スピルバーグ監督により映画化された『戦火の馬』 の原作者のマイケル・モーパーゴの作品をまとめ読みしました。今日は、『カイト パレスチナの風に希望をのせて』です。
舞台はパレスチナ。イギリス人の映像記者マックスは、パレスチナと、そして、壁を隔てたイスラエル入植地の状況を取材に来ました。パレスチナで出会った少年、羊飼いのザイードは丘の上で凧を揚げていた。マックスが話しかけても、何一つ答えないザイード。彼はある事件をきっかけにしゃべることが出来ませんでした。しかし、マックスの映像機器、特にカメラに興味を持ち、ファインダーを覗き、撮影をしたいがために、マックスに近寄る。マックスはザイードが凧を揚げ、壁の向こうのイスラエル入植地の様子をファインダーに収めました。ザイードは凧を揚げて、空高く十分に揚がった時点で糸を離し、壁の向こう側へ飛ばしていきました。その凧には
「サラーム」
と書かれています。日本語で「平和」です。
夕暮れが近づき、マックスはザイードの家に宿泊させてもらいました。 翌日も、マックスはザイードと丘に登りました。ここからはクライマックスなので、本書に感動は譲ります。
今もパレスチナ・ガザ地区での戦闘は続いています。戦火で市民が亡くなり、悲鳴と失望は止みません。市民の望むものは「サラーム」以外の何物でもありません。「平和」こそ大切な宝物です。
『カイト パレスチナの風に希望をのせて』(マイケル・モーパーゴ 作/ローラ・カーリン 絵/杉田七重 訳、あかね書房、本体価格1,200円)