あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

AI時代を生き残る仕事の新ルール

2018-02-25 10:49:50 | 

  シンギュラリティが到来すると仕事もなくなり、人間はどうして生きればよいのか?ということが問われ、不安に陥る傾向があります。その心配に対する答えが本書には書かれています。

  まず、今のAIは「弱いAI]です。「人に使われることが想定されている」ものであり、将棋や囲碁などの特定の領域では威力を発揮しますが、汎用性には欠けています。『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著、東洋経済新報社、本体価格1,500円)で読み解いた通り、数学、統計、確率でしか動かないのがAIです。人間の思考や行動までを網羅する汎用性は持ちえていません。

 では、現時点ではAIをどう位置付け、どう対処すればよいのか?

 「AIは道具である」という認識の下、「自分がその分野のプロとして持っていなければならない本質的な価値を把握し、そのうえで、これから求められるAIなどを有効に使いこなすスキルについて、よく理解する必要がある」わけです。会社経営であれば、使えるモノは使うが、やはり、理念を実現するために行動するためだけであり、三方良しの状況にするには人の存在が欠かせない。但し、AIが発展すればするほど、人間の本来の価値、個人で言えば、その強みを発揮できるように自分を高めていかなければなりません。これに注力しなければ、AI以前に、人生100年の流れに乗れないでしょう。

『AI時代を生き残る仕事の新ルール』(水野操著、青春出版社、本体価格840円)

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SNSで儲けようと思ってないですよね?

2018-02-19 14:44:31 | 

 子どもの一番なりたい職業がユーチューバーですから、SNSというメディアを無視することはできません。昭和以前の生まれの人には、プリントメディアである新聞、雑誌、そして、ラジオ・テレビなどのマスメディアに慣れ親しんでいますが、今や、デジタルメディア、しかも個人が発信できる時代、SNSメディアの本質を知っておかなければなりません。

 SNS以前の20世紀型メディアは「上から下へ」、「広く、多く」であり、

 SNS以後の21世紀メディアは「横から横へ」、「浅く、狭く」です。

 つまり、特定ユーザーに狙い定めてのダイレクトな形へ移行しています。「商品を買わせたい」から、「ブランディング」を伝えることが大切です。「儲けを考えるよりも、徹頭徹尾『ユーザーが共鳴共感するコンテンツ』づくりを優先すること」を推奨しています。だからこそ、自分が第一番目の発信情報であり、「人そのものがメディアである」こと、そして、ライブ感を有することなど、デジタルだからこそのメディアとして位置づけていく必要があります。

『SNSで儲けようと思ってないですよね? 世の中を動かすSNSのバズり方』(福田淳著、小学館、本体価格1,200円)

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AI vs. 教科書が読めない子どもたち

2018-02-14 13:02:21 | 

  ロボットが東大に入れるかを目指した、人工知能プロジェクト「東ロボくん」や、中高生の「全国読解力調査」を行った著者が人工知能と日本の将来を展望した本書は極めて明解で、かつ恐ろしいシナリオを著しています。

  まず、AIに関して、2045年にシンギュラリティが到来すると喧伝されていますが、「到来しない」と明確な論を張っておられます。その理由は、知能を持ったコンピュータであるAIは数学、四則計算や統計、確率で動いており、目的や目標と制約条件がある範疇では人智を凌駕します。囲碁やチェス、将棋でのAIの勝利、また、天気予報の精度向上はそれの好例です。しかし、脳を模倣した数理モデルには、意味を理解することができず、読解力と常識の壁が行く手を阻んでいます。つまり、人間が言語読解力持ち、社会での常識を把握し行動できれば、AIに負けることはありません。

  しかし、「全国読解力調査」の結果、現在の中高生以上の学生の半数や、大人でさえも、教科書が読めないほどの読解力しかなく、人間の弱点はAIと同じです。これでは、人間がAIに凌駕されるしかなく、半数の仕事がAIに乗っ取られ、デジタル社会では新しい仕事が生まれないとされる未来に「AI恐慌」が引き起こされると断じています。そうならないためにも、読解力を向上させ、教科書は読める人材を育てていくことが最低条件になります。その上で、社会での課題を解決する柔軟な発想を発揮していくことが求められます。我々書店が提供している活字が読まれることの意味は充分にあり、活字の存在意義は人間の未来にとっても計り知れないと考えます。

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著、東洋経済新報社、本体価格1,500円)

 

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上方落語史観

2018-02-11 16:11:10 | 

 上方落語を聴くだけでなく、演じることも趣味な私にとっては、是非読みたい1冊です。

 上方落語は、幕末から明治の大阪を舞台にして書かれています。その当時の風習や生活が色濃くにじんでいます。しかし、時代も経ると、生活上から無くなったものや、名前が変わったものがあり、現代の人が理解できるように、今の落語家が編集し直しています。

 例えば、私の持ちネタの一つ、『初天神』で出てくる、凧揚げのくだりですが、凧揚げは実は「イカノボシ」と言われていおり、蛸(タコ)ではなく烏賊(イカ)であることなど、本書を読むまで知りませんでした。こんな情報は一般人には不要かもしれませんが、落語好きには堪りません。上方落語から歴史を学ぶのも一興でしょう。

 「落語は多種多様な知識や教養に対して、時代を超えて対応できる重層的な笑いを内在させています。そのため、自由自在に連想を展開させることができたのです。」

 つまりは、落語を演じるとは、それらの知識や教養を知っている人と知らぬ人を演じる一人芝居ですから、演じる人もそのことをしっかりと知ることが大切ですね。学ぶことがまた増えました。

『上方落語史観』(髙島幸次著、140B、本体価格1,500円)

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だれでも書ける最高の読書感想文

2018-02-05 17:26:44 | 

 本を読むのも嫌やのに、感想文を書くのはもっと嫌と思う中高生のために書かれた、読書感想文の手引書。さすがは斎藤孝先生。作文へのモチベーションを上げるために、読者を鼓舞し、作文の敷居を可能な限り低くするために、読者を安心させる、その書きっぷりは凄い!

 感想文ですから、

感じて想うことを自分事として書くというシンプルさで攻める

これが肝ですよね。また、想うところとは自分が考える人になることであり、人間にとって一番重要な点です。

 また、読書というインプットに対して、作文をするというアウトプットは脳にとってはとても大事です。私たちの身体はインプットとアウトプットがなければ生きていけません。食べれば、栄養を吸収し、老廃物は排出する、また、呼吸をするとは、吐く「呼」と吸う「吸」が一対になっています。脳にとっても同じであり、現代人はスマホやネットからの情報過多状態で、アウトプット不足ですから、人としても感想を述べる(書くだけでなく、他人に話すでもOK)ことは不可欠です。

 気安く、作文しましょう!

『だれでも書ける最高の読書感想文』(齋藤孝著、角川文庫、本体価格520円)

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あわいの時代の『論語』 ヒューマン2.0

2018-02-02 16:46:08 | 

  2045年にシンギュラリティが訪れると言われています。どう対処したらよいか不明で心細い感がありますが、人類にとっての直近のシンギュラリティを考察してみようというのが本書の目指すところです。それは、3~5000年前の文字の発明になります。文字発明後数百年後に記された「論語」を、著者の得意とする身体論と漢字の視点から読み込んでいます。

 人類は文字を生み出して、いかに変化したか?「時間を生み、論理を作りだし、そして、心も生み出した」と考えられています。その心とは、「未来を変え、過去から学ぶ力」と定義されています。文字誕生以前は現在だけしか想定できなかった人類は、時間を知った瞬間に、未来に対する「不安」と過去に対する「後悔」という、心の裏に潜むおそろしい副作用も持ち合わせてしまいました。

 この葛藤状態や危機的な状況に対して、自動反応(react)するかどうしようかと慌てているだけの人と、自動反応に一度ストップをかけ、「現在」という時点を、過去と未来という時間の中で捉えなおし、何をすべきか、何が一番いいのか、それを冷静に判断し、選択し得る能力を持った人たちが存在します。論語では、孔子は、前者をふつうの人である「小人」、後者を「心を使おうと決めた「君子」に分類しました。「君子」は「思考するふつうの人」です。次のシンギュラリティ以前でも、情報や時代情勢に流されるだけの人が多くなり、スマホという小さな画面の言いなりになっています。人が人たる存在であるには、「注意深く思考し、行動する」ことが不可欠になります。

 そして、思考、「知」の過程を「温故而知新」のレシピとして提示しています。それは、

①問いを立てる
②さまざまな「知識」を脳内に投げ込む
③「温」する
④忘れる
⑤新しい知見が突然出現する

です。疑問を持ち、インプットし、絶妙なアウトプットをする、AIには不得手な「問いを立てる」を盛り込んだ「温故而知新」を今のうちに仕込んでおきましょう!

『あわいの時代の「論語」 ヒューマン2.0』(安田登著、春秋社、本体価格1,800円)

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