あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

浅田家!

2020-11-30 14:56:18 | 

 三重県津市の浅田家。お母さんは看護師、お父さんは主夫、息子2人。年賀状のために息子たちの写真を毎年恒例に撮るお父さんの影響もあって、次男の政志は写真家を目指すために、高校卒業後、大阪の写真の専門学校に入学。下宿生活で呆けてしまい、学校も行かず、このままでは退学になるやもしれずの政志の卒業制作のテーマは「一生にあと一枚しかシャッターを切れないとしたら」。これに対して、敢然と立ち向かう政志は原点の家族写真、それもコスプレで。お父さんが消防士になりたかったと言われれば、消防署で制服を借り、家族で撮影するというように、これをシリーズで撮りました。そして、東京で個展を開催し、出版社社長の目に留まり、写真集『浅田家』(赤々舎、本体価格2600円)が刊行。販売は芳しくあるはずがなく、書店の店頭からも姿を消そうとしているときに、写真界の芥川賞である、第34回 木村伊兵衛写真賞(2008年度)受賞の報が出版社に届き、一躍メジャーに。その後も一般応募の家族写真を撮り続け…。

 家族はさまざまな背景や課題を持って生きています。ファインダーから覗くと簡単にシャッターを切れる場合もあるし、押しづらいこともあります。それでも、「一生にあと一枚しかシャッターを切れないとしたら」という思いで写真を取れば、写真も変わってきます。

「写真は、思い出を残すためだけでなく、時には、いまを生きるための力になる」
「たった一枚の写真が、その人の人生を変えてしまうことだってあるかもしれない」
「何の写真を撮りたいのか?ではなくて、写真で誰を喜ばせたいのか?」

 この本では家族愛、仕事への執念、そして、人としての生き方がじわーっと感じられます。笑って笑って、そして、泣いて泣いて読了しました。

『浅田家!』(中野量太著、徳間文庫、本体価格630円)

 

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菜根譚コンプリート

2020-11-30 14:05:10 | 

 日本での戦国から徳川幕府の初期の頃に生きた洪自誠が書いた中国古典である「菜根譚」は中国ではほとんど読まれず、日本では多くの人に親しまれています。例えば、今年3月にお亡くなりになった野村克也さんは、著書『野村克也の「菜根譚」』(宝島社)では「菜根譚」の中から108条を厳選して解説しています。菜根譚のベースは論語、老子、仏教が織り交ぜられており、日本人の海外先進文化を玉石混合する能力にフィットしているのかもしれません。

 全部で357条の章句がありますが、その中には現在の自分の課題やさらなる目標達成のために必要になるものが必ずあります。私にとっては、後集36条の「自然は人生を教えてくれる」や同82条の「無の境地に至るコツ」が特に学ぶ点が多い。老子や禅の要素が強いものです。人生の指南書である菜根譚は幅広い年代で読まれうる書です。ぜひ、手元で気に入った章句を見つけ、実践して下さい。

『菜根譚コンプリート 全文完全対照版』(洪自誠著、野中根太郎訳、誠文堂新光社、本体価格2,500円)

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死ぬときに後悔しない方法

2020-11-18 17:15:32 | 

   子どもの頃から、「死んだらどうなるんやろぉー⁉」「僕の意識はどっかに行くんかなぁ?」と思い悩む日々がありましたが、生きることに忙しくなるとすっかり忘れていました。しかし、昨年、父を亡くし、看取った経験から、またもや、「おやじはどこかへ行ったのか?」と考えています。

 しかし、ローマの哲人はそんなもやもやを吹き飛ばしてくれます。

 「死にたくないという者は、生きることをも拒んでいるのだ」執着しているだけで生きていないということでしょうか。

 「『長生きをした』と思えるような生き方は、ただ1つ。人生を生き尽くすことである。」

 「毎日が人生の縮図となるように生きている」「今日が最後になっても良いと思えるように過ごしている」

 「満ち足りた人生かどうかは、生きた年月の長さではなく、自分の心のあり方によって決まる」

 「人生は芝居のごとし。どれほど長いかではなく、どれほどすばらしく演じられたかが肝心である」

 やはり、生に全うしろということであり、死んだ後をどうこう思っても仕方ないですね。全力投球、思いやり一杯の人生を!

『2000年前からローマの哲人は知っていた 死ぬときに後悔しない方法』(セネカ著、ジェイムズ・ロム編、文響社、本体価格1280円)

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齋藤孝が読む カーネギー『人を動かす』

2020-11-01 08:55:49 | 

 自己啓発書の名著、デール・カーネギーの世界的ベストセラー『人を動かす』を齋藤先生が社会人1年生(22歳)に読み解いた本。社会人での人間関係では、文字通り、「人を動かす」術を知っておけば怖いものなしです。

 答えは簡単で、「相手を知ること」に尽きます。まず、人間ってどういうことを思い行動しているのか、そして、あなたが関係する相手はどういう人かを知れば問題なしです。

 「人はみな自分の欲求を満たすように動いているわけですから、相手がほしがっているものに答えてあげるのが、人を動かす極意になります。」

 ここは割り切って、自分を殺し、相手に沿うように発言、行動することによって、信頼を勝ち得、こちらの意向を汲んでもらうように持ち込む。まぁ、なんて日本式というか、時代劇の越後屋の如くというか、洋の東西を問わずに成すべきことは一緒です。

 世の中、自己にメリットを得ようとする風潮が強まる中、22歳と言わずに多くの人に読んでもらいたいですね。

「齋藤孝が読む カーネギー『人を動かす』」(斉藤孝著、創元社、本体価格1,400円)

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