あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

崖っぷち社員たちの逆襲

2016-04-29 15:15:06 | 

 リアル書店はずっと苦境の波の中に泳いでいます。色々な手段を講じても答えが出ない。デジタル、インターネット通販、コンビニなどに攻められるばかり。書店経営者やリーダークラスに対して、変革のヒントを本書では提示してくれています。

  まずは、数字に詳しくなれ!決算書の見方は最低理解せよ!

  次に、人の本質を学べ!当店の人間学にあたります。

  そして、ビジネスの基礎、マーケッティングを応用せよ!

  買う人も売る人も人間であればこそ、現代の人はいかに考え、行動するかをしっかりと知ることが先である。私自身も店のスタッフに口酸っぱく言っているのが、

  「目の前の人が抱く期待や予想を超えたことを行い、喜んでもらえ!」

  「モノではなく、ヒトにフォーカスせよ!」

です。モノに引っ張られることなく、お客様であるヒトに視点を移せば答えは自ずと見えてきます。ベストセラーや注目の商品も必要ですが、自店に来られるお客様が誰であるかを見定めて、モノを揃えることが重要です。

  「今の街の本屋に求められているのは、『売り方・売り先・売るもの』を抜本的に変えてゆくイノベーション」

であるのは間違いなく、これはどんな企業も同じ。一歩先、いや半歩先の変革を考え続けていくべきですね。

  本書に対して2点指摘して終えます。掲載されていた「社会人の基礎知識」は取り外しの出来るとじ込み付録にしたら、どのページを読んでいても参考に出来たかなぁと思います。もう1つは蛇足ですが、インターネット通販大手「インジス」というのは、本国にある「ミシシッピー」という名にしたら良かったのに・・・。

『崖っぷち社員たちの逆襲  お金と客を引き寄せる革命──「セレンディップ思考」』(小島俊一 著、WAVE出版、本体価格1,500円)

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日本人が最強の脳を持っている

2016-04-29 14:46:30 | 

  加齢型しかないと思っていた認知症には、スマホやパソコンへの依存が原因の「IT型認知症」が増えてきています。8つある脳番地が有機的に働いてこそ、健康な脳ですが、「ネット、スマホ、パソコンといった記憶の代替装置に依存することで、扁桃体や海馬の働きが他の脳番地と連動しないために起こる」認知症は年齢に関係ありません。老若男女の人がこの認知症への可能性を持っています。

 スマホやパソコンを捨てる勇気のある方は大丈夫ですが、仕事や生活上必要とされる現代人に対して、著者の加藤先生は

 「日本人らしい文化」や「日本人らしい生活」へ回帰せよ!

と言われています。「手間暇をかけることが脳には大切」とし、脳への「和トレーニング」を28あげています。例えば、メールやメッセージ、Lineでの情報の交換が当たり前ですが、あえて「便りを書く」などは、案件のことを直接書く以前に時節の挨拶、相手の健康を尋ね、その上で案件を書き、最後には相手への心遣いまで文章に込める。面倒だと思うと、脳は劣化し、認知症への道を辿ることになります。

  日本らしさに立ち返るには、時間の観念を明確に変える必要があります。また、便利よりも不便を愛する気持ちも兼ね備えないといけません。やはり、相手への「仁」、思いやりをいかに大切にするかに関わってきます。

『日本人が最強の脳を持っている』(加藤俊徳著、幻冬舎、本体価格1,100円)

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まく子

2016-04-19 17:41:47 | 

  温泉旅館の息子・慧は小学校5年生。学校で「せいきょういく」を受け、大人への階段を登ろうとしている。しかし、女子生徒の含めて、身体は徐々に大人になろうとしているが、慧は大人になりたくないと思っている。

  同じクラスに転校生がやってきた。慧の旅館に住込みで働く母さんと一緒にやってきた「コズエ」は「まく」のが好きな女の子だった。街にある常盤城の石垣からは石粒を撒き、旅館の庭には水撒きをした。そして、石垣で撒きながら、慧に話す言葉は大人になることを拒否したい慧に響いてくる。

 「慧や地球上のものは、その粒を与えあいながら生きてる。変化する粒を、それぞれ与えあいながら。」

 そして、そのことは誰しもの身体が記憶していること、つまりはそれこそが魂だと口走る。何だか哲学的だが、これこそが本当のことであり、だから成長していくのだろう。11歳の子どもたちに本質を語らせる西さんはすごいなぁと感じた。

『まく子』(西加奈子著、福音館書店、本体価格1,500円)

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笑いと治癒力

2016-04-16 15:39:45 | 

  落語を趣味にしている私としては、笑いの効能は素晴らしいんだということが前面に書かれていると期待して読みましたが、ちょっと意外でした。不治に近い難病である膠原病に対して、笑いも駆使しながら、自らの自然治癒力を信じて闘病した記録が記されています。

 本書で感じたことは、

 1.健康であろうと病気に罹ろうと、医学的な知識は持つべきである。特に、人間の身体のことは知って損はない。

 2.病気になれば、闘病という名の「生への意欲」は高めなければならない。

 3.人間の心身の再生能力は計り知れない力を持っている。

です。さらには、お笑いを愛するものとしては、 「思いっきり笑うということは、戸外に出る必要のない体内ジョギングの良法」にためにも、落語に精進します。

『笑いと治癒力』(ノーマン・カズンズ著、松田 銑訳、岩波現代文庫、本体価格980円)

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あなたは見えないところで愛されている

2016-04-13 15:35:50 | 

  我々、五体満足な人間にはハンディを背負って生きている人の事はなかなか想像できませんが、彼らの書籍を読むことによって、教えられることは多々あります。牧師で国際手話通訳者の著者・郡さんも生まれつきのろう者ですが、極めてポジティブな人です。

  徳島生まれの彼女はろう者の両親、上の兄は聴者、1歳上の兄はろう者の5人家族。そんな環境の中でも、「私は幼い頃から、ろう者であることを不幸と思ったことが本当に一度もありません。むしろ、ろうであることは私の強みであるととらえています。」という意識の高さに驚きを隠せません。そして、小学6年生時に「ろう学校」から普通の公立小学校へ転校、中学、高校も普通の学校へ通い、顧問の先生の「おまえならできる」という声に背中を押され、高校時代は柔道で県大会優勝、四国大会2位、全国大会まで出場しています。歯科技工士を目指し、筑波大学付属聴覚特別支援学校へ進学、海外で働きたいという思いを胸に、アポなしで各国大使館と交渉し、カナダへ留学。英語も十分でない状態ではありながら、ボディランゲージでコミュニケーションをとる「ケセラセラ」精神。その後、アメリカの大学で神学とろう教育を学び、現在は広島県と兵庫県の教会で牧師として活躍されています。

  聖書の言葉を引きながら、本書には彼女の生き様から得た言葉が散りばめられています。

  「人生は『踊る阿呆』の方が面白い」

   「困難に見える山も、登る道はいくつかあるものです」

  「私は主の教えとともに、ろう者がこの素晴らしい文化に誇りを持って健やかに豊かな人生を送る手助けをしたい、これがろう者である私にしかできない使命であり、私のアイデンティティそのものです。」

  そして、書名にもなっている、「あなたは見えないところで愛されている」

  自分自身の境遇をすべて無条件に受け入れ、自分の力が一番発揮できるにはどうすればいいかを素直に考え、行動することが大切であることを教えられました。

『あなたは見えないところで愛されている』(郡 美矢著、KADOKAWA、本体価格1,000円)

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歴史に学ぶ自己再生の理論

2016-04-06 17:11:03 | 

 歴史から学ぶことは多い。人間は懲りずに同じ道を歩み、資本主義の場合は人間の欲望を駆り立てるので、また来た道に佇む。過去を振りければ、答えがある。現代日本も大きな岐路に立っている。成長戦略を着実に履行し、果実を得ようとするのか、それとも低もしくはゼロ成長で物質より精神の豊かさを求めるのか。そして、歴史から見て、どういう生き方をすればいいのか?

  本書では、石田梅岩、セネカ、陶淵明、吉田兼好、橘曙覧、ソロー、夏目漱石、良寛、一休の生き方、考え方を垣間見つつ、その答えを探っています。結論から言えば、

  生活の糧を得るために仕事はしなければならない。但し、足るを知ることを肝に銘じ、仕事をする人生を歩むのではなく、自らの時間を創り、心豊かに生きることを追求する

ことが大切です。一人の人間としての人生観を確立し、生き方の判断基準を作り、取捨選択していく。その判断のベースとして、「自然の摂理に従っているか否か」は、地球に生きる人間としては忘れてはならないこと。そこを忘れなければ、地球はあなたに呼応してくれるはずです。

『歴史に学ぶ自己再生の理論』(加来耕三著、論創社、本体価格1,800円)

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国土が日本人の謎を解く

2016-04-01 14:50:59 | 

   人はその生まれ育った国土に影響を受けます。阪神淡路大震災を経験するまでは自然災害大国に自分が住んでいるという意識は皆目ありませんでした。被災以来の21年の歴史の中で自然による大災害が日本を規定していると言っても過言ではありません。そのことを明確に説いているのが本書です。建設省入省からずっと国土のことを考え、国土に働きかけてきた大石氏の、国土から見た国家論はとてもわかり易く、特に外国と日本の対比においてこれほど納得できた説はありません。

  日本の国土はそれぞれの大陸プレートがぶつかり合う地にあり、大地震が頻発し、その度に多くの人命が失われています。また、平野は少なく、日本列島の中央部に山脈があり、急峻な川は集中豪雨により暴れ、そして、台風の通り道に当たり、風水害の被害は後を絶ちません。それに対し、欧米や中国では地盤の固い大平原に位置し、基本的には穏やかな気象に恵まれています。自然災害の数では断然少ない。これだけの比較だけでも、

日本は「天為の国」であり、西洋や中国は「人為の国」

という見解ができます。自然災害やそれに引き起こされる飢饉に対し、日本人は無力です。猫の額のような平地に寄り添いながら生き、話し合いによって争いを避け、援け合い、「共」の社会を作ってきました。

  西洋や中国では人が自然を支配し、人が思想することによって正義を掲げて、大衆を団結させ、革命へ導いていく。対抗する相手に対しては虐殺することも厭わない、大量紛争死が繰り返されてきました。こちらでは「公」を生み出し、市民が国を造ってきました。

   国土が国民を創り、その国民の経験が国を形作り、言語も独自な存在になる。そう考えると、現代日本は欧米、特にアメリカのグローバリズムに追随し、日本人の良い面が全く機能していない国柄になっています。日本人の本来の源泉である「共」による集団力を発揮することが混迷の世界の解決の糸口にもなるように思えます。

『国土が日本人の謎を解く』(大石久和著、産経新聞出版、本体価格1,300円)

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