新型コロナウィルスの感染拡大で、何もかもが今まで通りに進まなくなりました。それは個々人の生きがいにも影響を少なからず与えています。持っていた生きがいが消えていきつつあったり、また見つけられなくなったりします。
それでは、「生きがい」っていかにして見出すのか?
本書は、「生きがいを求め、生きた人間の姿を表現しようとした」、精神科医の神谷美恵子著の『生きがいについて』を読み解き、どう生きるべきかを問うています。
まず第一に、生きがいは作り出すものではなく、「発見する」ものです。
それでは、どこから発見するのか?それに関しては、「すべての人の人生にすでに種子として存在しており、その種子を見出し、朽ちることのない生きがいの花を咲かせる」と述べています。つまり、自身の中に宿しているものを発見せよ!ということです。
発見のカギは何か?「他者がかけがえのない存在だと感じるとき、自分が単に生きているのではなく、生かされている」という視点を抱くことが大切で、生きがいが自分のためだけではなく、他者、広くは人類や地球、宇宙にまで関与するものであれば本物なのでしょう。宗教以前の霊性にも言及し、「自分が何か大きなものに包まれている実感」と書かれているのは、生かされている存在を意識することにつながるかと考えます。
だからこそ、「より丁寧に生きること」「個に起こった出来事を深めること、その道行きこそが、もっとも確実な普遍へと続く」としています。「いま、ここ」に集中することを意味すると思います。
1966年初版の『生きがいについて』は読み継がれていく本になると信じます。
『「生きがい」と出会うために 神谷恵美子のいのちの哲学』(若松英輔著、NHK出版、本体価格1,400円、税込価格1,540円)