あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

せんせいあのね 1年1組かしま教室 1 ひみつやで

2024-04-26 12:35:18 | 

 本書を見つけられて、「うわぁ~懐かしい」と言って、レジに来られたお客様。鹿島先生との思い出を語られて帰られました。鹿島先生は生徒にあのねちょうを用意させて、毎日作文を書かせました。その日にあったこと、気づいたことなどを書いたあのねちょうは必ず目を通し、はなまるやコメントを添えて、下校時には各生徒に渡す日々でした。子どもたちはどんなことをどんなふうに書けば、まるをもらえるか考えて、緊張して過ごしたことでしょう。子どもたちの作文に思わず笑ってしますことや、思いもよらない視点からものごとを見つめている驚きも感じました。

 6歳からアウトプットを日課にすれば、インプットの質は良くなり、量も増えてくることでしょう。子どもたちの作文には、心の鎧は取り外され、素朴な素直な心が滲み出ています。

『せんせいあのね 1年1組かしま教室 1 ひみつやで』(鹿島 和夫著、むかい さとこ監修、本体価格1,100円、税込価格1,210円)

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いい人ランキング

2024-04-24 14:18:36 | 

 中学生向けの小説。いじめの陰湿さ、それを乗り越える子どもたちに驚きながら、10代をどう過ごすかを考えさせられました。

 中学2年1組は文化祭でミスコンを開催予定していました。しかし、学校サイドからストップがかかり、「いい人ランキング」というコンテストに切り替えられました。クラスで各人が1票投票し、クラス1のいい人を選びます。母の再婚で2学期から木佐貫と名字の変わった桃が選ばれましたが、「いい人」というレッテルが貼られ、何でもかんでも頼みごとをされても応えなければならない「いじめ」に突入します。さらには誰からも話しかけられなくなり、桃は悩み、妹の鞠(まり)が師匠と読んでいる、2年4組の圭機(けいき)に相談します。彼はある策を提案します・・・。

 「いい人」になる必要なんてない。誰もが素敵な部分があり、そこではみんながいい人になる。人間には二面性があり、他人にとってはいい面と悪い面と評価されます。だからこそ、他人の目を気にせず、自分らしさを発揮したらよいとオジサンは考えますが、子どもたちは、心の中では「人目につきたい」活躍をしたいながらも、「人目につかない」存在になろうとしています。個性の時代と言われながらも、個性を消すスタイルが取られている矛盾を感じながら読了しました。

『いい人ランキング』(吉野万理子著、あすなろ書房、本体価格1,400円、税込価格1,540円)

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生き上手 死に上手

2024-04-23 14:16:29 | 

 昨年は生誕100年だった遠藤周作。六甲小学校、灘中、灘高と神戸で過ごしていました。エッセイの本書は遠藤の生き方について思う存分書かれています。

 カトリックであった彼の考えには仏教、特に禅や易経の思想も含まれています。「我々の人生で一時的にはマイナスにみえるものにも必ずプラスとなる可能性があり、その可能性を見つけて具現化さえすれば過去のマイナスもいつかはプラスに転じる」や、「本当に役にたつことは眼にみえぬことのなかに在る」などしっかりと的を得ています。

 また、「人間を計るに昨日と金とを以てすることが今日ほど強い時代はない」という時代を透徹していた言葉の質が今ではますます強くなり、人の心の重みが軽くなる傾向にあります。人の能力において測定できない範疇を加味しないとロボット一辺倒になりかねません。

 一番面白い視点は「愛について」でした。恋とは、愛とはの解説が本当に興味深く、ここを読むだけでも価値ある一冊です。「恋なんて誰でもできるもの。愛こそ創りだすもの。」は至言です。

『生き上手 死に上手』(遠藤周作著、文春文庫、本体価格740円、税込価格814円)

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縁結び代官

2024-04-16 13:50:56 | 

 少子化対策で大成功を成し遂げた政治家(当時は代官)が江戸時代にいた!?

 江戸で御徒組頭の寺西封元(たかもと)は老中の松平定信に突然呼び出され、叱責されるかと案じたが、天領の陸奥国白川郡塙(はなわ)の代官に任ぜられます。飢饉のためでも年貢はそのままのために、暮らしが困窮を極めた民は出奔、もしくは子ができても間引く、悲惨な地への赴任。そこに一つ条件が付加されます。三年のうちに人口を増加せよ!という命題でした。

 封元は土地を歩き、民の生きる不安の解消に精一杯働きます。その根本に民への教育がありました。人の道を説く八か条は儒学と石門心学を基本にしたもので、今で言うクレドの如く、民は諳んじて言えるまでにしていきます。部下のしくじりもすべて封元の責任とした、優れた上司でもありました。弱者を援け、心を養い、今を楽しむ姿は塙の住民から絶大な人気を誇りました。

 現在の政治家に読んでもらいたい!

『縁結び代官』(土橋章宏著、角川文庫、本体価格800円、税込価格880円)

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「まちライブラリー」の研究

2024-04-15 15:32:36 | 

 高校の2学年先輩の礒井さんの研究書です。本を媒体にした場つくりを12年前に提唱され、全国1千か所にも広がったまちライブラリー。私設図書館ながら、本を媒介すると不思議なほど、人と人との関係が形作られ、個が社会的な力を発揮し、それをベースに地域づくり、まちづくりまで波及する、誠に魅力的な取り組みです。

 2015年のマイクロ・ライブラリーサミットにお呼びいただき、それ以来ずっと注目していきましたが、なぜこんなに広がったのか?まずはルールや制度に縛られないスタンスが活きています。緩いというか、融通性があるというか。また、これこそ本の魅力なのでしょうか。本を介すれば、すぐにコミュニケーションが開始する。本にはすごい魅力が存在します。

 最後に、礒井さんのストライクな言葉はこれだと思いました。

 「個々の人生はそれぞれの人のものであって、他者、ましてや組織や地域に縛られすぎないことが大切であり、その意識の変革が個人の中で生まれることで、結果として地域や組織の風土も変わり得るということである。どうぞ、無理なく自らの生きやすい人生を歩んでいただきたい。」

 まちを変えようと声をあげ、行動を起こすと、従来の人たちがやっかみ、潰しにかかる。出る杭はまさに打たれます。その縛りを振り切るか、もしくは誰も真似できない、誰もしたがらないがやるだけの価値のあることを地道に長い年月をかけてやっていく、その活動に自己の楽しみを見いだせば、明るい人生が待っています。

『「まちライブラリー」の研究 「個」が主役になれる社会的資本づくり』(礒井純充著、みすず書房、本体価格2,600円、税込価格2,860円)

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娘が巣立つ朝

2024-04-15 15:08:23 | 

 5月13日に発売予定の本作のゲラを読ましていただきました。

 娘の高梨真奈が大学の同級生の渡辺優吾との結婚をめぐり、高梨家は嵐に突入します。渡辺家のご両親が変人であること、裕福な渡辺家と比べて釣り合いの取れない高梨家、そんな確執のある中で真奈と優吾の間にもすきま風が吹き始め、破談に突き進もうとします。そうこうしている間に、真奈の父と母の関係もぎくしゃくし始め、夫婦って何なのか、疑問が湧き始めます。

 長年連れ添っていると、相手の存在が「空気」と考えられる一方で、それでは本当の愛は、そこから生まれる関係性はいかなるものかを想いながら読了しました。

『娘が巣立つ朝』(伊吹有喜著、文藝春秋、本体価格1,800円、税込価格1,980円、5月13日発売予定)

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きみたちは宇宙でなにをする?

2024-04-10 12:57:54 | 

 副題「2050年に活躍するために知っておきたい38の話」の通り、2050年に大人になっている現代の中高生が未来を予測し、日本の近代史を振り返り、現在にどう考え行動するかを提案した1冊。

 デジタル技術の進歩ともに、集団から個への意識の移行など、今では考えられない社会での価値ある存在になるには、

「自分の頭で考えよう」
「挑戦と挫折は多ければ多いほどいい」

を10代ではやろうと提唱されています。AIやロボットの存在が大きくなるので、創造する力を有することが何よりも大事になります。また、自分がやりたいことを見いだすことも重要となります。

 人生100年時代なので、現代の大人も同じことを意識しなければいけません。

『きみたちは宇宙でなにをする? 2050年に活躍するために知っておきたい38の話』(山本康正著、飛鳥新社、本体価格1,346円、税込価格1,500円)

 

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すらすら読める新訳フランクリン自伝

2024-04-09 13:27:44 | 

 一度は読んでおきたいと思っていた本書。アメリカ建国の父ベンジャミン・フランクリンはいかなる人生を送ったのか。

 彼は様々な事業に携わっています。科学者であり、発明家であり、大学の創設やアメリカ初の公共図書館を設立だけでなく、印刷業をやり、政治や軍にまでかかわっています。リーダーとしての才能をいかんなく発揮した人でした。父が正義を教え、自らも読書に励み、「人の役に立つ」ことを念頭に行動し続けました。

 彼自身のクレドに相当する「13の徳目」はとてもオーソドックスなものに見受けられますが、習得するには困難の壁も立ちはだかります。習得に当たっての自分の方法まで克明に書いており、後世の人にはとても参考になります。自身の行動を何度も繰り返し顧みる、振り返る時間を設けて、次に活かす。書けば簡単ですが、チェックを怠らなかったわけです。

 印刷業を息子に譲ってからは、政治や軍事に足を踏み入れましたが、徳目の実践で最後は独立宣言の起草にまで携わりました。自利は避けて、民の利を考えるからこそ、名誉が書き加えられました。

『すらすら読める新訳フランクリン自伝』(ベンジャミン・フランクリン著、サンマーク出版、本体価格1,600円、税込価格1,760円)

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