのは技術がその時点の限界まで進歩すると、ノスタルジックな思いに身を寄せ、美しいものを求める傾向がある。」

ためです。千利休の如く、センスのいいクリエイティブなセンスを持つ企業人、企業が好まれることになります。では、そのセンスとは何か?

 「センスとは知識の集積」

であり、「誰でも見たことのあるもの」という知識をコーディネートする、つまり、ある知識と別の知識を接着し、そのアウトプットを新しく、美しく、尖ったものにする必要があります。逆に言うと、インプットがいかに優れ、いかに豊富であるかで勝敗が決するのです。

 我々書店はインプットされるべき情報や知恵の泉であり、センスを磨くベースであるべきですね。ということは、書店もセンスのある店舗にしなければならないということになりますね。精進は尽きません。

『センスは知識からはじまる』(水野学著、朝日新聞出版、本体価格1,400円)

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都合(つごう)のいい読書術

2017-09-02 18:12:05 | 

  『バカになるほど、本を読め!』(神田昌典著、PHP研究所、本体価格1,300円)を以前読み、このブログでも紹介しました。

 http://blog.goo.ne.jp/idomori28/s/%E7%A5%9E%E7%94%B0%E6%98%8C%E5%85%B8

  今回、【新書版】バカになるほど、本を読め!として、本書が刊行されたので早速読みました。デジタルが進み、リアルな本を読むことは時代遅れになるのではなく、これからのAI時代には読書をし、社会の課題を解決する価値創造のための読書をしていくことの重要性を訴えられています。世の中はどんどん自動化され、その過程はブラックボックス化し、考えることが激減している、つまりは流されている自分が「人間は考える葦である」ためには読書が必要となります。価値創造のための読書とは、素晴らしいアウトプットを提案するためのインプットとしての知識蓄積です。それは、
「イン・フォーメーションからエクス・フォーメーション(自分の内にある認識を外へ形創っていくこと)」
という仕組み作りです。

 また、読書を独りでするのではなく、読書会を開催して、参加しているメンバーから自分とは違う視点の考え方を共有し、知識創造がしやすくなるだけでなく、自分のコミュニティー形成、そして、自分のリーダーシップ育成にまで活用することにまで視野を広げていることを学びました。社会変革、課題解決に本を通して、関心ある人間が集まる読書会は、書店もその場を提供して行っていけば、書店業を通じての地域課題解決書店になり、書店の価値創造に結びつきますね。

『人もお金も動き出す!  都合(つごう)のいい読書術 [新書版]バカになるほど、本を読め!』(神田昌典著、PHPビジネス新書、本体価格870円)

 

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