あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカの言葉

2015-10-24 15:37:42 | 

  2012年6月20日から3日間、ブラジルのリオデジャネイロで、国連の「持続可能な開発会議」が開催されました。環境問題と世界の貧困問題解決のために、各国首脳が集いました。その初日に、各国首脳のスピーチが行われ、その最後に壇上に上がったのがホセ・ムヒカ前ウルグアイ大統領でした。彼の8分間のスピーチ終了後は、聴衆の拍手喝采が巻き起こり、「もっとも衝撃的なスピーチ」として称賛されました。

 その論点は次の通りです。

 1.現在のグローバルな経済では、より多く製造販売する。そのために製品の寿命も短く、使い捨てやハイパー消費が好まれる。

 2.その反面、地球環境問題はより深刻化し、富の偏在、貧困層の増大が広がっている。

 3.このグローバル経済に誰もコントロールせず、人間の幸福は逓減するばかりである。

 各国首脳は自国の政策の素晴らしさを発表するばかりでしたが、ホセ・ムヒカ氏の発言は辛辣でストレートで、その本質を突いたスピーチでした。

 彼は大統領官邸に住まず、郊外の住まいは 《倒れそうな農場》と呼ばれる、小さな平屋で、部屋は3つだけ。水道はなく、井戸水を利用し、家の外では野菜を作る。給料の90%を慈善事業と所属する政党に寄付。愛車は1987年生のフォルクス・ワーゲン・ビートル。家族は上院議員の妻と犬たち。清貧の人であり、だからこそ、貧困層に寄り添うことが出来、また、国民も彼を支持したわけです。

 このような生活するのは彼の13年の獄中生活が大きく影響を及ぼしています。「私は、何もない中で生き残りました。それで、人生において、限度を知り、どんな小さなことにもありがたみを持つようになったのです。」

 さて、彼の名言の最高峰は

 「貧乏な人とは、少ししか物も持っていないひとではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」

であり、その次にあげられると思うのは、

 「人間のもっとも大事なものが“生きる時間”だとしたら、この消費主義社会は、そのもっとも大事なものを奪っているのですよ。」

でしょう。消費にまみれて、家の中はモノだらけ。断捨離すれども、また消費。ここは元から正すしかありません。それには人生哲学をしっかりと持つべきです。「モノではなく、時間こそが大切だ!」

『世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカの言葉』(佐藤美由紀著、双葉社、本体価格1,000円) 

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悲しみの底で猫が教えてくれた大切なこと

2015-10-19 15:26:38 | Weblog

  犬派か猫派と言えば、犬派なのですが、今回は著者が5匹の猫を書斎で飼ってらっしゃるので、猫ストーリーに涙腺を攻撃されました。

 主人公の五郎は心休まらない人生を送る、30歳手前の男性。埼玉の小さな町のパチンコ屋に住込み勤務をしています。パチンコ店の常連客の弓子が店の一角に、捨てられたペットと里親を結ぶ『里親探しノート』を置くことからストーリーは始まります。この二人に、なんでも屋に勤務する、20歳前半の宏夢(ひろむ)、「町内一の金持ち」の不動産屋社長・門倉が絡む、猫が必ず登場する四話はとても考えさせられます。

 「どうして生まれてきたのか」「何のために生きているのか」

を求めるために、過去に問題を抱えたこの4人は自分の生を全うしようと懸命に生きています。

 「この世に生まれたことも奇跡。今日を生きていることも奇跡。」

そして、 「今を精一杯生きることで、僕らは奇跡をおこすことができるんだ。」

で締めくくられるストーリーに涙しないはずはありません。誰しもどこかで誰かのお蔭で生きている。それに感謝する思いに奇跡が起こるのでしょうね。さすがは「奇跡体験!アンビリバボー」の放送作家だけありますね。

『悲しみの底で猫が教えてくれた大切なこと』(瀧森 古都著、SBクリエイティブ、本体価格1,200円)

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「本」と生きる

2015-10-17 16:00:29 | 

  アナログの活字の世界は大きく変わろうとしています。電子書籍、デジタルの誕生、それもスマホが手にあることで、デジタル・ファーストの環境に置かれています。テレビに始まり、デジタルに至るまで、受け身の情報伝達先となった人間は、考えることが必要なくなるような人工知能の社会へ送り込まれるのかと思うと背筋が寒くなります。いつも言ううように、資源のない国に暮らす日本人は人間そのものが資源ですから、アナログ・ファーストで、デジタルは2次義でなければなりません。

 「学校図書館おばさん」と揶揄され、票にならない学校図書館の整備に力を注ぐ国会議員人生を全うした、著者・肥田美代子さんは、

 「読書は日本の資源である」

と述べられています。成人の半数が月に1冊も読んでいないという活字離れの原因が①社会のデジタル化、②中高生の本の相談相手となる大人の存在がない、③読みたいと思う本がないの3つであれば、その対応策は自ずと出てきます。それは、

大人の意識的なかかわりが必須であり、「読み語り」「本棚のある家庭」「本を読む親の姿」が求められます。私たち書店人も、自店の存続だけでなく、日本の将来を鑑み、読書習慣を子どもの時から植え付ける努力をしなければなりません。当店でも「感動本からスタートしよう」というコーナーを今月中に開設します。

『「本」と生きる』(肥田美代子著、ポプラ新書、本体価格780円)

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先住民族の叡智

2015-10-17 15:04:26 | 

  世界を見渡せば、戦争、難民、飢餓、貧富の差、環境問題、一極集中など多くの問題が山積しています。文明が興り、人間の生活も進歩しているようで、その精神は破綻への道を突き進んでいるようにしか見えません。そんな時に振り返るべきは「先住民族の思想」であり、これは「世界精神遺産」として全人類が尊ぶべきものであり、幼少の頃から学ぶべきです。

  著者で東京大学名誉教授の月尾嘉男氏は、BS-TBSの『地球千年紀行~先住民族の叡智に学ぶ』という番組のために、世界の先住民族の生活や文化を訪ね歩きました。先住民族の叡智は地球の抱えた問題を解決するヒントがあると断じています。

  現代社会で浸透してきたことの一つ、 「Share・シェア」 。先住民族社会では、

 「土地はそれを創造した神様から借用しているのであって、だれにも帰属しない」という意識が強く、私有はありえないこと。すなわち格差は生まれず、何か困ったことが起きた場合も共生のしくみが活きていました。「必要な物があれば、遠慮なくいってほしい。自分の持物であれば、なんでも提供する」という精神も、「あらゆるモノは神様から付与され、自分だけのものではないから、だれにでも平等に配分するのが当然。」と考えます。相互扶助、共助以外ありません。

  環境問題での解決策として叫ばれている「バックキャスト」 (未来のあるべき姿から現在何するべきかを考える)の思想も、先住民族には当然のこと。有名なネイティブアメリカンの言葉、

 「7世代先の子孫のことを考えて物事を決定する」

 「現代の環境は未来の子孫からの預かりもの」

は多くのことを教えてくれます。現代の繁栄、我々の生活は未来の子孫の負担になっていないか、それも200年先を想像する時間軸を現代人が持っているかという問いかけです。私たちは進歩しているんだという思い込みは脆くも崩れ去ったとしか思えません。先住民族の叡智を謙虚に学ばなければなりません。

『先住民族の叡智』(月尾嘉男著、遊行社、本体価格1,500円)

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カラフル

2015-10-12 15:31:04 | 

  森絵都さんの本を初めて読みました。前世での大きな過ちを魂として、修業を積み、前世の記憶を取り戻し、過ちの大きさを再確認する再挑戦をする抽選に当選してしまったぼくが、10分前に睡眠薬で自殺した小林真くんという名の他人の身体に入り込むところから、物語はスタートします。

  小林家は両親と兄と真くんの4人家族。家族一人一人がそれぞれ問題を抱えながらも、どうすれば真くんが幸せな人生を歩んでいくかを考え、自分の身の処し方を変えていきます。ぼくが自分の前世の記憶が蘇るそのとき、同級生の唱子に言われた言葉、

 「小林くんは(中略)みんなとおなじ、ふつうの子だった。でもあたしとか、みんなが勝手にあっちの世界に閉じ込めちゃって・・・」

  誰しも普通に生きているつもりでも、他人はレッテルを貼って見てしまっています。普通に生きることの苦しい世の中で、自分の素の姿で生きていく!自分の生きる意味を問いながら、前を進んでいく。そんな姿を修業を積んで理解する。生きるのは難しいが、自分の関係する人たちとのコミュニケーションを深めれば、生きるのが楽しくなるよ!というメッセージをもらえました。

 家族でこの本をまわし読みして、読書会をしたら良い作品だなぁと思いました。

『カラフル』(森絵都著、文春文庫、本体価格510円)

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幸田露伴『努力論』 小さな努力で「人生の幸福」を増やす法

2015-10-08 16:02:30 | Weblog

  ノーベル賞受賞者のコメントには必ずと言っていいほど、「不断の努力」「継続的な研究」という言葉があります。努力なしでは世紀の大発見もないのはわかりますが、なんとか楽して効果だけを求めたいのが人情。しかし、それを一刀両断するのが幸田露伴。名著『努力論』を斎藤孝先生の訳でしっかりと学びました。

  露伴先生、「努力には二種類ある。」と冒頭から述べられています。「直接の努力」と「間接の努力」であり、成果の有無を判断しない、スポーツなどでのルーチンの練習である「間接の努力」が出来る人になることこそが成功への第一歩です。これは鍵山秀三郎先生が言われる「凡事徹底」に結びつきますね。

  そして、人生の幸福へのロードマップには「三福」の実践を強調されています。それは

 「惜福」 福を取り尽くさない、腹八分目にする、足るを知る精神

 「分福」 福を分かつ、福のお裾分け、福のシェア

 「植福」 他利を考え行動する、しっかり先を見て福を仕込む

であり、この三福の考えを習慣化できれば、豊かな人生を歩むはずです。

 そして、努力をするには「集中力」の必要性、と共に「集中力」の向上策のためにシンプルな思考や生活を説き、努力できる自分へ変わるには「昨日までの自分を思い切って捨てろ!」と豪語する。この1冊で幸福論の決着は着いたと考えてもいい!

『幸田露伴『努力論』 小さな努力で「人生の幸福」を増やす法 』(幸田露伴著、齋藤孝訳・編集、イースト・プレス、本体価格1,500円)

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日本のこころの教育

2015-10-05 17:35:49 | 

 ミッションスクールの国語科の教師であった著者は、ドイツ人校長に、

  「さようなら」の意味を問われ、困惑します。返答できない彼に、校長先生は「こんにちは」にも言及しますが、無しのつぶて。「国語の教師として、日本人の子供たちに、いったい何を教えるつもりなんだ!」と叱り飛ばされる顛末。この1か月後、校長室に呼ばれて、

 「日本は明治維新後は、欧米の真似をし、日本人の心をすっかり忘れてしまったんじゃないのかなぁ。(中略)日本人って何ですか?日本人の心って何ですか?」

とヒントになる呼び水をいただき、考え抜きます。

 人間は太陽がなければ生きられない事実から、日本における太陽の存在を追求します。すると、

 「太陽さんに感謝して、みんなで仲良く太陽のいのちを生きる~これが、日本人の心棒だった。」

という答えに到達しました。日本人も、日本人の心も太陽が形作ったもの。感謝の気持ちに「お蔭様」というのも納得できます。日本という国の根源である精神、文化、伝統の価値を知れば、海外でも堂々と発言できるし、自国の良さを述べることが出来ます。そういう意味では、本書は必読書であると、井戸書店ではロングセラー商品として店頭に切らしたことがありません。10/25(日)に開催する、第4回大人の人間学塾の課題図書として選びました。

『日本のこころの教育』(境野勝悟著、致知出版社、本体価格1,200円)

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このせちがらい世の中で誰よりも自由に生きる

2015-10-02 17:16:48 | 

  勇ましいことばかりが決まり、市井の民にはホンマに世知辛いことばかり。デジタルの出現で個人情報ばかりが叫ばれ、携帯電話の使用マナーには公の存在すら考えられず、どこでもPhoneを持てば、すべては自室の如く。ぼやいてばかりでは仕方なし、生きていくことは変えられない。 書名だけで、「ホンマにそう行きたい!」と叫ぶ私は読んでしまいました、老荘思想の考え方を。

  親会社の出世街道の本筋を歩んでいた主人公のサラリーマンは、次期社長候補だった専務が後継者争いで敗れ、専務派だった彼も子会社へ飛ばされた上に窓際で働く羽目に陥りました。仕事明けに居酒屋で独り飲んでいる彼の前に突如現れた老人は、仕事上の愚痴に耳を傾け、老荘思想を説き始めました。

 人は社会で生きるためには、孔子による論語や孫子の兵法が役に立ちますが、そればかりだと生き苦しさを感じます。もう一つの考え方を持っていると、楽に生きることができます。その思想こそが老荘思想です。

  頑張らない 欲張らない ひけらかさない 押し付けない 戦わない 言わない

など、そんな謙虚ではあかんのんとちゃう?と思いますが、丸く生きていくには、

  自然と一体になり、いまここを為すがままに生きる

のですね。おぎゃと丸く生まれて、四角四面のルールを知って、社会に馴染み、角ばかりで相手にぶつかり、結局、丸に還ってくる。そんな生き方に魅かれますね。

『このせちがらい世の中で誰よりも自由に生きる 自己啓発の到達点「老子」「荘子」の考え』(湯浅邦弘著、宝島社、本体価格1200円)

 

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