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板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

対談 風の彼方へ

2019-01-16 16:14:02 | 

 本書冒頭の「本書発刊の経緯」に、「出版社が易しい本ばかりを出しているから売れない、売れないと嘆くんだ。本は難しくなければダメなんだ。PHPも難しい本を出す勇気を持てよ。それを、何が何でも売るのがあなたたちの仕事だろっ。難しい本を自らの力で売ることが出来ない出版社など、要するにやる気がないし、この世には必要ないと思う」という著者の執行先生の言葉で、一気にページを繰る気になりました。

 「禅と武士道の生き方」とはどういうことか?読めば読むほどに、頭が整理されました。ルネッサンス以降、発達した科学技術をもとに、資本主義が世界を覆い、グローバリズムが横行し、人間の思考が健康第一、安全志向、お金持ち志向、出世願望など、どうしても今生の外見重視に陥っています。

 しかしながら、日本では、禅や武士道の考えが浸透し、全く逆の思考が広がっていました。つまり、「自分がもらった生命を尊び、完全燃焼を目指していつでも死ぬ覚悟で生きるだけ」であり、「死が本体で、生きているときは一瞬の輝きに過ぎない」とし、そして、「我を殺して他を活かすこと」が愛であり、慈悲となります。 「いい死を迎えるために、生きているときは修業をし、死んだ後が永遠の生命という本体に行き着く」のであれば、生=苦=修行という考えもでき、「自分に与えられた、自分に向かってくる運命に体当たりする」という執行先生の生き方は納得できます。

 現代人には、「人生とは死を考えながら生きること」ということを脳にインストールしにくいけれども、これが人生の歩みを変革してくれるでしょう。他と比較したり、過去を悔やみ、将来に悩むのではなく、生きているだけで儲けものと考えれば、少しでも周囲が良くなれば、生きる価値が高まります。

『対談 風の彼方へ 禅と武士道の生き方』(執行草舟・横田南嶺著、PHP研究所、本体価格2,000円)

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