あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

お客を捨てる勇気

2022-07-27 14:45:35 | 

 店舗を構える者にとっては、お客さまにはお越しになってほしい!と思うのは当たり前です。しかし、インターネット通販を利用すれば、1歩もであるくこともなく問い合わせも買い物もできます。今じゃ、コロナや熱中症対策、はたまた、値上げラッシュによる買い控えからか、来店客数は減る一方です。どうすればよいか?そのためには

 ストレスを感じながらも「どんなお客さまにも来て欲しい!」から「来て欲しいお客さまだけお越しになって欲しい」、つまり、「お客を捨てる勇気」を持ちなさいになります。その第一歩が

 「自分だけの旗を立てなさい」

です。顧客ニーズを追いかけるのではなく、「自分がどうしたいか」という自分ニーズ、理念を打ち立てて、実践していく。このお想いしっかりと伝えて、共鳴してもらえるお客さまだけとお店のコミュニティを作り、生涯顧客になっていただく。これがブルーオーシャンへの切符になります。

 もう一度、自分自身と対話してみましょう!スモールビジネス経営者は開眼できます。

『お客を捨てる勇気』(中谷嘉孝著、クロスメディアパブリッシング、本体価格1,580円、税込価格1,738円)

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図解 世界史で学べ! 地政学

2022-07-26 13:02:57 | 

 地理は変えれません。国境が決まってしまえば、自国の地理的条件が決定づけられ、他国との関係を読み解く上で、重要な指標となります。ロシアのウクライナ侵攻から、地政学が注目されていますが、世界史の流れも加味した本書は大変理解しやすいと思います。

 地政学的には、ランド(陸)パワーとシー(海)パワーの国があり、ロシアは世界最大のランドパワーです。ユーラシア大陸を一つの島と見れば、ヨーロッパは半島になり、その付け根がバルト三国~ベラルーシー~ウクライナ~黒海を結ぶ地点になり、ロシアが海への通路を考えれば、凍る北極海ではなく、黒海に向けるのは当然であり、ウクライナのキエフ公国がロシアの元の国であることから、ウクライナを取り戻すことによって、NATOとの力関係を同等、対等に保ちたいのでしょう。これが本書では図解を含めて、詳細に説明されています。

テレビで世界のニュースを観て、どんな地理条件と歴史でそうなったのかを探るには最適の1冊です。テレビの良くに常備しましょう。

『図解 世界史で学べ! 地政学』(茂木 誠著、祥伝社、本体価格1,111円、税込価格1,222円)

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もしも虫と話せたら 

2022-07-25 16:07:22 | 

 職場の人間関係がうまく機能せず、生き方に悩む、29歳の太郎くんがお盆で実家に戻り、子どもの頃に虫取りをした雑木林に入っていくと、人間の言葉をしゃべる虫たちから「自然の法則」を15も教えてもらいます。これが心にジーンとしみ込み、立ち直っていきます。

 私には、アフリカで暮らすサバクトビバッタの教えが気になりました。「一番変えやすいのは自分だぞ。他人が変わってくれることに期待するな。自分自身に期待しようぜ。」

 GW以降、食品、電気などすべての商品やサービスが値上げを公表し、お店への来店されるお客様が激減しております。戦争が早く終わればと思ってみても、いつもことやらわかりません。こうなったら、店が変貌をすることによって、お客様にお越しになってもらおうと思っていたところでした。サバクトビバッタの言葉に背中を押されました。

 他の虫たちの教えも素晴らしいし、虫の生態に関しても興味深い事ばかりでした。この本は漢字にルビが打っていますので、親子で読んで感想を言い合う団欒を持ってはいかがでしょうか?会話が弾むはずです。

『もしも虫と話せたら』(ペズル/文 じゅえき太郎/絵 須田研司/監修、プレジデント社、本体価格1,300円、税込価格1,430円)

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腹を割ったら血が出るだけさ

2022-07-22 14:37:44 | 

 高校生の茜寧(あかね)は「少女のマーチ」という小説の主人公とそっくりに、その小説の場面さえも模して現実を生きる設定でストーリーは展開します。その根底には、周りのみんなに「愛されたい」という思いに囚われて、息苦しさを感じます。

 腹を割ったら血が出ようが、「素の自分」で生きろ!と声を大にして叫びたい。相手のことばかりを考えて毎日を過ごすのはゴメンです。

『腹を割ったら血が出るだけさ』(住野よる著、双葉社、本体価格1,500円、税込価格1,650円)← 7/27発売予定

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旧友再会

2022-07-21 14:33:44 | 

 学生時代、本当に友だちだったのか、少し不確かなまま、親の介護が必要な50代後半に再会すると、その同級生の抱く悩みの解決に友だちとして共鳴し、行動する、そんな物語が続きます。親、子ども、自分の働き方に対する課題へアプローチする手法は違っても、穏やかな流れに漂い、心地よさを感じます。

 「ホームにて」では、年下の上司に仕える身として、家族を顧みず休日も働く姿は、自分の父と同じであり、立ち食いそばのおやじに「休む元気」を示唆されることまで生き写しのような生きざまを描きます。

 「どしゃぶり」では、中学の野球部だった同級生3人が集うが、それぞれの課題への対処で悩みつつ、部活の名物トレーニングを共有することで、心を通わし、少しは現実逃避を試みます。

 著者の重松清が同年輩のため、読むと共感する短編集でした。50代後半から60代の男性は心打たれるはずです。

『旧友再会』(重松清著、講談社文庫、本体価格780円、税込857円)

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バッグをザックに持ち替えて

2022-07-12 14:48:31 | 

 東京で生後3か月のセントバーナードの雌犬を飼ったが、暑さにバテぎみなので、軽井沢在住の作家との対談時に不動産屋さんに案内してもらって、即決の移住。ちょうど直木賞受賞と同じタイミングで仕事が多くなるけれども、犬の命には代えられません。

 軽井沢を舞台の小説を書くにあたり、浅間山も登場させるために登った方が良いだろうということになったが、登山と無縁だった著者は、体力的に途中で断念を何度も体験し、最後には登山経験のある夫の支えもあり、浅間山に登頂します。

 山に登って素敵な思いをしたら、登山にハマるのが常でして、谷川岳、八ヶ岳、富士山、挙句の果てにエベレストも見るためにネパールの5000m超えのトレッキングまで敢行。

 「山との出会いは、自分との出会い」~これから登山をしようとお思いのあなた。一読すれば、次の週末は山頂に立っているかもしれません。

『バッグをザックに持ち替えて』(唯川恵著、光文社文庫、本体価格600円、税込価格660円)

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キリの理容室

2022-07-11 15:46:35 | 

 主人公の神野キリは名前の通り、理容専門学校を卒業し、理容師になりました。その志望動機は、父と別れ、キリも捨てた、繁昌していた理容店を営む理容師の母への復讐、仕事で見返すことでした。卒業後に修行として勤めたバーバーチーは母が独立前に働いていた店。そこで一人前への道を歩むキリは理容師として、1人の仕事人としての気概を植えつけられます。

 「自分の仕事に頭を下げる」「誇りを持っている仕事」「自分を知れ!」「お客さまが本来持っている輝きに磨きをかける」「いつも同じ気持ち、同じ仕事振りを心がける」

などを理解し、行動へ移すことで、母の力量を超える階段を昇っていきます。そして、理容師としての母の思いを知り、さらに大きく飛躍するキリの成長は人間の器の大きさを変えていきます。

『キリの理容室』(上野歩著、講談社文庫、本体価格770円、税込価格847円)

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錦繍

2022-07-11 15:26:18 | 

 10年前に離婚した元夫と蔵王のゴンドラ・リフトで偶然にも同乗し、お互いに誰かはわかっていながらも、再会時には言葉を交わさず別れましたが、彼の住所を調べて、そこから手紙の交換が始まり、書簡集としての物語になっています。

 離婚に至る発端の事件が京都嵐山の旅館での元夫と他の女との心中事件でした。命を取り留めた夫とは事件の詳細、そして情死した女のことも聞かずに10年を経て、お互いに過去を手紙で語り合い、今は別々の道を生きるとも、本当は愛し合っていた、ラブレターの応酬になっています。過去を綴る中で、

 「生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら同じことかもしれへん。」

という思いを共有し、今を懸命に生きています。その姿を理解することこそが過去の誤解を融解し、互いに認め合うんだなぁと感慨深く読了しました。

『錦繍』(宮本輝著、新潮文庫、本体価格550円、税込価格605円)

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水上のフライト

2022-07-04 15:28:42 | 

 走り高跳びでオリンピック代表に選ばれた、大学3年生の藤堂遥は不慮の交通事故に遭遇し、下半身が不随に陥りました。家庭では母にあたり、大学へも行かず、まさに自暴自棄。そんな彼女を引っ張り出したのが、高校時代の恩師宮本先生。彼はフリースクールで授業として行っているカヌーを遥に進めます。元来のスポーツ選手としての底力、そして、果てしない負けん気に再び点火して、パラリンピックカヌー選手として羽ばたきます。

 人は一人では生きてはいけません。周りのサポートがあってこその結果があります。天狗だったオリンピック代表選手から一皮も二皮も脱皮した遥は美しい。

『水上のフライト』(土橋章宏著、徳間文庫、本体価格650円、税込価格715円)

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はじめての利他

2022-07-04 14:50:32 | 

 利他に関する書籍も増えてきて、新自由主義による自利一辺倒では社会が成り立たないことが浸透しているのかもしれません。

 本書の帯に、「日本初の利他の入門書」と書かれてある通り、東西の思想家から紐解かれたものはなかったでしょう。

 利他と自利、エゴイズムと分けて捉える西洋に対して、東洋では統合して考えます。最澄の「忘己利他」は「いのち」あるものすべてに寄り添う姿勢であり、空海の「自利利他」は「自己を深める」を意味し、それは人々の悲しみや苦しみの根源まで考えての行動が自利にも及ぶと述べています。

 道元の「愛語」、孔子の「仁」、吉田松陰の「道」、西郷隆盛の「敬天愛人」、二宮尊徳の「誠の道」、中江藤樹の「孝」、そして、西洋ではフロムの「愛」まで考察し、利他を学べます。

 現代では、携帯やスマホの登場で「つながり」が簡単になりましたが、本当の意味での「つながり」は便利とは対極にあるかもしれません。利他に生きる「善」を日々続けていくことしかない。

『はじめての利他』(若松英輔著、NHK出版、本体価格670円、税込価格737円)

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