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板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

三河雑兵心得 8 小牧長久手仁義

2022-05-30 14:34:41 | 

 甲斐、信濃を併呑した徳川家康の次なる敵は羽柴秀吉となり、この巻では小牧長久手の戦いへ突入します。兵力、武器などの物資量などでは秀吉に劣る家康は「負けない」いくさに持ち込みます。茂兵衛にも交戦か非戦かの意見を求められ、非戦に賛同しつつも、家康にはわからないと答える、現実的でありながらも、建前や理想は封印します。

 真田一族がこの巻から登場し、茂兵衛とのやり取りが今後も続くことを期待しています。というかそうならなければ、面白くありません。

『三河雑兵心得 8 小牧長久手仁義 』(井原忠政著、双葉文庫)

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三河雑兵心得 7 伊賀越仁義

2022-05-30 14:05:58 | 

 本能寺の変の折、京で織田信忠から事変の発生を聞いた植田茂兵衛は、堺にいる主君徳川家康に知らせるとともに、家康一行に付き従い、畿内を離れ、三河へ向かいます。三方ヶ原の戦い以来の、家康の危機、いわゆる、伊賀越を決行します。織田に根なしにされた伊賀の地侍は、信長死去の報を受け、織田に与する勢力である徳川を徹底的に攻めるわけですが、茂兵衛は本多平八郎と共に殿を司り、なんとか三河へ脱出します。

 家康は織田が押さえていた甲斐や信濃へ攻勢を発出し、火事場泥棒の如く手中に収めます。この遠征にも、伊賀越から帰り、息付く間のない茂兵衛は駆り出され、鉄砲大将の目覚ましい働きを繰り広げます。

 フィクションとはいえ、家康の数々の戦史に登場することで、戦国の下剋上の世の一面を垣間見せる面白さを発揮しています。

『三河雑兵心得 7 伊賀越仁義』(井原忠政著、双葉文庫)

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三河雑兵心得 6 鉄砲大将仁義

2022-05-23 16:36:49 | 

  対武田における、国境の砦番を4年勤め、その間に部下の鉄砲の力量と脚力を鍛えるために領内の山での狩猟をさせた、茂兵衛は浜松城に呼び戻され、鉄砲も50挺に増え、槍足軽40人、小頭9人、寄騎3騎の、配下百人を超える鉄砲大将となり、今の通貨価値で言えば、年棒2500万円まで出世しました。

 しかし、これ以降がこき使われの連続で、高天神城攻め、穴山氏館奪還、甲斐征伐の先陣、一条信龍討ちと戦場の日々の明け暮れ、まさに「人は苦難を乗り越えてこそ成長を遂げる」の活躍。甲斐武田を滅ぼした信長は家康を安土城へ招待し、家康はその一行の中に茂兵衛も同行させました。武田攻撃の織田軍の長を務めた織田信忠は茂兵衛の鉄砲大将の高い資質を評価し、禄高2千石(現在の1億円)で部下になるようスカウトされましたが、そこは三河武士としての義を貫きました。そんな中に発生したのが本能寺の変、茂兵衛は休む間もなく、家康を守るべくさらなる働きをします。

 織田家へ天下の趨勢が決定しつつある時、人物の評価の物差しは、「利」より「義」に、棒給よりも忠誠心に重心が移っています。現在ではどうなのか?

『三河雑兵心得 6 鉄砲大将仁義』(井原忠政著、双葉文庫)

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三河雑兵心得 5 砦番仁義

2022-05-13 14:21:54 | 

 長篠の戦いで弱体化したとはいえ、武田の脅威は去ってはいません。東遠江における武田勢を一掃すべく、徳川は攻城戦を仕掛けていくが、なかなか落ちません。植田茂兵衛は家康から高天神城への補給路を断つべく、牧之原台地で野営を張り、部下を一人も損ねず、首尾よく活躍し、足軽大将に昇進します。

 北遠江にも侵攻し、茂兵衛は武田領信濃国と接する高根城の城代となり、北への睨みを効かせます。そんな中、家康の嫡男信康が父へ楯突くことになり、高根城域へ逃げ込みひと騒動が勃発します。

 この巻では、領国経営をする武将の資質、それに仕える武将の良し悪しのものさし、さらには上司への忠義の深さなど、現代にも通じる言葉に彩られています。

『三河雑兵心得 5 砦番仁義』(井原忠政著、双葉文庫)

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三河雑兵心得 4 弓組寄騎仁義

2022-05-09 14:35:18 | 

 三方ヶ原の戦いで家康の敗走を援ける働きをした足軽小頭・植田茂兵衛は松平善四郎康安の先手弓組の筆頭寄騎(副隊長格)となり、足軽から騎乗の身分に昇進しました。その翌年には、松平善四郎康安の姉の寿美(すみ)を嫁を迎えました。しかしながら、新婚生活よりも武田勢との戦闘に明け暮れ、遠江の高天神(たかてんじん)城も失った徳川軍は長篠城の攻防を経て、長篠・設楽原の戦いでは織田軍と共闘し、鉄砲隊が騎馬隊の武田勝頼を蹴散らしました。

 武田軍に攻めたてられた長篠城の籠城戦では、侍魂を鳥居強右衛門(すねえもん)見せつけられながらも、百姓上がりの出世を快く思わないという蔑視の目を向けられた植田茂兵衛は「信頼に応える」べく奮闘し、七十五貫から百貫(約一千万円)に昇給し、さらなる苦闘と成長が待っています。

『三河雑兵心得 4 弓組寄騎仁義』(井原忠政著、双葉文庫)

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三河雑兵心得 3 足軽小頭仁義

2022-05-06 11:56:31 | 

 十名の槍足軽を指揮する足軽小頭に昇進した植田茂兵衛は、初陣で二俣城に入城する松平善四郎康安の寄騎に抜擢され、武田軍が攻める二俣城の籠城戦では落城の憂き目を、そして、三方ヶ原の戦いでは家康の敗走を援ける働きをする、徳川家康の人生の中でも散々な目を被る巻です。

 生きるか死ぬかの戦場において、本来なら非情にならざるをえないところ、その人の本質や人間性が如実に現れ、負傷した部下を見捨てず、出世のための手柄のための証としての敵の首を切るのも死者に対する冒瀆と考え、手柄さえも味方へ譲る茂兵衛には男の中の男として羨望の思いで読み進めた3巻目でした。

『三河雑兵心得 3足軽小頭仁義』(井原忠政著、双葉文庫)

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三河雑兵心得 2 旗指足軽仁義

2022-05-02 13:29:15 | 

 一向宗との闘いに勝利し、三河を平定した松平家康は徳川姓へ変更し、遠江へ進撃を開始。本多平八郎の旗指になった植田茂兵衛は遠江曳馬(ひきま)城攻撃に従軍。女城主田鶴姫主従は奮戦するも落城。城内を検分すると、小屋に隠れていた、薙刀を持つ若い女・綾女を捕獲し、足軽小屋に匿っていたが、逃亡します。茂兵衛は綾女に惚れてしまいます。

 駿河に進軍中の甲斐武田信玄を睨みながら、徳川軍は城主朝比奈泰朝の掛川城攻略に繰り出します。城側の士気が高く、膠着状態が続くも、茂兵衛の提案の、城主を火縄銃で狙撃する作戦が功を奏し、開城へ導くも、その作戦執行中に背後から茂兵衛も銃で撃たれ、回復までにはかなりの時間を要しました。闘病中に綾女に再度会い、茂兵衛の心は揺れ動きます。

 次は、朝井・朝倉軍と織田・徳川軍の姉川の戦い。姉川を挟んで、1万人の朝倉軍に対峙する徳川軍は6千人。苦戦を強いられるも、本多平八郎の奮戦で勝利を勝ち取ります。城将狙撃の恩賞も含めて、徒侍となり、足軽小頭になった茂兵衛は、彼を撃った張本人との確執でさらなる出世の道を歩むことになります。また、綾女とのロマンスはいかに・・・。

『三河雑兵心得 2 旗指足軽仁義』(井原忠政著、双葉文庫、本体価格630円、税込693円)

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