あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

ウランバーナの森 新装版

2020-04-28 15:10:34 | 

 ジョン・レノンの便秘の物語。えぇ~それが小説!?そうなんです。途中までは、ジョンの体調不全の話を読まされますが、妻ケイコの助言で訪れた「アネモネ医院」の診療から怪奇な現象とともに、ジョンの精神的な状況と便秘が快癒します。

 著者・奥田英朗氏のデビュー作に取り上げたジョン・レノンの4年に渡る隠遁生活。1976年から79年までの毎夏を軽井沢で家族で過ごしていました。ジョン・レノンに関する書籍では、生誕からビートルズ解散まではたくさん書かれていますが、この隠遁生活についてはほぼ記述がない。また、隠遁生活後に作ったアルバムが家族愛を綴っていることから、奥田さんはこの間に「彼の心を癒すような出来事があった」と想像して書かれました。

 ジョンの病名である「過敏性大腸症候群(心因性の腸の不調)」は奥田さんが実際に患った病であり、そして、便秘に至っています。精神を病んだ奥田さんの経験がジョンの物語に大きく投影されています。治療し始めてからの不思議な事象の連続は、ジョンの人生における気がかり、つまりトラウマの解消につながり、特に母との関係、また、母の生い立ちを知ることが、ジョンのその後の生き様を明るくしました。「運命にやさしくなれるんですよ、大人になるっていうことは。」の言葉がそれを表しています。

 最後に、書名の「ウランバーナ」というのは、サンスクリット語で「苦しみ」という意味であり、「盂蘭盆会」の語源です。このジョンの話はお盆に起きています。

『ウランバーナの森』(奥田英朗著、講談社文庫、本体価格680円)

 

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易経 青龍の巻

2020-04-21 14:20:24 | 

 本書は『易経 陽の巻 夢をもつってどういうこと?』『易経 陰の巻 結果が出ないときはどうしたらいい?』に続く、第3弾です。これで易経による学びの完結です。

 中学時代は野球部で控えのピッチャーだった乾太(けんた)は高校に進学。野球部に入部届を提出しようとしていた矢先に自転車で転倒し、右ひじを負傷。半年は安静にした方がいいと言われたことを野球部の監督に伝えたところが、マネージャーをしてくれというお願いをされました。選手としての評価以前のことでモヤモヤしているところで、小学、中学の頃に、悩むと教えを乞うていた古本屋のゴロさんに、またもや易経の講義を受けました。

 教えその1 山天大畜(さんてんたいちく) 止められた時こそ力を蓄えるチャンスであり、新たな発見や経験をし、その先に才能を発揮することがあるとしています。大器晩成と同じこと。

 教えその2 毎日の反省し、自分の考え、行動の再構築をすること。

 教えその3 天雷无妄(てんらいむぼう) 欲や作為を持つ人間は無心な自然に従わなければならない。逆に、自らが犯す災い(人災)に要注意すべき。

 教えその4 風地観(ふうちかん) 些細なサインに気づいて、先を見通す、心の目で観ることが大切。

 野球を諦めかけた時に出会ったのがワンゲル部。乾太(けんた)は3年生では部長になり、部活動の実践の中に易経の学びを落とし込み、リーダーとして大成します。

 この3部作で、人はどのように生きていけば良いかを教えてくれます。私の印象としては、「反省」の大切さを学びました。日々の終わりに今日の行いを振り返る習慣を常に持たなければ、人としての成長はありませんね。

『易経 青龍の巻 自分の足で歩いていくってどういうこと?』(竹村亞希子・都築佳つ良著、新泉社、本体価格1,800円)

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花まるな人生

2020-04-20 14:48:36 | 

 花まる学習会の代表・高濱正伸さんの半生記と教育論。熊本県人吉で生まれ育った高濱さんは幼少期に自然の中で思いっきり遊びました。これだけでなく、囲碁やいじめ、恋愛、大人の会話など自分の置かれた場所での経験がすべて生きる糧になっていると考えられています。

 勉強もでき、熊本高校へ進学していますが、3浪の挙句に、東大生となるも4留という晴れ晴れしい学生生活を送っています。その間に徹底的に「はまる経験」を積んでいます。音楽、映画、落語、読書とのめり込み度は尋常ではないレベル。この回り道が高濱さんに天職への道を歩ませることになります。塾でのアルバイト、家庭教師、予備校講師、幼稚園のお泊り保育のサポートをすることで、教育の大切さを痛感し、33歳で起業。ここからは皆さんもご存じの通りの快進撃です。

 高濱さんの教育論で強調されているのは、頭の良さは「見える力」「詰める力」があることとしています。「見える力」は「本来見えないものがクリアに見える」、つまり、「本質が見える」こと。算数の図形や数学の幾何の問題で補助線が引ける力はこれに当たります。「俯瞰力」とも考えられています。また、「詰める力」は「最後まで論理的に詰めてやり切れる力」です。

 これは、『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え』(工藤勇一著、SB新書、本体価格830円)で重要視されていた「非認知スキル」と全く同じですね。「見える力」「詰める力」があれば、自律した人生への切符を得たようなものです。

https://blog.goo.ne.jp/idomori28/e/ced971697b403440f22687828586dd77

 学生時代の学びは社会人で活きてこその学業です。そのツボを知っておくことは成功への階段の第一歩です。

『花まるな人生 はみ出しても、回り道しても大丈夫!』(高濱正伸著、幻冬舎、本体価格1,200円)

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社員に任せるから会社は進化する

2020-04-18 12:26:45 | 

 「任せる」をテーマにビジネス書を読み進めています。『ガリガリ君の秘密  赤城乳業・躍進を支える「言える化」』(遠藤功 著、日経ビジネス人文庫、本体価格750円) 、『まかせる力』(髙田明・新将命著、SB新書、本体価格800円)、『スーツを脱げ、タイツを着ろ!』(江上喜朗著、ダイヤモンド社、本体価格1,500円)の次は本書。日本レーザー会長の近藤さんの推し進めた改革は、フレディック・ラルー氏の『ティール組織』の通りになっています。

 債務超過で銀行にも見放された会社に親会社から社長としてやってきた当時は、「オオカミの群れ」状態の組織で統率もなにもなく、依存した社員の巣窟。まずは、トップダウンで普通の会社へ戻し、社員第一主義に舵を切ります。「社員の雇用を守る」「社員の成長を促す」ことを主眼に、「自立した社員が想像的な活動をしてさまざまな変化に対応できる組織」へ変革しました。企業理念の共有、クレドの実践、大幅な権限移譲、モチベーション向上のための施策、会社の都合より社員の都合を優先などを行い、会社は無借金体質の黒字会社へ。

 井戸書店も目指します、『ティール組織』。

『社員に任せるから会社は進化する 日本版「ティール組織」で黒字になる経営の仕組み 』(近藤宣之著、PHP研究所、本体価格1,500円)

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にじいろガーデン

2020-04-16 14:45:17 | 

 「電車のホームの向こう側の女子高生が電車に飛び込む」と思った泉は女子高生に声をかけ、そのまま一緒に家に帰るところからスタートする物語。泉は旦那が家を出て、息子の草介と暮らし、離婚しようかどうか悩み、女子高生の千代子はレズビアンである自分に苦しむ。その日のうちに彼女たちはカップルになり、田舎に駆け落ちする…。家族小説とはいえ、同性愛?と侮るなかれ、一気に物語に引き込まれ、最後はボロボロと落涙でした。全部で4章、各章ごとに家族の一人一人が主人公になって思いを伝えています。

 千代子ママが亡くなった時も、「家族がいれば、きっと大丈夫よ。その時は悲しくてどうしようもなくても、いつか笑える日が必ず来るから。家族は、ちゃんと仲良くしてね。何があっても、受け入れて許すことが大事よ。」

 「幸せな記憶が腐らないように、塩漬けとか味噌漬けとかにしておいて、なくならないように配分しながら人生のおかずにして生きていく。」

 「毎日、同じ景色を見て笑ったり泣いたり、同じ物を食べるうちに、だんだんお互いに距離が近づいて、相手のことが理解できるようになったの。」

 性別は関係なく、ひとつ屋根の下に暮らすことこそが家族にとっては意味あることですね。

『にじいろガーデン』(小川糸著、集英社文庫、本体価格620円)

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スーツを脱げ、タイツを着ろ!

2020-04-14 13:07:47 | 

  おやじさんの後継として、福岡の自動車学校の三代目社長・江上喜朗氏は会社の大改革を行いました。このままでは、「座して廃業に向かうオールド・カンパニー」である会社、数年先には自動運転車が路上を走る将来を考えて、未来につながる企業価値の再定義をしました。つまり、存在しなかった経営理念を創ります。それは、

 『感性あふれる「ひと」をつくる』

でした。自動車の運転を教える範疇にとどまらず、他のことも教えることを念頭に置いて、価値変更を行いました。そして、社長自ら、緑色のシャツとタイツの「かめライダー」に変身し、安全運転の講習を始めました。常識破り、バカになる以上に、各メディアが取り上げ、広告効果抜群でした。しかし、会社の方針についていけず、退職者が続出し、おやじさん含め外野からは大きな批判を浴びます。しかし、「改革を進める経営者が覚悟しないといけないのはこの『目先のストレスを受け入れること』」と、社長の賛同者と改革を進めました。

 また、「愛あるおせっかい」「楽しく笑いを交えて」「ゲーム感覚」など、従来にはない教育法を取り入れ、現行の当たり前を打破しました。授業での映像を自社で作り、顧客満足を向上させ、さらには東南アジアの自動車学校へ資本参加するなど、海外への進出もされています。

 自社がオールドカンパニーだと思う経営者(私もその一人です)、企業価値の再定義ですよ!

『スーツを脱げ、タイツを着ろ!』(江上喜朗著、ダイヤモンド社、本体価格1,500円)

 

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まかせる力

2020-04-13 13:28:21 | 

 ジャパネットたかた創業者の髙田明さんと、彼がメンターとして尊敬する新将命さんとの共著。髙田さんがジャパネットたかたの社長、そして、MCを辞め、V・ファーレン長崎の社長に就任し、チームもJ1に昇格した時の対談でもあります。

 仕事を任せるということは非常に難しい。上司としては、自分がやったほうが速い、正確なので、ついやってしまいますが、組織が大きくなってきたり、自身の年齢の問題で任さなければならない。それでは、任すとはどういうことか?

 当たり前ですが、「人に何かを『まかす』という行為は、相手を信頼するということ」であり、まかす側とまかされる側は、原理原則、会社で言えば、経営理念やそれを行動に落とし込んだ信念であるクレドが相互に共有される状態が必要です。会社の方向性を指し示すのは経営者、戦術を練って実行するのが社員です。

 まかせたら、口も手も出さず、聞かれたらヒントを与えるだけにして、失敗はあっても、「1回目の失敗は『経験』、2回目の失敗は『確認』、3回目の失敗は『阿呆』」という認識を持つように示しています。

 本書は「まかす」ことを通して、経営の本質、経営者の在り方が詳細に書かれています。そして、経営者の仕事の半分は「事業承継」をしっかりと行うこととされており、59歳の私としても準備をしていかなければなりません。

『まかせる力』(髙田明・新将命著、SB新書、本体価格800円)

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易経 陰の巻 結果が出ないときはどうしたらいい?

2020-04-11 11:58:10 | Weblog

 『易経 夢をもつってどういうこと? 陽の巻』(竹村亞希子・都築佳つ良著、新泉社、本体価格1,800円)の続編、陽の次は陰を読みました。

 前作で小学5年生だった乾太(けんた)は中学生になりました。野球部に入部しましたが、同時に入部した1年生は少年野球経験者が多く、歴然たる差を感じていました。そして、禁止されていた、帰宅時の買い食い、挙句の果てに万引き騒動に巻き込まれ、失意のどん底。河川敷の掃除をし終わったら、練習に参加させるというお達しを野球部の監督から受けて、来る日も来る日も掃除に勤しむ乾太。

 彼は易経の「坤為地(こんいち)」、牝馬の話を教えられます。牝馬は大地を良くするための馬。人が嫌がる重労働に励み、よりよい社会へ努力します。ここでの教えは「牝馬はしぶとく忍耐強く、すべてを受け容れて従う」そして、「まっすぐ向き合って取り組み」、「状況の厳しい方を選択する」です。つまりは良き習慣を身に付けることにほかありません。

 乾太は努力の甲斐あって、中学3年生の夏の予選大会では活躍できるでしょうか?

『[こどもと読む東洋哲学]易経 陰の巻 結果が出ないときはどうしたらいい?』(竹村亞希子・都築佳つ良著、新泉社、本体価格1,800円)

 

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学校の「当たり前」をやめた。

2020-04-09 14:27:43 | 

  『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え』(工藤勇一著、SB新書、本体価格830円)は保護者向けに書かれた子育て本だったので、学校での本当の改革はどうか?を確認したく読みました。

 明治以降、教師が生徒に対して教室で一斉授業を行うスタイルになって、それが当たり前と落ち着きました。工藤氏が求めている、子どもたちの将来における教育は、江戸時代の寺子屋がモデルとなっています。寺子屋では、「読み書きそろばん」、つまり、すぐに仕事で使えることを学んでいました。例えば、書きは請求書や納品書ほか、商売で使えることを書くことを練習していました。また、その学び方は、理解している子どもが教える形でした。教えることが一番の学びですね。

 麹町中学校でも学習指導要領には則って学びつつ、生徒が実業を意識した学びに落とし込んでいます。修学旅行は、JTBさんの力を借りて、京都・奈良の修学旅行から戻ったら旅行ガイドを作成しています。どのようなガイドブックにするかはチームに委ねられています。彼らは自由な発想で作成するため、修学旅行では誰にインタビューするかまで事前に考えます。主体的に考え、チームで相互に教えあいながら、行動することを学びます。

 このように、学業は実業に応用されること、そのためにも学業をしっかりと身につけなければならない。素晴らしいアウトプットのためのインプットが循環されています。学びの仕組みはアクティブに変わっています。

『学校の「当たり前」をやめた。』(工藤勇一著、時事通信社、本体価格1,800円)

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麹町中学校の型破り校長 非常識な教え

2020-04-06 14:58:58 | 

 公立中学校ですが、宿題廃止、定期テスト廃止、固定担任制も廃止。その最大の目的は、将来社会人になった時に一番要求される「自律」の力を養うためです。自律とは「自分で考えて、判断し、行動できる」こと。そのために、自律を遮る学校の「当たり前」をやめてしまいました。

 自律するためには、課題発見力と解決力、試行錯誤を続け、挑戦意欲、情報活用力、感情コントロール、人を動かし、巻き込む力、ゼロから価値を生み出す力などの「非認知スキル」が必要であり、これらは答えのない問題を解くスタンスです。教師や保護者の大人は、子どもたちが自立へ向けた過程を、ひたすら「待つ」ことが重要です。こちらから助けを少しでも、先にしようものなら、子どもたちは依存することを覚え、自律の道を遮断します。

 この本を読み進めていくと、前回紹介した、『ガリガリ君の秘密  赤城乳業・躍進を支える「言える化」』(遠藤功 著、日経ビジネス人文庫、本体価格750円) の内容との共通点が多いと思いました。そういう意味では、赤城乳業では、仕事を通して、学校時代では培われなかった自律力を人材育成され、自律型社員となり、赤城乳業の成長を支えています。逆に言えば、本書は子育本とされていますが、ビジネスに十分応用されると考えます。中学生で出来るのであれば、大人が出来ないはずはありません。自律人がキーワードになりますね。

『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え』(工藤勇一著、SB新書、本体価格830円)

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