ポプラ社の瀬野さんが来店されたときに紹介してくれたのが本書です。
「友情の大切さ、仕事人としての誠実さに涙しますよ!」という触れ込みに、「ホンマでっか?」と思いましたが、案の定、やられました!泣いちゃいました。
金融アナリストとして、顧客や市場からの投票によるランキングで上位をキープし続けている修一は、経済担当の新聞記者として一線で活躍する、高校時代の親友・有賀と、二十年の時を経て再会しました。高校時代、二人ともボクシング部に所属し、ともに競い合い、将来の夢を語り合い、そして、恋愛も経験して…。高校ボクシングも引退し、夏休みに、修一の恋人の純子、有賀を片想いするサキと4人で島へ遊びに行きました。突然の豪雨で帰路に着き、ここから辛い事件に遭遇します。そして、親友であった二人は別々の道を歩みました。
しかし、修一はその事件の真相を知りたくて、また、有賀は修一にそれを伝えたい思いが心の奥に秘めていました。再会後、日本経済の膿みについて語り合い、金融機関は日本国のことより自社の利益を追求する態度に怒りを覚え、共に行動を起こします。この辺りは半沢直樹を彷彿とさせます。そして、エンディングは涙で滲みました。真相は有賀からの「手紙」で語られます。
私が印象に残ったのは、有賀が日本経済について語る文章です。
「星も同じだよな。ここに見えている光のうち、すでに星そのものは消えてしまって、光だけが届いているものがあるだろう。(中略)本当はすでに死んでしまっている星の、昔の光。(中略)こういう夜の青い光の中にいると、何だか自分が思い出の中で生きているような気がするよ」
日本の国の財政は国債という借金で成り立っています。その借金は後世に託される様相は、すでに死んでしまっている星のようでもあります。自利ばかり追い求め続ける思考を変え、ネイティブアメリカンのように、七世代後の人がどう考えるかを起点にしていかなければ、さみしい未来しか残せないのでしょうね。この日本経済の状況と彼らの親友としての姿に相関を感じながら、ページを追いかけました。
『青い約束』(田村優之著、ポプラ社文庫、本体価格640円)