大河は運動神経万能で明るい。それに対して、虎太郎は紫外線アレルギーのため、戸外の活動はできないものの、体操教室ではトップクラス。小学校の4年生の同じクラスのこの2人、プロレスをきっかけに仲良くなり、DVDや書籍雑誌を大河は虎太郎に貸し出すほど、2人ともプロレスにはまりこむ。クラスのいじめの対象になっていた虎太郎が大河と仲良くなっているのを気に食わない連中から、虎太郎にプロレス技のバックドロップをかけるように大河に命令する。これを拒否すると自分もいじめられるため、けがしないようにしたものの、虎太郎は病院へ。その後、2年半の不登校を経験します。
20歳で身長188センチ、体重105キロの体格の持ち主の大河は日本最大のプロレス団体JPFの看板レスラー。虎太郎は教師になろうと教育実習中に生徒のいじめを発見。いじめられないように「強くなりたい」と思ういじめられた男の子に、NMBFというインディーズのプロレスの試合に来るように虎太郎は伝えます。いじめられた経験のある人にプロレスを教えて自信をつけさせ、プロレスでいじめを撲滅する理念を掲げたNMBFに、虎太郎は大学2年の頃に入り、体操教室で培った身体能力を活かしてました。
「イジメするやつってのは、きっと心が弱いんだ。だから、その弱さを隠すために、体や立場の弱いやつをいじめる。だから、そういうアホに見せつけてやるのさ。本当の強さってのを」
本当の強さとは、プロレスでの「相手の技を受けて、倒されて、それでも、何度でも立ち上がろうとするハート」。受けの美学。
虎太郎は他団体へ移籍し、実力を付け、遅咲きながら、年末のJPFのメインイベントで大河と対決します。さあ、その結末は・・・。
単なる青春小説だけにとどまらず、読者に諦めない強い気持ちを抱かせる「勇気の泉」の物語です。
『立ち上がれ、何度でも』(行成薫著、文春文庫、本体価格850円、税込価格935円)