16年前の被災経験を、東北各県の被災書店へメッセージとしたいという原稿依頼を新文化通信社丸島社長から受けました。
3月23日付新文化の一面に、「阪神大震災の“体験〟を活かして!」として、「神戸の地から被災書店へメッセージ」が記されています。トップに私の文章が掲載されています。
『変わりゆく「支援本の棚』
と題されております。文面は以下の通りです。
予想だにしないとてつもない自然災害が到来しました。阪神淡路よりも規模も被災 範囲も広く、本にとって難敵の水(津波)のパワーに驚きました。大震災に遭遇された書店さんの無事を祈るばかりです。
テレビの映像が16年前の記憶を蘇らせ、見ているだけで滂沱の涙です。当時の私も目の前に広がる現実としての、甚大な惨状と火災の嵐に茫然としたものです。店は辛うじて無事でしたが、通路には本がテンコ盛り状態で、配管がずれて、書籍は水浸し。停電が続き、シャッターを開けて、昼間だけ復興作業に携わり、幸いにも1週間で再開にこぎ着けました。
あの時はデジタルがほぼない時代、テレビ、ラジオ、新聞とともに、雑誌の存在は大きかった。あらゆる情報の総括の意味も込め、震災関連の週刊誌や月刊誌も飛ぶように売れました。
再開店からすぐの時期、交通インフラが寸断している中、六甲の山を北から越えて、昭文社の牧野さんが来られました。背のリックには神戸市の地図が満載していました。「これを積んでください」こんな感動の営業はなかったですね。原形を留ず、 焦土と化した街並みに地図が不可欠でした。すぐ完売し、追加のフォローも迅速対応でした。
次に注目したのは原付バイクの問題集でした。交通手段が皆無の中、小回りが効き、低コストな乗り物に被災された方は集中しました。通常なら平積商材ではあり
ませんが、衰えぬニーズがありました。
ここで冷静に考えました。当店に来店されているお客様は全て被災者という属性を持った方々。避難所で被災者の欲しいものが時系列で変化したように書店でも変わるはず。お客様が復興するまでにどういった情報を欲するかを想定して注文しよう。そして、「被災されたお客さまの棚」を作り、そこには法律関連本、住宅再建への書籍、支援していただいた方々へのお礼の手紙の書き方などの実用書等々、様々な書籍を並べました。そして、総仕上げは震災写真集や震災ドキュメントビデオの販売でした。この2点は支援へのお礼にされた方が多く、「私たちが受けた震災の記憶を忘れないで欲しい」という思いが一杯詰まっていたに違いありません。
16年の時を経て、デジタルの浸透や地域的な差もあり、当時の経験が活かせるかは定かではありませんが、震災から復興した書店員の実体験を頭の片隅に置いて仕事に従事していただけたら、少しは余裕を持って接客できると確信します。
店の復興以前に自らも被災者ですから、生活復興に歩を進めてください。お身体には十二分に気を付けて、慌てず着実に再開店に結び付けてください。神戸の地からエールを送ります!