あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

一流の画家はなぜ長寿なのか

2018-06-30 15:32:09 | 

 この世に生を受けた以上、少しでも現世を楽しみたいのは衆生の思い。しかし、この世はままならぬもの。ではいかにすれば長寿を全うできるか?著者、霜田里絵さんは、一流の画家が長生きであると判断し、彼らの生き様に焦点を合わせました。

 脳科学から見て、染色体の端にあり細胞分裂のたびに短くなるため、年とともに縮むと考えられていたテロメアに着目。これが縮まらないようにすれば、長寿は約束されるはずである。ではどうすれば、そうなるのか?それは、

①心のあり方
②脳の使い方
③ライフスタイル

に関して、一流の画家は一般人と違うことです。彼らは、定年もなく、どこの組織にも属さず、芸術の枠内で自分の思いを作品にするという、ストレスも皆無の生活を営んでいます。絵画には最新の注意を払い、渾身の力を振り絞りますが、それ以外には無頓着。絵を描くには、モデルや風景に目を凝らし、筆や彫刻刀を持つ手を十二分に使い、右脳を活発に動かし、感性豊かに生きています。

 また、彼らの絵に対する情熱はとてつもなく深く、強く、また死に至るまで持続して維持し、絵画絵の探究心、向上心は測り知れません。その意味でも、我々は生涯、トップレベルで情熱を奉げることのできる何かを持つ必要があります。

 そして、その情熱を傾けたアウトプットが、その人の思考、思いを含み、周囲の人に「共感」を与えることが重要であると著者は感じています。人生100年時代、皆さん、情熱を注げる何かを探し、追求し続けましょう!

『一流の画家はなぜ長寿なのか』(霜田里絵著、サンマーク出版、本体価格1,400円)

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小売再生

2018-06-28 17:33:00 | 

 空き店舗が商店街にあるのは当たり前になっています。最大の悩みは後継者問題かもしれませんが、後継したいと思えるような業態でなくなっているのが実情かもしれません。我々書店でも同じです。井戸書店のスタッフにも、私は次のようにつねづね言っています。

 「お客さまが目的の本を探し求めにいらっしゃるのに在庫がない。肩を落として帰られる。これに対し、ネット通販では、家から一歩も出ることなく、または、外にいても、パソコンやスマホで、在庫の確認ができ、注文すれば翌日には必ず到着する。これでは、お客さまが来店されないのは当たり前。では、どうすればお越しになるかを考えて、行動に移すのが我々の使命。」

 この本の前半部でも、ネット通販はIT技術を駆使し、いかにリアルに近づけるかを模索しています。この部分を読めば、もう諦めの念も抱きますが、後半部では再生への道が明確に書かれています。

「小売業者が取り組むべきは、独自性とインパクトと価値ある体験を創り出すこと。」

 音楽業界でライブが重要視されているのと同じように、その商品に関して、生の体験を店舗側からアピールすること、それが価値あるものであれば来店して下さるだろうし、その体験価値を買っていただける。いかに売るかの視点に立ち、自ら発信していけば、再生への道は約束されています。

『小売再生 リアル店舗はメディアになる』(ダグ・スティーブンス著、プレジデント社、本体価格1,800円)

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全文完全対照版 孫子コンプリート

2018-06-28 16:49:18 | 

 日本人にとって、中国古典では「論語」と双璧で読まれている「孫子」。これを完全現代語訳で読める1冊。もし、まだ読んでいらっしゃらないのなら、是非お薦めします。

 兵法書ですが、戦争は極力避ける、できれば外交で始末をつけるべし!なぜなら、戦争は国家財政を圧迫するだけだけでなく、国家の存亡にかかわる一大事であるから。誠に正論です。米朝の関係もこの観点から見れば、話し合いで解決するのが当たり前。

 しかし、戦わなければならない場合は、どうすればよいかに関しても事細かに書かれています。有名な章句、「彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず」や「風林火山」、「呉越同舟」などをに触れましょう。守りを固め、必勝の形を作ることが先決です。

 さて、この「孫子」は兵法としてだけでなく、人生論として読んでも価値があります。例えば、

 「夫(そ)れ兵の形は水に象(かたど)る」

では、水のように臨機応変に形を変えるように、自分の置かれている環境に合わせて自らも変化対応していくことが重要です。

 また、

「軍争より難(かた)きは、迂(う)を以て直(ちょく)と為し、患(かん)を以て利と為す。」

は、ことわざ「急がば回れ」を意味し、遠回りしてもすべきことは必ずせよ!という教えです。論語同様、2500年前の思想はまだ息づいています。

『全文完全対照版 孫子コンプリート』(野中 根太郎著、誠文堂新光社、本体価格1,500円)

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三人目の幽霊

2018-06-18 16:45:15 | 

 落語を下敷きにした小説は探せば、まだまだありますね。『三人目の幽霊』は第4回創元推理短編賞佳作受賞作である、表題作の「三人目の幽霊」が収録されています。

 こんな雑誌があったら定期購読したいなぁと私は思う、「季刊落語」編集部の一員となった間宮緑はこの異動に苦虫を噛み締めながらも、上司である牧編集長の推理力に目を見張ります。実際の落語会で起きるわけのない事件(事件と言っても、殺人なんてものはなく、出番の人が高座に上がれなくしたり、上がったは良いものの、落語を途中で止めざるおえない状態になったりという、いやらしい落語界のハプニング?)をこの二人で解決していくストーリー。落語のネタをベースに展開していくので、落語ファンにとっては推理&落語を楽しめます。推理ファンは、知らなかった落語の世界を知ることが出来ます。

 この物語の中にも、落語とは~というくだりが出てきます。

 「落語が講談とも浪曲とも違う点は、語り手がいなくなることだ。」
 「落語というのは、基本的には一発芸だ。落語を観て、そして語れるようになるためには、一瞬を見逃さない集中力とその芸を的確に評価できる客観性を持っていないといけない。」

 素人落語家の私にとってもためになる推理小説です。

『三人目の幽霊』(大倉崇裕著、創元推理文庫、本体価格760円)

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頭の中を「言葉」にしてうまく伝える。

2018-06-09 15:21:06 | 

 情報洪水の中に身を置く現代人は、居酒屋での飲み放題ならぬ、インプットやりたい放題の状況です。しかしながら、情報過多は劣化している情報も多いので気を付けなければなりません。しかし、これからのAIの進展において、まさにアウトプットをいかにするか、それも上質のものを出来るかが肝要になってきます。よって、

 「考えていることを言語化できなければ、考えていないも同じ。」
 「頭の中で言語化した思考も、言葉にして伝えなければ、考えていないも同じ。」

なのは明明白白。思考を言語化するには、

 ①思考を深める~削ぎ落としてシンプルにする
 ②語彙のストックを充実する~語彙力を向上させる
 ③伝わりやすいパターンを利用する

が大切であると述べています。ノウハウそのものは本書に譲りますが、この本で一番感銘したのは、「思考の言語化がうまい人とは、『稟(ひん)』が大きい人」という点。古代中国では、天から降ってくる情報を受け止めるための、心の中にある器を『稟(ひん)』と呼び、それを大きくするために学びがあるとしています。語彙だけでなく、先人の様々な考えをストックする器をどれだけ大きくするか、そして、それを基に発信する力こそが生まれてきたすべての人に試されているのですね。

『頭の中を「言葉」にしてうまく伝える。』(山口謠司著、ワニブックス、本体価格1,400円)

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噺家ものがたり ~浅草は今日もにぎやかです~

2018-06-08 16:42:02 | 

 落語ブームは小説にまで到達しています。映画化もされた『しゃべれどもしゃべれども』(佐藤多佳子著、新潮社)が刊行されたのが1997年でしたが、今ではぽろぽろと刊行されてきてます。本書『噺家ものがたり ~浅草は今日もにぎやかです~』は、第24回電撃小説大賞《選考委員奨励賞》受賞作品でもあり、読み応えのある感動の1冊です。

 ストーリーはHP(https://www.kadokawa.co.jp/product/321711000066/)から拝借させて頂くと、

 大学生の千野願は、寝過ごしてしまった就職の最終面接へ向かうタクシーの中で、カーラジオから流れてきた一本の落語に心を打たれる。その感動から就職はもちろん、大学も辞め、希代の天才落語家・創風亭破楽への弟子入りを決意。
何度断られても粘りを見せ、前座見習いとなるも、自らの才能のなさに落ち込む千野願だったが、ある日、初めて人を笑わせる快感を覚える。道が開けたように思えたそのとき、入門前から何くれとなく世話を焼いてくれた兄弟子・猫太郎が突然――。

 破楽師匠の言葉として、「落語とは何か」という解説が物語に這うように書かれています。

 「伝統というなら、落語も同じだ。本筋を守りながらも時代に応じてカスタマイズしていけばいいんです。」
 「創作落語ってのは、自らが経験したことに虚構とサゲさえつければ、あらゆる経験が噺になりえます。」
 「落語ってのは、人間の心の機微を表現するもんだ。だとしたら、日々の人間観察は不可欠なんです。」

 また、演じられる落語は演者の生き様であることを、破楽師匠や猫太郎先輩は如実に語ります。

 「人生ってのは、落語と似ているんです。死に際に、どんなサゲをするか。これが肝要なんです。」
 「人は死ぬ瞬間に、幸せだったと思ってはダメだ。あぁ楽しかったと感じなければならない。」

 人生落語論はここでも生きています。そして、破楽師匠は千野願の母にこうも言いました。

 「成功へのエンジンになるのは、覚悟です。」

 しょうもない自己啓発よりもぐっと心に突き刺さる落語物語はどんな世代にも楽しめます。

『噺家ものがたり ~浅草は今日もにぎやかです~』(村瀬健 著、KADOKAWA、本体価格630円) 

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落語は素晴らしい

2018-06-07 17:07:04 | 

  月亭方正師匠自身の人生と落語のネタを結びつけて、 落語人生を振り返る1冊。四〇歳からの高座は楽ではないはずであり、それまでのタレントとしての芸風とは一新した一人芝居の落語を大いに語ります。

 例えば、「九.ゆとりを持って生きるために 失敗をあまり気に病まない」では、

 「失敗したくないから、何もしないようになる」のではなく、「どんどん挑戦していくことが、芸人」だから、「失敗しても、前へ前へ進みたい」

と述べていらっしゃる。「格好つけてスべるのを嫌がっている」のではなく、笑っていただけるように努める「サービス精神」の持ち主こそが芸人であるという定義は、落語をやっている私にもよ~くわかりますね。しかし、これは落語家だけの話ではなく、一般人でも同じことですよね。

 また、落語論として、

 「落語の素晴らしさは演者と聴き手が一体化できること」

という言葉は身に染みて感じます。高座で必死に演じる、つまり、自身の存在を消して、役に徹しきると、ツボでは大いに笑いが取れます。これは、店で言えば、店のスタッフとお客様との呼吸、店主とスタッフのベクトルが同じ方向になれば、自ずと繁盛するのではないでしょうか?演者のやる気が先ですがね・・・。

 落語に登場するのは街にいる普通の人たち。彼らの姿は我々でもあるのですから、聴けば聴くほど、生きることにも関係しつつ、笑っていける、本当に、落語って素晴らしい!

『落語は素晴らしい - 噺家10年、根多 〈ネタ〉が教えてくれた人生の教え』(月亭方正著、ワニブックス、本体価格1,389円)

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ペンギンは空を見上げる

2018-06-04 16:26:16 | 

   北海道朝見市に住む小学6年生佐倉ハルくんは、風船で宇宙撮影をすることを目指し、すべて独力でやり遂げようと努力している。将来はNASAやJAXAで働くことを夢見て、英語の家庭教師も受けていました。

  その彼の小学校に、鳴沢イリスという名のハーフの女の子がワシントンから転校してきました。金髪の彼女は、親の転勤ですぐに移動することが多く、

  「日本語はあまりとくいでないです。でも、どうせすぐむこうに帰りますから、なかよくしてくれなくていいと思います」

が初めての挨拶の言葉。ある事件をきっかけに、教室では浮いている存在だったハルくんも、彼女の前途には暗雲が垂れ込めていると感じます。

 彼女の大切にしていたぬいぐるみが見当らないことが放課後に起こり、ハルくんは英語を駆使し、探すことを手伝うことから、彼女とは仲良くなります。クラスでは彼女に対するいじめが勃発するも、ハルの風船ロケット2号の発射に、彼女も立ち会います。

 言葉通り、彼女はアメリカに戻ることになり、2号では失敗した宇宙撮影を、彼女に見せてあげようと、3号機「グッドラック」を設計組立、発射へ。

  夢への挑戦はとても美しく、ガガーリンの言葉である、
「地球は青い。神様は宇宙には見当たらない」
を風船ロケットで確認し、ハル君の家族、そして、彼の人生を、また、イリスとの将来を応援することになるでしょう。

  さて、この風船ロケットに関しては、その第一人者である岩谷圭介氏の存在抜きには書かれなかったことでしょう。本書を読み、風船ロケットによる宇宙撮影の映像を観て、感動しました。皆さまも、是非ご覧くださいね。

https://www.youtube.com/watch?v=PVIiXm_F2dA

『ペンギンは空を見上げる』(八重野統摩著、東京創元社、本体価格1,600円)

 

 

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