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1978年創業の、イタリアのカシミヤセーターメーカーのブルネロ・クチネリは人間の尊厳を追求する、「人間のための資本主義」の会社です。1982年、ウインブリアの小さな村、ソロメオに移転、1985年には廃墟になっていた古城を買い取って、本社としています。
本書は創業者のブルネロ・クチネリの回想録であり、また、「人間のための資本主義」を構築するための哲学的思索の本です。それについてこのように書かれています。
「会社は健全な利益を上げる一方で、経営は哲学を掲げました。過剰な利益を求めず、正当な成長、正当な利益、すべてにおいて穏やかであること目指しながら、製品の輸出先は広大で美しい南米まで拡大しました。」
また、ブルネロ・クチネリの奥さんの故郷であるソロメオに移った思いは、
「私たちの会社は、その土地に住む人々に敬意を払いながら、土地の持つ潜在力を守り、引き出し、育てていくことを大切にしています。その思想が均衡の取れた希望の持てる成果を上げ、その利益を人々に還元するという倫理的な目的を具体的な形にしてくれます。」
と表現し、本社である古城については、
「過去は単なる郷愁や附属物ではなく、明るい未来のための骨格となり、人々の意識を導く案内品なのだ。私たちは過去から学ばなければならない。肉体は滅んでも精神は生き続けるのだから。」
のように、過去をどうとらえるかで古の城の扱いも理解できます。
欧米の資本主義といえば、略奪的であり、利益至上主義を思い浮かべますが、このように洋の東西を問わず、哲学を学び、それをベースに経営する人間的な会社もあることを知る必要もあり、そのようなメーカーの商品を購入することを心掛けなければなりません。
『人間主義的経営』(ブルネロ・クチネリ著、クロスメディアパブリッシング、本体価格1,580円、税込1,738円)