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板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

東京放浪

2019-01-18 17:05:57 | 

 『ひと』(祥伝社)や『ホケツ!』(祥伝社文庫)で感銘を受けた小野寺史宜さんの作品を読み込もうとしています。今回は『東京放浪』(ポプラ文庫)ですが、なんと主人公が森くん26歳と、なぜかうちの長男の年齢に似通っています。

 小野寺史宜さんの物語は何かを喪失した状況でストーリー展開していきますが、今回は、入社3年目、百貨店の個人向け外商担当者だった森くんが、お客さんの理不尽な要求に腹を立て、会社を辞める、そして、会社の寮生活だったために、住処も同時に失います。彼のお姉さんのマンションに逃げ込もうとしますが、お姉さんは彼氏と海外旅行中。1週間後に戻るまでは、東京での放浪の生活を開始します。高校や大学時代の友だちや先輩、会社の同期、お姉ちゃんの女友達の家で1泊ずつ居候をします。高校の同級生のツネのアパートへ行くと、5歳の女の子・樹里ちゃんが出迎え、ツネの子どもであることが発覚!ここから、けっさくな話しへ進んでいきます。

 森くんが社会人の道を逸脱して、これからの仕事、そして、住居に悶々としていますが、彼は行く先々でも、「みんなも、もがきながらも進んでいるのだ」と認識します。「やりたいことなんて見つからないだろ。というか、やりたいことなんかなくてもいいんだよ。ただ、何かやりたいとは思っている。それで充分だろ。」とバイト仲間の宇野さんに告げられます。森くんは、「過去を受け入れたうえで何かを始めることぐらいは、できるかもしれない。」として、人生の再スタートを切ろうとして、エンディングを迎えます。

 ツネの部屋の隣に住んでいる、桑原果菜さんがとても優しく、素敵な女性ですが、東京駅の近くの本屋のアルバイトをしているという設定です。やっぱり、本屋の女性はいい人が多いと思うのは私だけか・・・。

『東京放浪』(小野寺史宜著、ポプラ文庫、本体価格680円)

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