2012年6月20日から3日間、ブラジルのリオデジャネイロで、国連の「持続可能な開発会議」が開催されました。環境問題と世界の貧困問題解決のために、各国首脳が集いました。その初日に、各国首脳のスピーチが行われ、その最後に壇上に上がったのがホセ・ムヒカ前ウルグアイ大統領でした。彼の8分間のスピーチ終了後は、聴衆の拍手喝采が巻き起こり、「もっとも衝撃的なスピーチ」として称賛されました。
その論点は次の通りです。
1.現在のグローバルな経済では、より多く製造販売する。そのために製品の寿命も短く、使い捨てやハイパー消費が好まれる。
2.その反面、地球環境問題はより深刻化し、富の偏在、貧困層の増大が広がっている。
3.このグローバル経済に誰もコントロールせず、人間の幸福は逓減するばかりである。
各国首脳は自国の政策の素晴らしさを発表するばかりでしたが、ホセ・ムヒカ氏の発言は辛辣でストレートで、その本質を突いたスピーチでした。
彼は大統領官邸に住まず、郊外の住まいは 《倒れそうな農場》と呼ばれる、小さな平屋で、部屋は3つだけ。水道はなく、井戸水を利用し、家の外では野菜を作る。給料の90%を慈善事業と所属する政党に寄付。愛車は1987年生のフォルクス・ワーゲン・ビートル。家族は上院議員の妻と犬たち。清貧の人であり、だからこそ、貧困層に寄り添うことが出来、また、国民も彼を支持したわけです。
このような生活するのは彼の13年の獄中生活が大きく影響を及ぼしています。「私は、何もない中で生き残りました。それで、人生において、限度を知り、どんな小さなことにもありがたみを持つようになったのです。」
さて、彼の名言の最高峰は
「貧乏な人とは、少ししか物も持っていないひとではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」
であり、その次にあげられると思うのは、
「人間のもっとも大事なものが“生きる時間”だとしたら、この消費主義社会は、そのもっとも大事なものを奪っているのですよ。」
でしょう。消費にまみれて、家の中はモノだらけ。断捨離すれども、また消費。ここは元から正すしかありません。それには人生哲学をしっかりと持つべきです。「モノではなく、時間こそが大切だ!」
『世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカの言葉』(佐藤美由紀著、双葉社、本体価格1,000円)