あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

里山を創生する「デザイン的思考」

2015-06-23 16:12:32 | 

  地方創生が叫ばれていますが、地に足着いたことをやっていかなければ失敗に終わってしまいます。そこには「志」「本気の熱意」の存在が不可欠でしょう。

  新潟県南魚沼市にある大沢山温泉の温泉旅館が売りに出ているという電話が雑誌『自遊人』の編集部にかかってきました。東京・日本橋から南魚沼に移転して9年目の著者・岩佐氏は「GO」サインを出します。雪害と経年による痛みから改修費が1億円と見積もられた古民家。全面リノベーションを施すと、投資額の3億5千万円が圧し掛かり、銀行には開業後3か月で倒産すると予言されました。

  しかし、日本でも有数の絶景露天風呂と、唯一ここでしか食べることが出来ない「自然派日本料理」、ここでしか味わえない地元野菜がメインの食事、共感を呼ぶ客室を創り上げ、オープン3か月で客室稼働率92%を記録しました。宿の名は『里山十帖』、里山での10の物語という意味。

  デザイン的思考が成功の糸口とされていますが、私が考えるには

編集力

 のなせる業と思います。来られるお客様が求められるのは『心の湯治』として、そこに共感してもらえるお客さんをターゲットにしていく。これは「旅館というモノではなく、お越しになるヒト」にフォーカスした勝利でしょう。それを自力で築き上げたことが素晴らしい!数字ではなく感性を研ぎ澄ませることが大切ですね。

『里山を創生する「デザイン的思考」』(岩佐十良著、KADOKAWA、本体価格1,300円 )

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「地域課題を解決する中小企業・NPO法人 100の取組」

2015-06-23 15:54:16 | お店

  中小企業庁は2015年版中小企業白書を公表しました。

 その第3部では、中小企業・小規模事業者が根ざす「地域」についても取りあげており、具体的には、地域資源の活用や地域社会の課題の解決を通じた地域活性化の取組について、豊富な事例で紹介しています。そして、その事例集として、

 

 「地域課題を解決する中小企業・NPO法人 100の取組」

があり、その中のNo.93に井戸書店が掲載されています。

http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html#jirei

 ご覧いただければ幸いです。

 

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茶の本

2015-06-17 18:08:51 | 

  1906(明治9)年、外国人に向けて日本文化を紹介するために英語で書かれた「The Book Of Tea」です。単なる「茶」の本と思って読み始めると、とんでもないぐらい、日本の文化の奥行きを感じさせてくれました。

 まず、最初に驚いたのは、中国では茶と道教が深い関係を持っていること。「お客さんにお茶を出す習慣は、有名な老子の弟子である関伊(かんいん)が老哲人にお茶をふるまったのが起源である」とされています。日本では茶の湯は禅と深い関係があるので、タオ(道教)と禅の関係をお茶が取り持っていると感じました。

 そして、茶が日本芸術文化のフュージョン、融合体であるという発見をさせてくれました。茶室は日本の建築文化、一幅の掛軸または絵は日本絵画、花はいけばなや華道、庭は造園(作庭)、茶器は陶芸、茶道具は職人による技術などが合体して、はじめて茶の湯になります。

 茶人たちが織りなす茶の世界の土台が「禅思想」です。すなわち、茶人たちが禅の具現者になります。「茶人たちは、『芸術は、それを自身の生き方に反映させる人によってのみ、理解できるものだ』と考えてきました」のですから、茶人たちそのものが生きる達人なのでしょう。つまり、日本人の素晴らしい生き様を理解した人でなければ、優秀な茶人になれないのでしょう。人間力も高めないといけないのは、今も昔も同じです。

 岡倉天心の洞察力にも感嘆したことを最後に記しておきます。

『茶の本』(岡倉天心著、 夏川賀央・現代日本語訳、致知出版社、本体価格1,400円) 

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2万人の人生を変えた23通の手紙

2015-06-12 16:02:07 | 

 立花大敬さんは大阪大学在学中の19歳に京都の安泰寺にて内山興正老師から禅を学び、院まで進んだ学業の後、公立高校の教師生活を3年過ごしますが、再度禅修行のため出家。安泰寺・内山老師を訪ねますが、老師は引退し、学ぶ場を失った彼は寺も捨て、学習塾を開業。42歳に伊勢神宮参拝し、天命を知り、45歳で進学高校の教師として採用され、『しあわせ通信』というフリーペーパーを出し、それが全国で大きな反響を呼びました。

 本書はその『しあわせ通信』のアンソロジーとして書かれました。立花さんの禅的教えを非常にわかりやすくまとめています。それは、

 「人は〈今・ココ〉にしか生きていないのだから、〈今・ココ〉に全力でぶつかっていく」

 「徳は『心のエネルギー』であって、その大小は、その人の心が届く領域の広い・狭いである」

 「問題解決には、〈把住(はじゅう)〉→〈放行(ほうぎょう)〉でうまくいく」

としています。まさに、今・ココに集中し、本腰で取り組み、全身全霊で努力し、「我を忘れ」「無心になり」、スポーツ界でいうゾーンに入ると、ものすごい力を発揮することになります。

 特に、「徳」に続いて、「挨拶」にも触れていますが、これが興味深かったですね。「好きな人も、嫌いな人も、みんな自分の世界(心)の内側に存在することを許し、認める」ためにする「行」だと考えられています。挨拶をしても相手が挨拶をしてくれなくとも、見返りを求めることなく、「エゴ(個我)が介入しない『いのちの一体性』の実現のための修行とすれば、高い徳を有することに繋がります。いのちは自分のものだけでなく、すべてのいのちと関連している証左ですね。

『2万人の人生を変えた23通の手紙 夢をかなえる「いちばん簡単な考え方」  』(立花大敬著、イースト・プレス、本体価格1,400円)

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ぼくの命は言葉とともにある

2015-06-03 17:19:01 | 

 『ゆびさきの宇宙 福島智・盲ろうを生きて』(生井久美子著、岩波現代文庫、本体価格一一〇〇円)で知った、垂水区出身の福島智・東大教授。元気で陽気な男の子が3歳で右目を、9歳で左目を失明、14歳で右耳を、18歳で左耳を失聴し、暗黒の真空状態の宇宙に投げ込まれた思いを持った彼は、自ら「生きる意味」を問いかけ、

 「真空に浮んだ私をつなぎ止め、確かに存在していると実感させてくれるのが他者との存在であり、『心の酸素』である、他者とのコミュニケーション」

と考えます。そこには「言葉」が介在し、思索の積み重ねには実在の人だけでなく、点字での読書を通して、その本の著者とも思いを共有しています。


 『夜と霧』の著者であるヴィクトール・フランクルの、

「絶望=苦悩マイナス意味。絶望とは意味なき苦悩である」

という公式を、彼は、

「意味=苦悩マイナス絶望」、そして、「絶望」の反意語を「希望」とすれば、

「意味=苦悩+希望」

になり、生きていく上で必ず抱く「苦悩の中で希望を抱くこと、そこに人生の意味があるのだ」と結論付けます。「宇宙の中で自分が存在しているのは自分の力によってではない」、つまり、「自分を生かしている何ものかがこの苦悩を与えている」と考えれば、苦悩を思索する中で意味が醸成され、希望も生まれてくるのでしょう。

 そして、コミュニケーションで他者との関係性を生み、生きている実感を持つことが幸福の源泉とされています。いつでもどこでも他者とコミュニケーションが取れると信じている、五体満足の我々はリアルのコミュニケーションこそを大切にしていかなければなりません。

 (福島智著、致知出版社、本体価格1,600円)

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