天下分け目は関が原とされていますが、天下統一に向けての両雄の戦いとなると小牧・長久手の戦いとなるでしょう。本書は両雄の独白の応酬で進みます。
織田信長・信忠が本能寺の変でこの世を去った後、名目上は織田家の跡目争いの形を取りながらも、実質は天下統一を目指す、羽柴秀吉VS徳川家康の決戦。戦力では秀吉軍が有利にもかかわらず、三河武士の命を恐れない凄まじい威力に、戦闘では家康軍に軍配は上がるも、天下を得る戦いには、軍師・黒田官兵衛を有する秀吉が勝利を得て、豊臣政権がその後成立します。言い換えれば、合戦力では徳川に、心理戦・人間観察による打つ手には羽柴に勝利の形をもたらしています。
家康の外交担当のNo.2の家老であった石川数正の出奔の理由は歴史上は定かではありませんが、本書での推理は頷けます。さすがは家康とも納得します。家康の名言「人の一生は、重き荷を負うて遠き道をゆくがごとし。いそぐべからず。」の通り結果を生んだのもこの戦いだったと思います。
『関ケ原よりも熱く 天下分け目の小牧・長久手』(白蔵盈太著、文芸社文庫、本体価格720円、税込価格792円)