あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

立ち上がれ、何度でも

2021-07-29 15:20:10 | 

 大河は運動神経万能で明るい。それに対して、虎太郎は紫外線アレルギーのため、戸外の活動はできないものの、体操教室ではトップクラス。小学校の4年生の同じクラスのこの2人、プロレスをきっかけに仲良くなり、DVDや書籍雑誌を大河は虎太郎に貸し出すほど、2人ともプロレスにはまりこむ。クラスのいじめの対象になっていた虎太郎が大河と仲良くなっているのを気に食わない連中から、虎太郎にプロレス技のバックドロップをかけるように大河に命令する。これを拒否すると自分もいじめられるため、けがしないようにしたものの、虎太郎は病院へ。その後、2年半の不登校を経験します。

 20歳で身長188センチ、体重105キロの体格の持ち主の大河は日本最大のプロレス団体JPFの看板レスラー。虎太郎は教師になろうと教育実習中に生徒のいじめを発見。いじめられないように「強くなりたい」と思ういじめられた男の子に、NMBFというインディーズのプロレスの試合に来るように虎太郎は伝えます。いじめられた経験のある人にプロレスを教えて自信をつけさせ、プロレスでいじめを撲滅する理念を掲げたNMBFに、虎太郎は大学2年の頃に入り、体操教室で培った身体能力を活かしてました。

 「イジメするやつってのは、きっと心が弱いんだ。だから、その弱さを隠すために、体や立場の弱いやつをいじめる。だから、そういうアホに見せつけてやるのさ。本当の強さってのを」

 本当の強さとは、プロレスでの「相手の技を受けて、倒されて、それでも、何度でも立ち上がろうとするハート」。受けの美学。

 虎太郎は他団体へ移籍し、実力を付け、遅咲きながら、年末のJPFのメインイベントで大河と対決します。さあ、その結末は・・・。

 単なる青春小説だけにとどまらず、読者に諦めない強い気持ちを抱かせる「勇気の泉」の物語です。

立ち上がれ、何度でも』(行成薫著、文春文庫、本体価格850円、税込価格935円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「原因」と「結果」の法則

2021-07-26 11:25:52 | 

 自己啓発書のベースの1冊として、のちの著作者であるデール・カーネギーなどへの影響を多大に与えたバイブルと言っても良い本です。

 「人間は思いの主人であり、人格の制作者であり、環境と運命の設計者である」

この一言が根源にあり、「自分の心の庭を掘り起こし、そこから不純な誤った思いを一掃し、そのあとに清らかな正しい思いを植えつけ、それを育みつづけ」ることを律しています。論語における「恕」「思いやり」を心に抱いて、行動を起こしていくと、自らの外部環境も自ずと良好になり、楽しい幸せな日々を送れることになるでしょう。

 最終章に、「穏やかな心」を述べているのは印象深い。「心の平和」には強い自己コントロールが必要であり、その結果、どんなわずかな良いこともポジティブに認めることが出来ると思います。生きていく以上は自らの心を浄化し続けなければなりません。

『「原因」と「結果」の法則 』(ジェームズ・アレン著、サンマーク出版、本体価格1,200円、税込1,320円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

2021-07-24 17:02:42 | Weblog

みかこさんは、英国のブライトン在住で、この本は、その息子さんの学校の日々が赤裸々に綴られています。英国は、労働者階級、中流階級と別れており、更に移民も加わるので、日本では考えられないほどの差別がひどいそうです。差別の嵐が吹き荒れる学校での息子さんの考え、行動には感心させられました。

 特に息子さんが言った「世界中で起きているいろんな混乱を僕らが乗り越えていくには、自分とは違う立場の人々や、自分と違う意見を持つ人々の気持ちを想像することが大事。つまり、他人の靴をはいてみること〔英語ではエンパシー(empathy)と表現します〕」にはとても心動されます

まさに、今回のオリンピックの開閉式の創作メンバーの小山田氏、小林氏の辞任解任問題も彼らのエンパシー足らなかったと考えます。

今後、よりグロバールな問題を考えるにあたり、自然に相手の事を可哀そうだとか想うシンパシー(sympathy)ではなく、相手が何を考えているのだろうと考える能力・エンパシーがより必要なのだと感じました。

読了後、息子さんはおそらく大物になるだろうと勝手に予想した私でした。  

 

(ブレイディみかこ著、新潮文庫、税込693円)                                                                                                              (佐藤 崇)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

これからやってくる素晴らしい世界の話

2021-07-19 16:24:57 | 

 書名の通り、これからやってくる時代に対する考え方や生き方は世界の先住民族、もしくは開国間もない国にあることがわかりました。久しぶりに目から鱗状態で読了しました。

 著者は、エクアドルの熱帯雨林のジャングルに暮らす先住民のアチュアル族から

 「あなたたちの文明は、『もっともっと』という考え方と、『足りない』という悪夢の中で暮らしている」

と言われ、「ジャングル、森はなんでも揃っている無料のスーパーマーケットだ」という彼らには所有の概念やお金の存在は無く、飢える心配もありません。人々は自然としっかりと繋がっています。

 夏の北極圏へ旅立ち、カナダのイヌイットはアザラシ猟で生計を立てていましたが、動物保護運動のために毛皮マーケットが縮小し、政府からの補助金で生活をしています。彼らは生きがいを失い、アルコールやドラックへ依存し、精神を病んでいます。その一方、デンマーク領のグリーンランドのイヌイットはゆりかごから墓場までの福祉支援と、職業も無料の資格講座で平等な職業選択が可能です。つまり、自らの思いで働き、生きがいを生み、苦しいときは保証が充実しています。この両者の差を知った著者は、「それぞれのアイデンティティーを育てられることが、よりよく生きるためには必要」と認識します。

 そして、国民総幸福量のブータン王国では、開国間もなくですが、国民の多くは農業に従事しており、飢えることがなく、チベット仏教の教えから、足るを知る考えや、死後四十九日後に何かに生まれ変わっている輪廻転生の考えからあらゆる命を大切にしています。

 翻って、これからの予想未来図では、現在でも様々な分野で使用されている特化型AIから、AI自らが過去のデータから知能を生み出す汎用型AIが誕生し、多くの仕事をAI搭載ロボットがこなすと、本当に創造的な仕事以外は人間には就職先がない、つまり無職になる可能性が生まれます。AIは自分で進化していくので、対価を求められず、AIはアチュアル族の森の存在になります。結局は同じ生き方になるのではないかという答えです。もちろん、飢える心配がないように、コロナ一律給付金のようなベイシックインカムが必要になりますが。

 第5章以降は、世界を回って知った幸せな生き方、社会について述べられていますが、先住民やブータン王国に学べということ。何も難しいことではないとわかりました。

『これからやってくる素晴らしい世界の話』(ヒロカズマ著、自由国民社、本体価格1,600円、税込価格1,760円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

花は咲けども 噺(はな)せども

2021-07-15 17:36:13 | 

 趣味で落語をさせてもらって高座に上がり、皆様から笑いをいただいています!?私としては、落語家さんの生態を知りたい。上方には、二つ目、真ん打というしくみはありませんが、繫昌亭や喜楽館での寄席における落語家さんの出演順を顧みると、芸を磨いておられる姿はよくわかります。本書は立川談慶師匠の、たぶん実話に基づく小説なのだろうとお察しいたします。

 二つ目の落語家、山水亭錦之助は様々な場面で落語を語りますが、落語の持つパワーの凄さを感じます。余命宣告をされているガン患者の前での生落語、不登校や生活態度の悪い中学生に対しての「文化講演会~落語から学べること」など、笑いの効用以上に、それを聴く人の生き方や過ごし方に影響を与えています。

 「自分のいままでの経験を落語の真ん中に寄せてゆかなきゃズシンと来ない。(中略)上手くしゃべれたとしてもそれじゃ芯を打たないから、心も打たない。」

 芸に人間味が滲みだして、初めて名演になるんでしょう。立川談志師匠の「落語とは人間の業の肯定である」という名言も、錦之助なりの解釈で、「人間はダメでもいいんだよ」というすべての生を受け入れる視点は、現代のSDGsに通じますね。

 やっぱり、落語はおもしろい!

『花は咲けども 噺(はな)せども』(立川談慶著、PHP文芸文庫、本体価格780円、税込価格858円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

2021-07-14 17:49:00 | 

 『売れる人がやっているたった四つの繁盛の法則 「ありがとう」があふれる20の店の実践』(笹井清範著、同文舘出版、本体価格1,600円、本体価格1,760円)

に掲載されていた、浅草かっぱ橋商店街の飯田屋さんの社長さんの本があったので、これも一期一会で読みました。小売業に携わる者として、もやもやしていた視界が晴れました。

 4代目として入社して、改革の気持ち満々でやった、安売り、効率の追求は全くの裏目になる次第。これらは大型店の戦略であり、33坪の料理道具店には真逆の行動を起こしていた顛末は、大量のスタッフの退職に至りました。そこで、世の常識を捨て去り、

 「たった一人のお客様に、喜んでもらえる商品が一つ売れればいい」

という地平に立ちました。これは、  『「福」に憑かれた男』  (喜多川泰著、サンマーク文庫、本体価格600円、税込価格660円)

でも書かれていた、

 「大切なのは、目の前の一人の人生に興味を持つことだ。愛を持ってその人を見ることだ」

と全く同じですね。お客様へ感動を伝達すること、笑顔でお客様の課題をとことん解決する接客を施すことにより、その人から買いたいというステップを生み出します。品揃えも大変身で、売れ筋重視から、それぞれのお客様の声重視になり、在庫は膨れ上がっても、世界で唯一の店舗へ変貌しました。インターネット通販に駆逐されているリアル店舗の生きる道の開示です。小売店人の開眼の書です。

『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(飯田結太著、プレジデント社、本体価格1,600円、税込価格1,760円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

食堂かたつむり

2021-07-13 17:59:59 | 

 仕事から帰宅すると、部屋はもぬけの殻。同棲していたインド男性がすべてを何もかも持ち出してドロンの状態で、唯一残されたおばあちゃんの形見の糠床の壺だけを持ち出して、倫子は故郷へ戻ります。あまりのショックで声を失ったままで。

 中学卒業後15年間、都会にある祖母の家で下宿し、多くの料理店で働きつつ、祖母からも料理を学んできた経験を踏まえ、実家の物置小屋を改装して、一日一組だけに振る舞う食堂をオープンします。お客様の要望や参加者の構成や将来の夢までを考慮して、メニューを生み出す、書店でいえば1万円選書ですね。「ジュテームスープ」という名の、恋や願い事成就の看板メニューまででき、好評を博していきます。

 声は出ないが、料理でその思いを叶えていく、ものすごくシンプルだけど気持ちいい。「料理とは祈りそのものだ」という倫子の思いは伝わっていますね。不仲だった母親との物語は彼女の料理で丸く収まり、田舎の自然や住民の暖かい心が倫子のこれからも後押ししてくれることでしょう。すっきりした気分で最終ページを閉じることが出来ました。

『食堂かたつむり』(小川糸著、ポプラ文庫、本体価格560円、税込価格616円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本一わかりやすい 「強みの作り方」の教科書

2021-07-08 15:22:08 | 

売上を増やしたい と思う気持ちは皆さん一緒です。これがなかなか実現できないのも事実です。それにはお客様へどう伝えるか?

  

お客さんへのメッセージは小手先ではなく、経営者の 魂からの訴え が必要になります。

                                              

             特に、  自分は何者で、何がやりたいのか を明確にするには

                           

 今までの生きざまを振り返って、自分にとってネガティブなこと、トラウマなどが強みに転換する可能性もあります。SNSではなく、誰もがアクセスできるブログを毎日1年間書くことを推奨されています。SEO対策なんて不必要で、とにかく思いを継続的に発信することが第1歩。

 この本の内容がサクサクと理解できるなぁと思ったら、著者の板坂さんは中小零細弱小家業専門の経営コンサルタントであり、広島県中小企業家同友会会員さんでした。私は兵庫県の会員ですから、すとんと読了しました。あとは実践あるのみ。

『日本一わかりやすい  「強みの作り方」の教科書』(板坂裕治郎著、KADOKAWA、本体価格1,400円、税込価格1,540円)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小さな里山をつくる チョウたちの庭

2021-07-07 16:54:04 | 

 比叡山のふもとの1000坪の山林と田んぼを、チョウを呼ぶ場所に整備すること30年。その集大成を1冊にまとめられています。チョウは環境の豊かさを測るにはもってこいの生き物であること、そのための場所は多様な植物の地であること、そのために今森さんは汗を流されている様子が手に取るようにわかります。春夏秋冬、花咲く草花や木々、それに誘われてくる様々なチョウ、今森さんの思いの詰まったチョウの聖地が美しい写真と解説文により、読む者は間違いなく癒されます。

 私は板宿の里山整備をする一人として、「板宿嵐山」を目指しています。春は山桜、ツツジ、ヤマボウシ、秋は紅葉が楽しめる場所へほぼ1年中草刈機を扱っていますが、15年経過して、多くの山野草の花が顔を出し、春には山菜も食することができるようになりました。チョウへの視点は欠いてましたが、植樹だけでなく、地に合った花々も育てていきたいと喚起させられました。

『小さな里山をつくる チョウたちの庭』(今森光彦著、アリス館、本体価格2,400円、税込価格2,620円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「福」に憑かれた男

2021-07-06 13:48:00 | 

 父親が急逝し、息子の秀三がサラリーマンを辞めて、家業の長船堂書店を継いで3年。書店を改装して大型化することを考えていましたが、売上は右肩下がり。歩いてすぐの場所に大型書店の出店計画も持ち上がり、ぎりぎりの経営から閉店の検討をするという、真っ逆さまの状況に書店店長を追い込んだのは、実は秀三に取り憑いた「福の神」の仕業。「人知れずいいことをする」「他人の成功を心から祝福する」「どんな人に対しても愛を持って接する」人に憑く福の神はその人を幸せにするために、敢えて試練を与えます。しかし、気づいて欲しいゆえに、解決の糸口を提示してくれる、「どんなときでも行動する勇気を与えてくれる」素敵な人との出会いも演出します。その人から受けた箴言は

 「大切なのは、目の前の一人の人生に興味を持つことだ。愛を持ってその人を見ることだ」

ということ。ストーリーの中では、目の前のお客様の課題に寄り添い、自分の読書歴の中から最適な1冊を提示することで、お客様から信頼を得て、再来店に結び付けていきます。さらには、本を売ることは手段であって、本当にしたいことは何か、生きる理念を明確にすることに導かれていきます。それを実践することが幸せへの切符を得ることになります。

 以前読んでいましたが、迷いが生じたときには再度読む1冊。書店に従事していなくても、同じ道筋でぶれない自分に戻れます。

『「福」に憑かれた男』(喜多川泰著、サンマーク文庫、本体価格600円、税込価格660円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする