あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

死ぬときに後悔しない方法

2020-11-18 17:15:32 | 

   子どもの頃から、「死んだらどうなるんやろぉー⁉」「僕の意識はどっかに行くんかなぁ?」と思い悩む日々がありましたが、生きることに忙しくなるとすっかり忘れていました。しかし、昨年、父を亡くし、看取った経験から、またもや、「おやじはどこかへ行ったのか?」と考えています。

 しかし、ローマの哲人はそんなもやもやを吹き飛ばしてくれます。

 「死にたくないという者は、生きることをも拒んでいるのだ」執着しているだけで生きていないということでしょうか。

 「『長生きをした』と思えるような生き方は、ただ1つ。人生を生き尽くすことである。」

 「毎日が人生の縮図となるように生きている」「脅威が最後になっても良いと思えるように過ごしている」

 「満ち足りた人生かどうかは、生きた年月の長さではなく、自分の心のあり方によって決まる」

 「人生は芝居のごとし。どれほど長いかではなく、どれほどすばらしく演じられたかが肝心である」

 やはり、生に全うしろということであり、死んだ後をどうこう思っても仕方ないですね。全力投球、思いやり一杯の人生を!

『2000年前からローマの哲人は知っていた 死ぬときに後悔しない方法』(セネカ著、ジェイムズ・ロム編、文響社、本体価格1280円)

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齋藤孝が読む カーネギー『人を動かす』

2020-11-01 08:55:49 | 

 自己啓発書の名著、デール・カーネギーの世界的ベストセラー『人を動かす』を齋藤先生が社会人1年生(22歳)に読み解いた本。社会人での人間関係では、文字通り、「人を動かす」術を知っておけば怖いものなしです。

 答えは簡単で、「相手を知ること」に尽きます。まず、人間ってどういうことを思い行動しているのか、そして、あなたが関係する相手はどういう人かを知れば問題なしです。

 「人はみな自分の欲求を満たすように動いているわけですから、相手がほしがっているものに答えてあげるのが、人を動かす極意になります。」

 ここは割り切って、自分を殺し、相手に沿うように発言、行動することによって、信頼を勝ち得、こちらの意向を汲んでもらうように持ち込む。まぁ、なんて日本式というか、時代劇の越後屋の如くというか、洋の東西を問わずに成すべきことは一緒です。

 世の中、自己にメリットを得ようとする風潮が強まる中、22歳と言わずに多くの人に読んでもらいたいですね。

「齋藤孝が読む カーネギー『人を動かす』」(斉藤孝著、創元社、本体価格1,400円)

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水を縫う

2020-10-29 14:07:39 | 

 大阪の京阪沿線に住む松岡一家。高校1年生の松岡清澄は子どもの頃から手芸や刺繍が趣味で、学校で浮いた存在。難波で学習塾の事務職の姉の水青(みお)は小学生の頃にスカート切りに遭ったことから、女性っぽいことやかわいいことを嫌う傾向にありました。水青が結婚することが決まり、派手な結婚式、披露宴を避け、ドレスも地味なものにしたいという彼女の発言に反応した清澄は「ドレスつくったるわ!」と明言。おばあちゃんとぼちぼちと縫い始めるも納得がいきません。清澄が1歳の時に両親は離婚。縫製工場の営業職の父親である全(ぜん)は学生時代に服飾デザイナーを目指していたが、父親失格でだらしない性格のため、その夢は潰えていました。清澄がドレスの件で父に相談したら、全は娘のドレスを一気に作り上げる快挙を成し遂げます。

 大阪ならどこにでもあるファミリー、松岡家は誰もが普通から少しずれています。しかし、そのずれ加減が一家を豊かにしている後押しをする言葉がストーリーに表現されています。清澄の手芸好きにも、

 「自分の好きなことを好きでないふりをするのは、好きでないことを好きなふりをするより、もっともっとさびしい」

とあり、母さつ子の清澄に対しての家庭教育についてさつ子を諫める祖母文枝は

 「あの子(清澄)には失敗する権利がある」

と一刀両断です。普通からの乖離を是正してくれる愛情が流れています。

『水を縫う』(寺地はるな著、集英社、本体価格1,600円)

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同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか

2020-10-26 17:10:53 | 

 こうした方が身のためだよ~他の人と違うことをしない方がいいよという同調圧力が強いのが日本だとは知っていましたが、そんな国の日本はコロナ禍でその姿を暴露しました。法と罰則で外出禁止を促したのではなく、あくまで要請として不急不要の外出を禁じました。それが出来るのは日本の国柄です。

 同調圧力を支えているのは「世間」。「世間体が悪いからやめとき!」の世間です。法治国家の日本では、法や社会と同調圧力と世間の二重構造になっています。なぜ、そうなったのか?明治期に法律や社会の概念が入ってきて、近代ヨーロッパの個人の概念も同時に導入できれば良かったものの、世間の存在が岩盤でした。ヨーロッパでは一神教のキリスト教と個人の関係があるが、日本では多神教なので、個人が確立しなかったわけです。個人の問題でも、他国では社会が悪いと糾弾もでき、また、社会の仕組みとして個人を救済しますが、日本ではまず世間を見て、他人に迷惑を掛けれないという教えを遵守し、個人が悪いという結論に落ち着く。そのために自殺が多いと断じています。

 世界は多様性を追求していくSDGsを目指していますが、世間をぶっ壊せるか?その答えは本書の中に。まさに日本論の1冊です。

『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』(鴻上尚史・佐藤直樹著。講談社現代新書、本体価格840円)

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モモ

2020-10-24 13:50:54 | 

 8月の放映でしたが、NHKテレビ100分de名著でも好評を博していた『モモ』。以前に1度読みましたが、内容が薄っすらぼんやりなので再読しました。

 現代社会の風刺満載の物語は恐ろしくも感じました。時間貯蓄銀行の灰色の男たちはまさに私たちの横にいます。資本主義のコスト競争には、「時間は貴重だーむだにするな!」「時は金なりー節約せよ!」のスローガンは不可欠であり、私たちにもインスロールされています。しかし、時間を節約すれば、仕事が増え、豊かになり、良い住宅に住み、素敵な服装を着ることができるが、「不機嫌な、くたびれた、怒りっぽい顔をして、とげとげしい目つき」の人相になり、心も荒んできます。時間節約のために、何をするにもすでに作られたシステムの通りにしていくことを推奨させられ、考えない人間となります。

 それとは対照的に、モモたちは、道路掃除夫・ベッポの言葉に象徴される生き方です。「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな?つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸、つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」「するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。」時間がたっぷりあって、モノが少なければ、人間は頭を使い、空想を巡らせる動物。そして、時間さえあれば、人は集い楽しむことができます。

 「時間とは生きること、そのものです。そして人のいのちは心を住みかとしているのです。人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそっていくのです。」

 こういう視点で生きていくことが大切です。

『モモ』(ミヒャエル・エンデ著、大島かおり訳、岩波少年文庫、本体価格800円)

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孔丘

2020-10-19 14:51:59 | 

 論語を学ぶ上で孔子の略歴は目に触れることがあっても、その詳細は知りませんでした。今回、中国歴史小説として孔子の人生を読みました。

 まず、驚いたのは孔子の身長。九尺六寸=216cmという長身で、「長人」と呼ばれていました。ジャイアント馬場が209cm、アメリカプロバスケットボールNBA選手全体の平均身長は198cm、日本プロバスケット B1リーグ全体の平均身長190㎝ですから、いまから2500年前ではよほどの偉丈夫と思われていたことでしょう。

 その長身の男・孔子は魯の国に武人として仕えていた父とは違い、文の世界に生きようと志を立て、まずは、祭りの儀式とこれに伴う身分,義務,行為などの王朝による規定である「礼」を学びました。時代とともに簡略化される、あるいは風化していく「礼」をしっかりと研究し、それを伝え、保存することを第一歩としました。

 魯の役人になりますが、すぐに辞めて、私塾を立ち上げ、生涯続く教育の場に身を置きました。その後、「詩」と「書」を学び、孔子は「学ぶことは生きることであり、生きることは学ぶことであるから、死ぬまで学びつづける稀有なひとりとなろう。しかも、人を教えることを天職である」と評されています。

 陽虎という策略家に翻弄されることで、孔子の魯での政治的立場は葬り去られ、魯を去り、弟子たちを引き連れて、隣国の斉へ離れました。陽虎が魯を追放され、孔子は大司寇(最高裁長官)、宰相の代行まで昇りつめ、理想の国家を打ち立てようとするが、守旧勢力に阻まれて、魯を再度離れ、12年間の流浪の旅で諸国を巡り歩きました。本当に貧しい日の連続であり、「真の思想は真の不自由から生ずるもの」が論語からも伺えます。「人は苦しければ苦しいほど根源的な力を発揮する。もともと人が生きてゆくことは苦しいものだ、という透徹した認識から孔丘は独自の思想をたちあげている。」

 孔子の生き様の原点は、「おもいやりの形」である「礼」であったのでしょう。「人と人が争えば、かならず人が消える。それにともない、失われていくもののなんと多いことか。失われていくものは有形であるとはかぎらない。無形のものもある。その後になされる再建は、失ったものをほとんどとりかえせない。」から、自己を律し、学びつづけ、それを教えてきた人生でした。この小説を読んで、論語の学びに奥深さが生まれると思います。

『孔丘』(宮城谷昌光著、文藝春秋、本体価格2,000円)

 

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甘夏とオリオン(再読)

2020-10-12 16:53:25 | 

 私はあんまり再読はしませんが、やっぱり上方落語が題材ですので手を伸ばしました。一回目の感想は以下の通りです。

https://blog.goo.ne.jp/idomori28/s/%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3

 主人公の甘夏の師匠・桂夏之助は男前で、落語も上手い、弟子の育て方も秀でている、また、落語に対する見識だけでなく、人を見る目、考え方も素晴らしい。人格者でしょう。

 「落語というのはな、言うてみれば、人を笑う噺や。それは間違いない。けどな、それは、その人の存在を『否定』するということやない。逆や。むしろその存在を肯定する。『肯定』して笑う。それが落語や。」

 落語にはアホが登場します。どんなアホしても、アホはアホなりに生かしてくれる、あるいはアホの役を見つけてくる社会が落語です。そういう意味では現代とは全く違う。自分を肯定するために、他者をさげすさみ、アホの立ち位置がない。

 だからこそ、この小説の中ではLGBT、ストリッパー、水俣病、社会の底辺を支える人々が躍動しているように思えます。男社会に飛び込んだ女落語家の甘夏もその一人かもしれません。

 「いつか、おまえの演る落語が、誰かの人生を変えるかもしれん。そう思って、頑張りや。」

 失踪せずに落語界で生きていれば、大名跡を襲名していたのになぁ、惜しい存在の桂夏之助です。

 私としては、増山先生を迎えて、井戸書店寄席をしたい!

『甘夏とオリオン』(増山実著、KADOKAWA、本体価格1,600円)

 

 

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生きてるうちに、さよならを

2020-10-05 17:22:34 | 

  精密機械の町工場を一部上場企業にまで成長させたモトミヤ精工創業者・本宮直樹は、自身の一代記を書き始めました。想定読者は従業員から、結局は自分に対する人生の謎解きの本、それが本書です。

 「生きているうちに、さよならを」という演題の会社講演会を聴いた直樹は自分の生前葬をやろうと願い、愛人の小倉さゆりに打ち明け、会社の志村秘書室長に企画準備を命じました。常に忠臣である志村からは猛反対を受け、考え直そうという思いに至った直樹は妻・涼子の提案で、新婚旅行の旅先であったグアムへの年末家族旅行にしぶしぶ出掛けました。そこで、涼子は「余命1年以内」という告白を家族にしました。地味な女で子どもたちの面倒もしっかりと見てくれる涼子の言葉に、愛情を妻ではなく、愛人に向けてきた直樹は自らの愚かさを思い知ります。

 新年になり、まだ心の揺れ動く直樹も涼子への看病を前面にすると、今度は会社での社長人事クーデターが勃発しそうという情報を志村から受け、「生きているうちに、さよならを」の講演者・大塚綾子先生にもろもろの悩みを打ち明けます。「心からのありがとう」を涼子に言うことを提案を受け、また、結婚時に、涼子からの「結婚してくれて、ありがとう」という言葉の記憶を先生に告げると、結婚以前の涼子の過去も知る方が良いとアドバイスを受けました。

 さぁ、ここからがとてもハードな内容になってきます。情念は恐ろしく、怨念は激しく、この小説の終章は是非とも最後に読んでもらいたい。人を愛するのなら、過去までも周知して、すべてを信じていくこと、その大切さを思い知りました。

『生きてるうちに、さよならを』(吉村 達也著、集英社文庫、本体価格570円)

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小説 昭和元禄落語心中

2020-10-01 14:37:48 | 

 コミック、アニメ、TVドラマで知っているよ!という方も多いでしょうが、わたくし、小説で初めて内容を知りました。落語を素人でする者として読んでしまいました。

 昭和初期に、七代目有楽亭八雲に入門した、同い年の初太郎と菊比古。初太郎は八代目八雲になると宣言し、天才肌をにじませます。菊比古は初太郎の落語に惚れます。菊比古は芸者・みよ吉と良い仲になるが、真打昇進のために彼女を捨ててしまいます。「いっそひと思いに殺してね」と言うみよ吉。初太郎も同時に真打になり、助六を襲名。襲名に反対の立場をとる、落語協会会長の十八番のネタを直々に稽古もつけてもらわずに助六は高座にかけ、七代目八雲の逆鱗に触れ、破門。

 七代目八雲から八代目八雲の継承を委ねられた菊比古は固辞し、有楽亭を出奔した助六はみよ吉と生活をし、身籠ったみよ吉の故郷四国へ行く。七年を経て、菊比古は助六を何とか落語界へ引き戻そうと、四国まで訪れたが、ある事件がした起きて、助六とみよ吉はあの世に。孤児の小夏を養女として引き取った菊比古は八代目八雲となったが、小夏は自分の両親の死は菊比古に原因があると思うも確信がない。八代目八雲に弟子入りした与太郎とともに、真相究明をすることに。

 物語が落語のネタに合わせるように進み、重い内容を軽くしてくれる。しかし、落語の世界を知れば知るほど、難しいと感じました。落語家は「自分の居場所を自分で作る」という思いで、精進し、その芸名から芸風を醸し出す地まで修行をする。その道のりは果てしなく、いまの自分に向き合いつつ、高座でネタをかけるその姿は実に奥深い。どんな職業でもプロはそこまでの境地に達しなければならないのかなぁと読了しました。

『小説 昭和元禄落語心中』(東芙美子著、雲田はるこ原作、講談社文庫、本体価格640円)

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反省記

2020-09-29 16:21:49 | 

 著者の西和彦さんは、我々、出版に携わる者なら知らない人はいないでしょうし、板宿の住民としては極めて馴染みが深い方です。アスキーのファウンダーであり、須磨学園さんの学園長です。半生記ならぬ反省記。西さんの人生とはいえ、日本のパソコンの勃興期からの歴史を物語り、後半はアスキーの転落記、そして、未来の教育への舞台に今は立つ、その姿はすさまじい。

 機械を見れば分解する、IQ200の子どもはモノづくりに興味を持ち、コンピューターに魅せられて、大学生の頃にアスキーを立ち上げ、コンピューターの情報関連の泉となり、ソフト開発に足を踏み込み、マイクロソフトのビル・ゲイツと成功の果実を得る、その道のりはまさに凄い!しかし、袂を分かったビル・ゲイツと自らを比べてしまったがために、事業の拡大路線を突き進み、経営を活かすことが出来ずに、すべてを失いながらも、自らが育った実家の教育事業に帰結し、日本の、世界のデジタルの世界に強い人材育成に軸足を置いておられます。

 本書から学んだ、人生の扉を開けるキーは、

 「興味のある場所に行け!」

ということ。同好の士が集えば、自分にとって重要な情報は交換され、会いたいと思える人とも出会える。悩むより「行け!」ととてもシンプルであり、分かりやすい。ちょっとした決断を恐れずに、一歩前進することは大切です。

『反省記 ビル・ゲイツとともに成功をつかんだ僕が、ビジネスの“地獄”で学んだこと』(西和彦著、ダイヤモンド社、本体価格1,600円)

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