「座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」(出口治明著、KADOKAWA、本体価格1,500円)を年末に読み、もう少し深めようと、本書を読みました。「やさしく学べる」と書かれてある通り、現代語訳と解説の対になっており、要点が理解できます。
トップにとっては、自らの姿がその組織のすべてと考え、第一に清廉潔白であり、常在戦場、常に組織の課題に尽力すること。それを表す言葉として、
君は舟なり、人は水なり。水はよく舟を載せ、また、よく舟を覆す。
上理(おさ)まりて、下乱るる者はあらず。
流水の清濁はその源に在り。
君、多欲なれば、則ち、人苦しむ。
と書かれています。
そして、トップを補佐する人材が争臣、つまり、同じ志に向かって邁進し、トップに対して諫言、意見の言える忠臣であること。そのためには、トップ自らが聴く耳を持つこと、組織の風通しを良くすること、君主と臣下との出会いは水と魚のようなものと言われるような、上下の信頼関係の確立が不可欠です。これには
君の明らかなる所以(ゆえん)の者は兼聴(けんちょう)すればなり。
情を尽くして、極諫(きょっかん)せんことを欲す。
という名言が付されています。
また、組織形成上は、あくまで人物本位かつ公平な人材登用、人物眼を持った上での適材適所を心掛けること。
臣下にとっては、人材は実際の能力だけでなく、高徳の持ち主が要求されます。そのためには、学識が必要であり、前言往行を識る、つまり、先人の言行である、古典と歴史から学ぶべしと伝えています。自分を高めるという修己治人が大切です。
最後に、後継者選びは苦労するので、その選定と教育には十二分に注力すべきであるとしています。どんな組織でも、ここが最大の鍵になります。
唐の太宗とその臣下たちの言行を記した「貞観政要」がリーダーの帝王学書であると言われていることには納得します。他のビジネス書は不要と言っても良いでしょう。それだけに、抑えるべき点はしっかりと学ばなければなりません。
『「貞観政要」がやさしく学べるノート』(プレジデント書籍編集部[編]、プレジデント社、本体価格1,400円)