あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

ハッピー・ハグ

2020-07-30 16:29:43 | 

 感動する絵本に出会えました。

 ハリネズミが元気の出る方法は「ハグ」してもらうこと。しかし、誰もハグをしてくれない。理由はとげ。フクロウさんが「だれだって、ぴったりのあいてはいるもんじゃよ。」すると、ふたりは出会いました。

 誰しも自分を理解してくる他者はいないと孤独を感じますが、必ずや存在します、ピッタリの相手が。友だちも、恋人も、そして、夫婦や仕事のパートナーなど。「ハグ」できます。

 この本は裏返すと、「ハッピー・ハグ」のもう一つのお話が始まります。こちらの主人公はカメ。ハリネズミ同様のストーリーが展開し、フクロウさんが教えてくれます。「だれだって、ぴったりのあいてはいるもんじゃよ。」

 とても楽しく読めます、「ハグ」の物語。自分のために、そして、プレゼントにも喜ばれそうです。

『スーパー・ハグ』(オーイン・マクラフリン/文、ポリー・ダンバー/絵、あすなろ書房、本体価格950円)

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宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧

2020-07-28 17:13:52 | 

 スティーブ・ジョブズは禅に帰依し、その影響がアップル製品に及び、世界を一変させる商品群になったといわれています。それではジョブズの師匠は誰か?これが本書の主人公、乙川弘文禅師です。彼のことはあまり知られておらず、著者が7年間をかけて、日本、アメリカ、ヨーロッパと、彼の足跡をたどりました。

 曹洞宗の禅僧ではエリート中のエリートでありながら、アメリカ西海岸の布教で渡米すると、1ケ月も引きこもった挙句、妻帯を2度もし、アルコール中毒にもなった、悪いイメージが付きまとう人。しかし、スティーブ・ジョブズだけでなく、多くの欧米人が彼の弟子となったわけを探ると、「日頃は良寛さん、こと女に関しては一休さん」と言われるほどの、とてつもないスケールのお坊さん、「背負うもの一切を手放して、『仏法の塊』みたいに生きた人」でした。渡米後の引きこもりが彼を世界的な宗教家に変貌させました。

 すごい人物の最期は死期を自らが知っていたかの如くの様であり、これも謎を生む存在でもあります。

『宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧』(柳田由紀子著、集英社インターナショナル、本体価格1,900円)

 

 

 

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14歳の水平線

2020-07-27 16:03:57 | 

 児童文学作家の征人は離婚後、14歳(中学2年生)の息子の加奈太を育てるも、反抗期でもあり、二人の生活はなかなか軌道に乗りません。夏休みに故郷の神の島・天徳(てんとく)島へ連れていくことになりました。島では征人は自分の14歳だった頃を思い出し、加奈太は島での中学2年生男子限定のサマーキャンプに参加します。

 征人も加奈太も、時代は変わっても青春の夏の1ページは大きく変わりません。14歳に、征人は漁師だった父が海で遭難したのか帰宅しなかったことで、どうしても父を生き返らせるように、島のドゥヤーギーという妖怪の力を借りようとした夜を振り返り、加奈太はサマーキャンプ参加者との関係がぎくしゃくして思うようにいかなかった。

 「自分のことしか考えなくて、世界におれだけみたいな感覚があって…。だけどそういうのって違うんだ。」

 サマーキャンプで加奈太が発見した事実は父・征人の出来事とも重なるようであり、青春のしょっぱさを感じます。だれにも悩み、苦しみ、そして、発散する一時期があります。そんな時にどんなことでも受け入れてあげる大人の存在の必要性を感じました。

『14歳の水平線』(椰月美智子著、双葉文庫、本体価格667円)

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白球アフロ

2020-07-26 08:27:32 | 

 都立等々力高校野球部に2年生の黒人アメリカ人のクリスが転校してきました。黒人の父と日本人の母の子であるクリスの入部に、弱小の野球部員は「助っ人が現れた!」と思うが、守備は一級品のクリスの野球センスにも、荒削りのバッティング、そして、進塁のための犠牲バントなど日本野球への不理解が横たわります。また、日本へ来た理由も意味深であり、野球部員やクラスメートは心を悩ませます。

 厳しい練習の総決算、夏の地区予選大会が開催され、格上の港北大学付属渋谷高校との初戦がプレーボールされます。等々力高校野球部員は自我の生きる上での課題を抱きつつ、自らの青春を燃やし尽くすべく、熱戦を展開します。

 地区予選だけで終わる高校野球のこの夏、さわやかな風が吹き抜ける1冊です。

『白球アフロ』(朝倉宏景著、講談社文庫、本体価格610円)

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ニュータイプの時代

2020-07-25 08:01:34 | 

 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』(山口周著、光文社新書、本体価格760円)のあとはこれと決めていました、『ニュータイプの時代』。

 「オールドタイプ」では、「正解を探す」ことに主軸が置かれていましたが、テクノロジーの進歩により正解を出す機会が減ったもしくは正解を出せない問題しか残らなくなった昨今、「ニュータイプ」の時代が到来していることを解説しています。私自身がう~んと納得したニュータイプの思考や行動様式は

 ・正解を探すのではなく、「問題を探す」

 ・未来を予測するのではなく、「構想する」

 ・主要業績評価指標(KPI)で管理するのではなく、「意味を与える」

の3つです。その中でも「意味がある」が最重要ではないかと考えます。顧客に提供する価値の市場で、「役に立つ」という座標軸と「意味がある」座標軸では、レッドオーシャンの「役に立つ」に対し、多様性が生まれる「意味がある」では顧客に提供する価値が競争力の源泉になり、他社が真似しにくいブルーオーシャンに近づくのでしょう。論理で攻める「役に立つ」に対し、「直感」で表現する「意味がある」は希少価値が生まれ、共感を呼ぶはずです。私は思うに、個人であろうと企業であろうと、「理念」が「意味」を作り上げるはずです。

 これからのビジネスではニュータイプの思考や行動様式は必要不可欠になると思います。

『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』(山口周著、ダイヤモンド社、本体価格1,600円)

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テディが宝石を見つけるまで

2020-07-20 17:22:23 | 

 小学生高学年だけの本にするにはもったいない感動の1冊です。

 母親が運転する車が激しい吹雪で動けなくなり、援けを求めに車を離れて戻らないので、同乗していた12歳の男の子ニッケルと妹のフローラは母を探しに行ったのでしょうか、吹雪の中へ出ていった挙句、迷子になります。凍りついた湖の岸に立って震えていたニッケルを夕暮れ時に見つけたのは1匹の犬、テディは自分の飼い主の詩人・シルバンさんの家に2人を導きます。シルバンさんに詩や物語を読んで聞かされていたテディは人の言葉がわかり、詩人と子どもだけがテディの言葉が聞き取れました。数日間続いた猛吹雪の中、2人と1匹は、家主のいない家で過ごし、テディはシルバンさんのことを話します。テディがシルバンさんの家に来た訳、シルバンさんの詩のこと、シルバンさんがなぜいないのか。そして、シルバンさんがテディに語った言葉、「きみが、宝石をひと粒かふた粒見つけられといいな」が最後に読む者の心を揺り動かします。

 わずか90ページ足らずの物語は吹雪の家の暖炉のようにあったかい。

『テディが宝石を見つけるまで』(パトリシア・マクラクラン著、こだまともこ訳、あすなろ書房、本体価格1,200円)

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FACTFULNESS(ファクトフルネス)

2020-07-11 08:12:08 | 

 もう既に80万部を超える売上を記録する本は自分の思い込みの強さ、無知を改めて記憶させてくれました。

 冒頭にある「世界の事実に関する13問のクイズ」に答えました。答えと照らし合わせて落胆しました。温暖化について以外の12問が誤っていました。本書に書かれている10の思い込みが自分の脳みそに刷り込まれていることがわかりました。事実から判断すると、地球は人間にとっては良くなっていることが理解できます。所得も伸び、貧困に打ちひしがれる人口も年々減少しています。また、教育や行政サービスのレベルも上昇し、テロや戦争も減少しています。地球温暖化だけは危惧しなければなりません。

 2018年に本書は書かれていますが、心配すべき5つのグローバルなリスクに「感染症の世界的な流行」があげられ、「感染力が強くどんな対策も効かないウィルスからあらゆる手で自分たちを守ることは、あたりまえだがかなり重要だ。」と明記されています。これも「客観的で独立したデータ」が存在することからの提起です。事実を見る目、知る脳を常に養わなければなりません。

『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド 著、日経BP、本体価格1,800円)

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100%得する話し方

2020-07-10 13:24:09 | 

 話下手、人見知り、あがり症の著者が悩みに悩み抜いて、一筋の光を見出して、今では、40代の「笑う社長」と変貌し、100%(120%と言わないところが奥ゆかしい)得する話し方をまとめたのが本書です。

 あなたはひとの話を聴いていますか? → 「99%の人は会話をするときに、相手の話をまったく聞いていない」上で、「自分の話すことばかり考えている」ことが会話での悪い傾向と考え、自分の話へたを隠しつつ、会話相手に気持ちよくなってもらうには、

 「聞き手であるあなたが『会話の舞台から降りて』相手に9割話をさせる」

ことに尽きる、これこそが最大のポイントなのでしょう。

 これはまさに『敬』の心構えです。相手を「敬(うやま)い」、自らは「敬(つつし)む」ことが如実に行動として表れています。そうすることで、相手からは愛敬のある人と思われ、得するに至るわけです。自分を律し、この境地に立つことは話をすることだけに及ばず、人生のさまざまな場面で応用が効くのでしょう。

『100%得する話し方』(新井慶一著、すばる舎、本体価格1,400円)

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火喰鳥 羽州ぼろ鳶組

2020-07-07 13:52:24 | 

 江戸の仕事で注目される一つは火消。それもそのはず、年間2千件を超える火事が江戸では発生していました。火消にも、町人が携わる町火消と、武家、大名が従事する侍火消とあり、本書は侍火消の物語です。

 旗本の松平隼人家の火消の頭領をやんごとなき理由で辞し、浪人の身であった松永源吾は、奥州戸沢家新庄藩の火消方頭取に召されました。戸沢藩でそのポストが空き、「火喰鳥(ひくいどり)」という異名を持つ源吾の実績に着目され、新庄藩の火消隊の立て直しならびに藩火消の名声を上げることを任されました。但し、藩財政が乏しく、前職での年間1千両に対し、2百両の予算、火消道具も不足、人も足らない上に人材が育っていない。とにかく、源吾は有能な火消人のヘッドハントと人材育成から始めなければならない。

 どうしようもない困難なところからのV字回復の話がつまらないわけがありません。数々と起こる火事のたびに、人間模様が紡がれ、涙もこぼれます。また、名セリフがちょいちょい現れ、ジーンとくることしばしば。

 「日は人々の暗い今日を消すために沈み、人々の輝く明日を彩るために昇る」

 「お前にとって一日は暦の中の単位なのかもしれねぇ。でも人は、その一日にしがみついて必死に生きているんだ!」

 「(焼け崩れた家を見て)また建てればいい。人は心さえ決めれば何度でもやり直せる」

 消化、鎮火の火消ではなく、あくまで命を守ることを第一義に置く新庄藩火消。金がないので羽織も揃えることが出来ず、みすぼらしいことを逆手にとって、ぼろ鳶組として、実績とともに名をあげる。著者のデビュー作はすでにシリーズ9巻とスピンアウト1巻。著者は源吾の先祖、戦国武将の松永久秀を描いた『じんかん』で今回2度目の直木賞候補。2巻以降にも触手を伸ばします。

『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』(今村翔吾著、祥伝社文庫、本体価格740円)

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縄文文明と中国文明

2020-07-06 17:08:45 | 

 香港を我が手中に収め、台湾、南沙諸島、尖閣列島、そして、経済支援として、多くの国々へ触手を伸ばす中国。その姿を歴史から覗き、対極にある日本を位置づける。本書はとても興味深い。

 中国文明は黄河から長江の中原に王朝を築いて繁栄をしてきました。威厳を示すために大規模な建造物を建設し、青銅器、武器としての鉄器を作り続けました。そのために、建築資材や金属を鋳造用の燃料の木材を伐採すべく、森は切られ、農地へと変わっていきました。中原の北や西には(中国王朝から見れば)異民族が割拠し、素晴らしい中国文明を手に入れるために攻撃し、国家転覆を続けてきました。「破壊と征服」の中国の歴史を、亡ぼされることは一族の全滅を意味し、「野放図に欲望を開放してしまった中国文明」、「漢民族には、『共存』という発想はない」としています。「また、環境的にも、「文明は木を食べ尽くす」としており、この点も日本とは対照的です。

 日本は縄文時代から、森を守り、森を活用してきた民族の国です。中国という一級の文明のことを知りながら、進歩ではなく退歩する如く、自然との共存を心掛け、一神教の国々からは野蛮とされるアニミズム、多神教を維持してきました。

 地球環境、一神教的なグローバリズムなど、「地球が滅亡の危機に向かい始めている今、日本人自身が、多神教世界の住民であること、文明に抗、揺り戻しを何度も経験してきた民族だったことを、思い起こす必要」を訴えています。

 新型コロナウィルスの感染も、『共存』を忘れるなというメッセージかもしれません。

縄文文明と中国文明(関裕二著、PHP新書、本体価格880円)

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