あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

運命は、きっと変えられるよ

2016-02-27 16:37:08 | 

  落ち込んだ時に癒してくれるのは過去の人たちの言葉です。自分と同じような境遇を生き、人生を歩んだ上での吐露した言葉は時空を超えて、人々を勇気づけてくれます。著者の宇佐美さんは、「人生を必死に生きた人たちの体験からしぼり出された“命の言葉”」と名付けています。本書には94の言葉とエッセイがあなたを元気にしてくれます。

 今の私に響いた言葉は

 「苦しいから逃げるのではない。逃げるから苦しくなるのだ」 (ウィリアム・ジェームズ アメリカの哲学者)

 「大切なことは何が与えられているかではなく、与えられているものをどう使うかである」 (アドラー オーストリアの心理学者)

 「楽観主義者はドーナツを見て、悲観主義者はドーナツの穴を見る」 (オスカー・ワイルド アイルランドの詩人)

 「人生には二通りの生き方しかない。ひとつは奇跡など何も起こらないと思って生きること。もうひとつはあらゆるものが奇跡だと思って生きること」 (アインシュタイン)

の4つです。自分の置かれた状況で心に突き刺さる言葉は変化するでしょうが、今の書店人ならこの言葉が明日への糧になるはずです。言葉の力で前へ歩みましょう!

『運命は、きっと変えられるよ』(宇佐美百合子著、幻冬舎、本体価格1,300円)

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無意識の整え方

2016-02-22 15:29:06 | 

 幸福学に関しての書籍を読んだことのある、著者・前野隆司先生はロボット工学を研究されています。人工知能を考える上で、人間の意識や人の幸福を追い続け、「わたしたちの行動を本当に決めているのは、脳の無意識である」という「受動意識仮説」を打ち立てられました。これはアメリカでの実験結果でも証明されている科学的知見です。意識的に行っている行動も、意識の前に無意識が関与していることは驚きです。

  この受動意識仮説を基にすると、よい行動をするためには「無意識を整える」必要に迫られ、無意識を磨かれている4名との対談を繰り広げられています。私が興味を覚えたのは次の4点です。

  ・自己中心になると、氣が滞るので、何をやってもうまくいかない(心身統一合氣道会会長・藤平信一氏との対談)

 ・無意識へのアクセスが開くためには、「ゆっくり」が大切(株式会社森へ代表取締役・山田博氏との対談)

 ・芸術や自然に触れる機会が無意識への扉を開く(東京大学医学部附属病院医師・稲葉俊郎氏との対談)

 ・競争よりも調和を目指さないと、無意識へは届かない(東京大学医学部附属病院医師・稲葉俊郎氏との対談)

 現代の流れはこれらと反対方向ですよね。「ジコチュウ、早く、競争」はストレスを生むだけで、無意識は開かずの間になりそうです。無意識を整えるためには意識した上で、無意識が働く環境を自らが整えなければなりません。

『無意識の整え方 人生が変わる! 身体も心も運命もなぜかうまく動きだす30の習慣』(前野隆司著、ワニブックス、本体価格1,400円)

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資本主義の終焉、その先の世界

2016-02-16 15:40:34 | 

 アベノミクスによる成長戦略の恩恵は全く感じない中、「資本主義の終焉期」を迎えていると知らされると、この先どうなるものかと不安が先だちます。『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)で、グローバル経済が世界に浸透したら、経済のフロンティアが消滅することを説かれた水野先生は本書でも、

 「西欧史とは(中略)『蒐集』の歴史です。『蒐集』の対象は物質的なものと霊魂です。前者を『蒐集』するのが資本主義で、後者を『蒐集』するのがキリスト教です。」

とし、「ところが、21世紀の現在、新たな『蒐集』する『空間』が見つからない」から、圧倒的に多数の『蒐集される人』たちが『蒐集する人』に生み出されるしかない状況です。これこそ格差社会です。TPPでさえも、新たな『蒐集』する人と『蒐集される』人を発生させるだけであり、より多くの『蒐集』する人を自国に作りだせるか否かだけです。

 では、次はいかなる原理で動くのか?様々なところで機能不全になりつつある、現代の「より速く、より遠く、より合理的に」から

「よりゆっくり、より近く、より寛容に」

へ舵をきらないと人も地球も持続できません。健康年齢が伸びている今、社会人になる年齢を遅らせ、「よりゆっくり」を実現し、東京一極から地方の時代へ促すことで、「より近く」が実現し、「高額所得者は税金の支払いにより寛容になる」ことを考えています。経済も大切であるが、豊かな社会のためには文系、特に芸術に重きを置くべきであると提唱されています。

  第3部の榊原英資氏と水野和夫氏の対談で、アマゾンに関しても触れており、「地域の本屋さんも、ほとんどなくなってしまいました。すべて大型チェーンばかりになると、寂しいですね。(中略)便利さばかりを追求すると、世界がつまらなくなる。少し、不便な方がいいんだ。」と榊原さんは言われています。どこの町へ行っても同じであれば、旅の楽しみもなくなりますね。

『資本主義の終焉、その先の世界 「長い二一世紀」が資本主義を終わらせる』(榊原英資・水野和夫著、詩想社新書、本体価格920円)

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グローバル幕末史

2016-02-06 15:38:59 | 

  日本の歴史の中で人気のある幕末。多くの志士が登場し、国の行く末を案じ、命を賭していた時代。高校の授業で心躍らせ、司馬遼太郎著の『龍馬がゆく』『峠』などをむさぼり読みました。しかしながら、今までの知識は時代が変わる一面しか知り得ていなかったことを、『グローバル幕末史』は教えてくれました。私にとっては、次の3点が新事実でした。

  その一 幕府官吏にも開明的な優秀な人材がいたこと。岩瀬忠震(ただなり)や池田長発(ながおき)がいたからこそ、新しい時代を開いたのでしょう。特に、岩瀬が井伊大老により降格されなかったら、よりスピード感を持って時代が進んだでしょう。彼らの名前さえ知らなかったのは、明治以降の「薩長藩閥史観」の結果と著者の町田氏も認めています。

  その二 「攘夷」は時間と共に変化していったこと。攘夷思想が頭を持ち上げ、日本の欧米による植民地化阻止のため、それを実践した長州藩の攘夷は「即時攘夷」でありました。しかし、薩摩藩、長州藩など自ら、さらにはアヘン戦争やアロー戦争の結果で欧米の軍事力を知った途端に、富国強兵の実行が大前提になり、そのために積極的に開国へ舵を切りました。貿易で利益を得て、国を富ませ、武備充実を図った上での攘夷、「未来攘夷」への転換です。この攘夷の実践は、「日清戦争」「日露戦争」への道に繋がります。また、薩摩藩は、「幕府が独占している貿易利益に対抗するため」に攘夷を実行していると、イギリスに対して宣言していました。

  その三 明治への扉は国内だけで開けられたのではないこと。欧米の先進的な技術、特に工業や軍事に関しては、欧米への使節や留学でしか知り得なかった。しかし、幕府の監視の元では十分ではなかったため、薩長両藩は各自別々に密航で藩士をヨーロッパに送り込んでいました。イギリスで会った両藩士は、ヨーロッパ、特にイギリスで知り得た知識から、藩を存続させての連邦国家では欧米には対抗し得ず、天皇による立憲君主の中央集権国家を樹立する姿を議論し合っていた事実に驚きました。ロンドン薩長同盟と呼ばれています。両藩士の帰国後に、その実践局面を迎えています。

  学校での学びでは歴史の流れをすらっと知る程度ですが、詳細に知るとより日本国をここまで導いてきた日本人に誇りを感じます。大きな転換点で、グローバルな視点から、また、国の将来あるべき姿を考え、バックキャストの観点から捉え直す必要性を学びました。

『グローバル幕末史 - 幕末日本人は世界をどう見ていたか』(町田明広著、草思社、本体価格1,700円)

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