人は生きていく上で、教養が必要なのはわかっていますが、教養とは何であり、それをどのように吸収すればよいかは誰も教えてくれません。本屋ですから、教養になる本はたくさんありますが、「きほんのき」を知るために、本書を読みました。大学の教養課程に入る前に、この本を読んでいれば自分の人生が変わっていたとは思いますが、40年以上前までさかのぼることは出来ません。
人間は生物として子孫へ命を継承する存在ですが、それとともに「知的遺産の継承の担い手」でもあり、そのためにも教養は学ばなければなりません。また、生きる上で、「自分をより大きな価値の尺度に照らして」、自分の位置はどこになるのかを相対的に観察するためにも、学びが必要です。そして、至らなければ、素直に自己変革をできるスタンスを保持することも大事です。
読書が教養人への道には欠かせませんが、「本を読む人と読まない人は全く異なった種類の人間」と捉えており、読書によって、時空を超えてつながれることは他人と交換不可能な人になれます。
最終的には、「社会の担い手」であり、「道徳の主体」となるためにも教養を遠ざけることは避けなければなりません。
映画好きな著者は映画を題材にして、教養を説明するのは理解しやすかったですね。
『教養の書』(戸田山和久著、筑摩書房、本体価格1,800円、税込価格1,980円)