あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

インプット・ルーティン 天才はいない。天才になる習慣があるだけだ。

2024-07-25 14:26:13 | 

 呼吸や排便のように、アウトプットをすると自動的にインプットが遂行されると思っていましたが、それは身体のしくみだけでした。クリエーターからすると、良いアウトプットをするにはインプットの質と量が圧倒的に大切であることを、本書を読んでまざまざと知りました。それが、

 「アウトプットの質と量は、インプットの質と量が決める」

です。そんなのクリエーター、クリエイティブになる人だけだと考えているとしっぺ返しを喰らうと思います。AI、人工知能の発達は今後の人のあり方を変えていきます。つまり、AIのできないこと、創造性や想像力を駆使することを人が担うこととなれば、誰しも少しでもクリエイティブな人生を歩む方が良いに決まっています。

 それではどうすればよいか?「精度の高いインプットを仕組み化している」、要するに、有限である時間に良質のインプットを吸収する習慣を体得することが重要になります。「自分を賢くしないものを、自分の目と耳と口に入れない」、至ってシンプルな方法です。インプットに値するものとは、「歴史にくさびを打つもの」、「受け取る者の価値観をゆさぶるような大きな『問い』が含まれているもの」としています。読書家と言っても、意味ある書籍を読まなければなりません。本書には、書籍だけでなく、美術、映画、演劇、音楽、そして食に至るまでその方法を詳述しています。

 特に印象に残ったのは、インプットをする場所。インターネット回線のない場所を自ら持てるか。私にとって、これは大きな課題です。

『インプット・ルーティン 天才はいない。天才になる習慣があるだけだ。』(菅付雅信著、ダイヤモンド社、本体価格1,600円、税込価格1,760円)

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日本思想史マトリックス

2024-07-22 14:06:56 | 

 駿台予備校の世界史の講師の著者は地政学も含めて著書も多く、またわかりやすい内容が多い。本書も日本を縄文から現在までの日本思想のさまざまを4つのマトリックスに位置付けて考察しています。

 4つのマトリックスのものさしは縦軸にグローバリズムーナショナリズム、横軸は国家主義ー個人主義です。歴史の見方がわかる座標軸として、時代時代の思想をプロットしています。例えば、縄文は狩猟生活だから、個人主義でナショナリズムであり、農耕がメインになる弥生時代は国家主義でグローバリズムに位置します。このように各時代ごとの主な日本思想を明解に解説しています。

 特に、強調されていたのは、天皇の位置づけです。天皇は「しらす」存在、つまり、「民をよく知る」「民に心を寄せる」意味での祈りを捧げる立場で、実際の政治、統治は豪族、公家、武士が執り行っています。また、日本の思想の根本はナショナリズムで個人主義のエリアがであり、縄文の思想が根付いているということなのでしょうか。

 副題の通り、「日本人とは何か」がわかる1冊です。

『日本思想史マトリックス』(茂木誠著、PHP研究所、本体価格1,900円、税込価格2,090円)

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関ケ原よりも熱く 天下分け目の小牧・長久手

2024-07-15 09:32:14 | 

 天下分け目は関が原とされていますが、天下統一に向けての両雄の戦いとなると小牧・長久手の戦いとなるでしょう。本書は両雄の独白の応酬で進みます。

 織田信長・信忠が本能寺の変でこの世を去った後、名目上は織田家の跡目争いの形を取りながらも、実質は天下統一を目指す、羽柴秀吉VS徳川家康の決戦。戦力では秀吉軍が有利にもかかわらず、三河武士の命を恐れない凄まじい威力に、戦闘では家康軍に軍配は上がるも、天下を得る戦いには、軍師・黒田官兵衛を有する秀吉が勝利を得て、豊臣政権がその後成立します。言い換えれば、合戦力では徳川に、心理戦・人間観察による打つ手には羽柴に勝利の形をもたらしています。

 家康の外交担当のNo.2の家老であった石川数正の出奔の理由は歴史上は定かではありませんが、本書での推理は頷けます。さすがは家康とも納得します。家康の名言「人の一生は、重き荷を負うて遠き道をゆくがごとし。いそぐべからず。」の通り結果を生んだのもこの戦いだったと思います。

『関ケ原よりも熱く 天下分け目の小牧・長久手』(白蔵盈太著、文芸社文庫、本体価格720円、税込価格792円)

 

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おやときどきこども

2024-07-11 16:42:18 | 

 博多で塾を経営されている鳥羽さん。彼の人間を観る(診る、看る)視点はとても温かい。特に子どもへの愛情は深い。塾で三者(親子と塾の先生)面談での模様が多数書かれていますが、子どもの教育や生活態度について親は語る根本は保身であったり、上手く育てれないために自罰的になるため、精神的、心理的な圧力が自分の子どもへ負荷されます。それが何度も繰り返し行われると子どもにはトラウマになったり、子どもの潜在意識に負の意識が沈殿していきます。

 そうならないためにも、現実のいまここに味わいつつ向き合い、「大人に必要なのは、子どもを理解することではなく、子どもと自分との関係性を理解すること」と述べられています。子どもの課題に対し、俯瞰的に観察し、子どもの心を開いていくように話すべきと頭でわかっていても、実際は自分に引き寄せて考え話してしまいます。

 子どもを育てるのは初めてでも、子どもとして育てられた経験から、親からの手ほどきを子どもに施してしまう、負の連鎖にならないためにも、親としては一読すべき本だと思います。子どもが親になった今でも、この本を読むと後悔しかありません。

『おやときどきこども』(鳥羽和久著、ナナクロ社、本体価格1,600円、税込価格1,760円)

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しゃべれども しゃべれども

2024-07-07 11:51:37 | 

 主人公・今昔亭三つ葉は二つ目の26歳の落語家。しかしながら、近頃は高座での調子がいま一つで、自分の落語に自信が持てない。そんな彼におしゃべりを学びたいがために、落語教室をしてほしいという。テニスのコーチをするいとこ、おしゃべり教室に通っていたOL、大阪から転校してきたが、大阪弁しか話せないためにイジメを受けている小学5年生男子、そして、仕事でうまくしゃべれない野球解説者が集い、『まんじゅうこわい』を稽古します。最後には発表会までやってしまい、その顛末はお読みください。

 落語家として悩みを抱える三つ葉はこれからどうするべきか、どう落語を捉え、いかなる落語家になるかについて考えるにあたって、落語教室に通う4人へのアドバイスが自分の心にも突き刺さっていると思います。そういう意味では、「教える」ことは一番の学びであることになっているのでしょう。つまり、アウトプットをすることが人を育てるんですね。

『しゃべれども しゃべれども』(佐藤多佳子著、新潮文庫、本体価格710円、税込価格781円)

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今夜、喫茶マチカネで

2024-07-04 14:39:58 | 

 明日発売の増山実さんの新刊の舞台は待兼山。私にとってはこの山名は聞き覚え大ありで、大学の教養の2年間登りました。その麓の商店街の、1階はらんぷ堂書店、その上の喫茶マチカネ街での物語。このご時世か、65年の歴史にピリオドを打つということで、9月末に両方の店が閉店の意向を店主から訊いて、毎月1度夜9時から待兼山界隈の思い出話を語る「待兼山奇談倶楽部」を開催することに。いくつもの人情深い話が披露され、このまま店を閉じるのがもったいない思いにさせてくれました。

 私は「銭湯のピアニスト」がとても印象に残りました。あんなことが銭湯で行われていたとは想像もつかないし、苦学生の大学生活に潤いも与えていたんですね。さらに「風をあつめて」では、らんぷ堂書店の開業の思い~「少しでも平和でいい世界にするために、自分が良いと思った本を、みんなに届けること」には書店主としても心が打たれました。

 どこの街にもいろんな日々の1ページがあり、その積み重ねで街は構成されています。自分の今日の行動や発言が今と未来を形作ります。

『今夜、喫茶マチカネで』

 

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碁盤斬り 柳田格之進異聞

2024-06-27 17:03:38 | 

 只今、ロードショー中の『碁盤斬り』は落語の「柳田格之進」をベースにした作品。実直で曲がったことの嫌な浪人・格之進の囲碁の物語に、彦根藩在籍当時のストーリーを加味した話にぐっと引き込まれました。

 裏長屋で娘のお絹と貧しい暮らしを送る格之進。書や篆刻を作り売り生計を立てようとするも、お絹の縫物の手間賃の方が足しになりながら、さりとて真っすぐな性格はそのまま、囲碁と少しの酒を楽しみに長屋住まいを楽しんでいます。囲碁の対局を通して質屋の萬屋の源兵衛と親しくなったが、月見の宴を楽しむ日に萬屋の離れで二人は碁盤を挟んで対局しますが、貸していた五十両が戻り、源兵衛の手元に手代が渡すも、源兵衛が小用をした折に五十両の行方が分からなくなります。格之進が盗んだのではないかという嫌疑を萬屋はかけるも…。このあたりは落語そのものです。

 格之進が覚えのない罪をきせられた事件を理由に彦根藩を去る前、妻が琵琶湖で自死してしまったその訳も分からなかったが、当時の同僚が真相を格之進に伝えることから、仇討ちの旅に出ます。ここからが落語に付け加えられたストーリーで緊迫した場面が続きます。

 さて、囲碁を通して、人とはが語られています。「碁を打てば人間が磨かれます。自ずと気品が備わってくるものです。それが勝負の本当の目的のように思うのです。」勝ち負けに終始すれば、心が卑しくなります。「正々堂々嘘偽りなく」は今の世にも響きます。

『碁盤斬り 柳田格之進異聞』(加藤正人著、文春文庫、本体価格720円、税込792円)

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いのちのひろがり

2024-06-26 14:27:12 | 

 生命誌を提唱している中村桂子さんの思いを絵本にしています。子どもたちだけでなく大人も是非読んでもらいたいです。

 家や庭にやってくる昆虫や気持ちを和らげてくれる花々。中村さんは親愛の情を持って話しかけます。その理由を探るために、人間の祖先の旅に出かけます。その終点は一個の細胞です。私たちも母親のお腹の中で精子と受精卵からできた細胞から出発します。

 次には地球の誕生から現代に至るまでの進化の旅に出ます。地球に生存している動植物はどのように生まれてきたか?46億年の時間はとてもドラマティックです。

 最初はすべて細胞から分化していっただけの生物。仲間であることは間違いない。分け隔てなく「生」を謳歌するべきだし、それを阻害してはなりません。人間同士の争いは細胞に対して恥ずかしい行いだということは断言できます。

『いのちのひろがり』(中村桂子・文、松岡達英・絵、福音館書店、本体価格1,300円、税込価格1,430円)

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ありがとうの神様

2024-06-24 16:39:22 | 

 お亡くなりになって12年経ちますが、まだ売れ続けています。これはスタート地点が分かりやすいからだろうと思います。

 人間は「こうなりたい!」と願うものですが、いまの時点の自分をすべて受け入れて感謝の念を抱こう!~「思い通りにならなくていい」「こうなりたいという思いさえ持たなければいい」と述べてます。つまり、競争や他人との比較を避けて、「いかに喜ばれる存在になるか」に焦点を絞れと。頼まれごとは素直に実行することで、信用を得る。

 「ありがとう」を言い続けると、「ありがとう」と言いたくなる現象が引きおこるのなら、幸せにつながるということです。「不平不満」「愚痴」「泣き言」「悪口」「文句」はNG。何があっても「ありがとう」です。

『ありがとうの神様』(小林正観著、ダイヤモンド社、定価1,600円、税込1,760円)

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左脳さん、右脳さん。 あなたにも体感できる意識変容の5ステップ

2024-06-21 16:07:57 | 

 ある日突然、思考が消えて、完全なるマインドフルネスになった著者・ネドじゅんの体験談であり、意識変容への手順を説いています。これはまさに潜在意識への到達であり、その先にある全体、大自然への融合の道筋が書かれています。

 その一歩として、「呼吸」があげられています。「エレベーターの呼吸」は本当に気を静める深呼吸であり、雑念を振り払い、「過剰になった思考を収め、身体の内側の生命エネルギーと触れ合える」状態に達します。それを邪魔するのは思考です。本書では「左脳さん」こそが意地悪な存在。「右脳さん」の働きを全開にすることが幸せを導きます。

『左脳さん、右脳さん。 あなたにも体感できる意識変容の5ステップ』(ネドじゅん著、ナチュラルスピリット、本体価格1,400円、税込価格1,540円)

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