あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

日本4.0

2019-02-21 16:26:58 | 

 江戸時代を、内戦を完璧に封じ込めたので、日本 「1.0」と定義し、明治時代は欧米国家をモデルにした近代化を達成したので、日本「2.0」、第二次大戦後は、国防はアメリカにおんぶにだっこで、経済国家へ突き進んだので、日本「3.0」とした上での日本「4.0」になるための課題は、

少子化と北朝鮮の核

と断じています。特に、核への対抗手段としては、北朝鮮の基地を先制攻撃でき得る軍備を持つ必要を訴えています。専守防衛からの逸脱と考えられるかもしれませんが、国を守るには踏み切らざるを得ないでしょう。米朝会談による、北朝鮮の非核化、そして、共産党政権下での経済発展の北朝鮮のベトナム化がなされれば、その軍備の必要性はなくなるかもしれませんが・・・。昨年の8月に書かれているのに、北朝鮮のベトナム化は、次の米朝会談がベトナムなので、著者の筋書き通りかもしれません。

 また、米中の貿易戦争に関しても多くを割いて書かれています。核兵器を持っても使用することはありえないという立場から、地政学から地経学へシフトし、軍事や経済の奥にあるデジタルの主導権争いが勃発の裏側を知ることが出来ました。

 『日本4.0 国家戦略の新しいリアル』(エドワード・ルトワック著、奥山真司訳、文春新書、本体価格800円)

 

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何を捨て何を残すかで人生は決まる

2019-02-15 17:47:28 | 

 これからの時代、どう生きるかについてのキーワードは、書名の通り、まさに

何を捨て、何を残すか」

に尽きると思います。AIやITが進歩すればするほど、また、モノや情報が溢れれば溢れるほど、今までの常識を葬り去り、自分が主体的に考え、行動すること、この一点にかかっています。マスの世界から、あなたしかできない、オリジナルのマニアの世界を創っていくことが生き残りには大切です。だからこそ、「何を捨て、何を残すか」が重要なポイントになります。そのためには、

自分で考え続けること
過去の常識をリセットすること
実験をし続けること
少しの勇気を持つこと

を提唱されています。さらに、社会環境が一変し、どんな地平でも通用できるためには、スポーツ選手なら練習を積みますが、一般の人間にとっては勉強になります。徹底した学びを重ねていくことは不可欠になるでしょう。

 本書を読むか読まないかは、人生を歩む上での試金石になるでしょう。

『何を捨て何を残すかで人生は決まる 』(本田直之著、青春新書、本体価格860円)

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いつかパラソルの下で

2019-02-13 13:48:37 | 

 森絵都さんの、大人の世界を描いた小説は初の体験でした。

 父に厳格に育てられた子ども3人は、二十歳を過ぎて、父に対する反発から、長男、長女が家を飛び出し、次女だけが実家で暮らしていました。その父が突然亡くなり、四十九日の法要を迎えようとしていたら、父の勤めていた会社の女性から肉体関係があったことを告げられます。男女関係にことさら厳しかった父がなぜ不倫をしていたのか?3人の子どもたちは、無口だった父がどういう人間なのかを探るために、父の友だち、そして、生まれ故郷の佐渡島を訪れ、親戚から多くの情報を得ようとします。父のことを知れば知るほど、同じ血が自分にも流れていることに納得もし、また、否定したいことも見えてきます。

 「父の根底にあったのは、人間はかくあるべきという理想ではなく、人間かくあるべからずという絶望だったのかもしれない。」

 「愛しても愛しても愛されなかったり、受け入れても受け入れても受け要られなかったり。それが生きるということで、命ある限り、誰もそこから逃れることはできない。」

 いずれにしても、我々も含めて、親の影響は死ぬまで付いてくる、そういう覚悟で生きていかねばなりません。

『いつかパラソルの下で』(森絵都著、角川文庫、本体価格514円)

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英国人記者が見た 世界に比類なき日本文化

2019-02-07 17:10:28 | 

 日本に50年住み続けておられる、ヘンリー・S・ストークス氏から日本のことを逆に教えられました。日本は、

「和の国」「自制の文化」「美の感性の国」

と述べられています。この根幹は、多神教である神道が大きく影響しています。神道は、「八百万の神が横並びに」祀られ、「心と身のまわりを、清明に保つことが求められて」おり、一神教であるキリスト教、イスラム教などとは根本的に異なります。一神教は文字通り一つだけの神様を信じることから、文化的にも二者択一であり、そうなれば、勝ち組、負け組を構成して、ここに不和が生じます。多神教であれば、一極にまとまるのではなく、合議の上でお互いを尊重し合い、最終的に「和」を追求します。外国からは優柔不断とみなされますが、すべての命を生かそうとする文化では当然のことになります。

 そして、この日本の精神文化を世界に広め、混迷の21世紀の世界の諸問題の解決にあたって欲しいという発言はとても重い。宗教問題からの紛争、移民、また、深刻化する環境問題などへのアプローチとしては、日本の「和」「自制」「美」はどれも有効に思われます。

 本書を読んで、とても興味深かったことは、日本人だけが自国のことを「母国」と呼び、他国は「父国」と称するらしい。日本は母、女性がベースの国であるのは呼称からも頷けます。

『英国人記者が見た 世界に比類なき日本文化』(ヘンリー・S・ストークス、加瀬英明共著、祥伝社新書、本体価格800円)

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金の人生 銀の人生

2019-02-06 17:26:35 | 

 19年前に書かれた本ですが、内容が全く古びていないというか、書名ではありませんが、さらに、いぶし銀の如く輝いています。

 書かれた当時よりも、デジタルのスピードは速く、その進歩は計り知れませんが、そうであればこそ、金よりも銀を目指そうという提案です。これは、昨今の禅流行りではないですが、「いまここ」を大切にする生き方です。例えば、友とのやり取りはメールよりも手紙やハガキで行い、散歩で季節を感じ、お寺で座禅を組むよりも毎日の深呼吸と、簡単でしかも心潤う方法を実行すると良いですよね。

 本書で感銘を受けたのは、

 「長い物差しを持て!」

ということです。著者がイスラエルのベドウィンという遊牧民のおじいさんに夜に話を伺ったとき、「こんな何もないところで生活していて、寂しくはないですか」という問いに、「寂しいものか。わしは毎晩、星と語っているんだよ。」という渋いお答え。おじいさんの心の中にある「悠久の時間という物差し」を、私たちも持っていたはずですが、便利な生活に慣れ、自然との距離が増すと、短期的な視点が主流になり、イライラとしてしまう。天との対話をできるぐらい、心にも時間にも余裕のある生き方を目指したいと思います。

『金の人生 銀の人生 毎日がいきいきと楽しくなる』(松永伍一著、祥伝社黄金文庫、本体価格552円)

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書斎の鍵

2019-02-04 15:39:56 | 

 2055年、主人公の前田浩平は大手医療機器メーカーの営業課長。仕事ぶりは目立つものもなく、部下である、入社2年目の加藤が新規の契約をどんどん取ってくることに、自分自身のふがいなさを感じていました。

 そんな折、町医者の浩平のお父さんががんでなくなり、1週間休暇することになり、自宅に戻りました。母親から受け取った父の遺言状には、離れの書斎の扱いについて、一切を浩平にまかせるが、書斎の鍵は「しかるべき人」に預けていると書かれていました。読書家の父に読書を薦められても、父への反発もあり、全く書籍には手を触れ無い状態で現在に至っていました。「しかるべき人」とは誰か、そして、電子書籍が主流になった2055年に、プリントメディアである書籍をどうするべきか考え始めました。

 その休暇中に、加藤が東都大学病院との大型契約を受注しましたが、契約の場には出席できないので、浩平に急遽の出勤要請があるところから、この物語は大きく巡ります。

 「素晴らしい人生を保証してくれるのは、才能ではなく習慣だ。(中略)習慣によってつくり出すべきものは思考。心と言ってもいい。」

 「読む前は単なる紙の塊でしかありませんでした。でも、読んだ後は、無限の広がりを持つ一つの世界への入口になる。」

 「成功したから書斎を作ったのではなく、書斎が必要なほどたくさんの素晴らしい本と出会ったからこそ成功した。」

 「本との出会いが増えるほど、自分の才能や可能性に気づき、驚くはず。」

 「読書は、常識的な感覚を持つためにするものではありません。むしろ、『自分らしく生き切る勇気』をもらうためにする。」

 「読書は本のなかの偉人の志を受け継ぎ、エネルギーを受け取ることができる。」

 「自分以外の人のために本を読むほうが、読書の本来の目的である。」

 読書をこれでもしないのかというほどの名言が湧き出てきます。浩平は父の遺言状から、自分の人生を見直し、父の書斎の本を相続する、つまり読むことに踏み出します。読書をするという習慣を持つか否かは、人生を決する分水嶺かもしれません。

『書斎の鍵』(喜多川泰著、現代書林、本体価格1,400円)

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