あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

<完本>閑話一滴

2015-03-31 15:32:24 | 

 常連のお客さまから、「何か、えぇエッセイはないか?」と言われ、差し出したのが、水上勉の『〈完本〉閑話一滴』(PHP文庫、本体価格720円)。『雁の寺』『越前竹人形』『飢餓海峡』などの代表作を生みだしてきた著者の考え方が染み出ている随筆です。

 特に、書名にも因んだ、「一滴の水」には、禅語の「曹源一滴水」のもとになった逸話を編み出した、儀山和尚が登場しますが、和尚は水上さんと同郷、若狭の大飯町。現在は大飯原発がありますが、本来は貧しい漁村です。

 夕刻に、儀山和尚が風呂に入ろうとしたら、湯が熱すぎたため、雲水が水桶に水を入れ、湯をうめたが、桶に残った水を庭に捨てた時に、儀山和尚の一喝が響きました。

 「もったいないことをするではない。一滴の水にも命がある。草や木が日照りで泣いているのがわからぬのか。根へかけてやればよろこぶものを。」

 この一滴の水は禅の教えになってはいますが、和尚の生誕地は孤島で、おいしい水が出ない貧寒な村であり、彼の生まれ育った環境がモノを大切にする潜在意識を醸成したのではないかと水上さんは想っています。素晴らしい禅語を発祥した由来の地が電気を発電する場所になり、「曹源一滴水」の思想は顧みられなくなっています。

 モノが溢れ、便利が横行する時代だからこそ、水上さんのエッセイは胸打つのでしょう。

『〈完本〉閑話一滴』(水上勉著、PHP文庫、本体価格720円)

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Amazonに勝てる絶対ルール 

2015-03-26 16:08:50 | 

 前回の『ジェフ・ベゾス ライバルを潰す仕事術 企業・業界・組織・人、誰もができる悪の技術』(桑原晃弥著、経済界新書、本体価格800円)で、Amazonの基本スタンスを学びました。顧客に対して絶対的な施策を図り、

 「アマゾンは、食物連鎖の頂点にいる捕食者であり、決して狩りはやめることはない」

という元・アマゾンの写真の言葉の通り、 Amazonの小売での優位は絶大です。顧客が求める便利、つまり、「早い」「安い」「無尽蔵の商品点数」「(スマホの出現で)いつでもどこでも買える」を徹底的に追及しています。

 これに対して、いかに臨めばいいのか?その答えは本書に書かれていました。それは、

1.アマゾンと共に生きる

2.お客さんを囲みこむ

3.アマゾンができないことをやる

4.製造販売一括メーカーになる

であり、リアル店舗、ネットショップ、チラシ、DM、イベントでのノウハウを紹介しています。

 特に、在庫があるかわからまま、店にわざわざ来ていただき、Amazonよりは高い商品を買ってもらわないといけないリアル店舗は、お客様に「この店で買いたい」「この人から買いたい」と感じてもらうしかありません。また、地域の人々といかに結びつくかを考え、行動することしか手はないと思います。大震災を経験し、リアル店舗の大切さを知った者としては、小売の世界はネットショップだけになると、いざというときにはその地域の人たちは全員困るということだけはお伝えしたい。

『Amazonに勝てる絶対ルール』(竹内 謙礼著、商業界、本体価格1,400円)

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ジェフ・ベゾス ライバルを潰す仕事術

2015-03-23 15:27:44 | 

 我々書店にとって、最大の敵になってしまったAmazon。「ライバルを圧倒するには、ライバルを見ずにユーザーだけを見て、とことんユーザーに集中することだ」という、創業者ジェフ・ベゾスの経営への考え方は非常にシンプルです。

 「顧客は常に正しい」という正義のみに邁進し、従業員や地域、国には全く配慮をしない。「顧客のためになることに資金を使う」が、「社員にお金を使うな」であり、「儲けは投資家に渡すな」、「投資家を泣かせても、とにかくシェアを奪え」、「大きなビジネス、小さな納税」とブラックすれすれ企業なのでしょうね。グローバル企業の典型的な経営手法は、社名のアマゾンからは緑豊かなイメージですが、Amazonの支配が業界に及ぶとぺんぺん草も生えないかもしれない。

 但し、モノに縛られず、顧客であるヒトに徹底的にフォーカスする姿勢は学ばなければなりません。「三方よし」を考えながらですが…。

『ジェフ・ベゾス ライバルを潰す仕事術 企業・業界・組織・人、誰もができる悪の技術』(桑原晃弥著、経済界新書、本体価格800円) 

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健さんからの手紙

2015-03-20 16:36:59 | 

 健さんがお亡くなりになられて、4か月の間に多くの雑誌が特集を組んで発刊されています。どれも売れているのは健さんの人気だけではなさそうです。健さんから発露しているのが日本人のイズムだからではないでしょうか。

 健さんと手紙のやり取りのあった、毎日新聞客員編集委員の近藤勝重さんは健さんの手紙やエッセイの文面、健さんについて新聞に書いた近藤さんの記事、また健さんとのインタビューを通して、人間・高倉健の魅力に迫っています。

 健さんの生き様は次の3つに収斂されるのでしょうか。

 1.「人生とは優しさの総量を増やしていく道のりである」

 2.「いい人との出会いは人生の宝物になる」

 3.「行く道は精進にして、忍びて終わり悔いなし」

 比叡山大阿闍梨の酒井雄哉師が「健さんはお侍さんや」と言ったように、戦後の日本の中で、日本人の本当の気質を探り出し、それをフィルムの上で表現された人なのでしょう。ヒーロではなく、市井の人が想い、考える姿を精一杯描いた人。だからこそ、日本人、いや世界の人の心を打ったのでしょう。また、健さんの映画をしっかりと観よう!

『健さんからの手紙 何を求める風の中ゆく』(近藤勝重著、幻冬舎、本体価格1,100円) 

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リーダーは最後に食べなさい!

2015-03-16 15:56:50 | 

 当店でもロングセラー書籍として君臨する『WHYから始めよ!』の著者・サイモン・シネック氏の新刊が発売されました。今度はリーダーへの熱い思いが書かれています。

 人間は元来、安心を求めて生きており、組織として活動する上では、リーダーは組織員に安心感を抱かせることを一番にすることであるとしています。

 「組織内部の人間が互いにまったく危険を感じずにすむ文化をつくりあげるのが、リーダーシップの目標である。
それを実施する方法はいくつかある。

 ・ひとりひとりに帰属意識を覚えてもらうこと。
 ・人間らしい価値観と信条を明確にした強い文化をつくりあげること。
 ・部下に権限を委譲すること。
 ・信頼と共感をもってもらうこと。

いわば「安心感の砦」となる〈サークル・オブ・セーフティ〉をつくり出せばいい。」

 このことを脳内物質からも考察しており、リーダーシップの脳内物質であるセロトニンや、愛情の脳内物質のオキシトシンがリーダーには必要であり、組織員の脳にオキシトシンが充満すると、組織はリーダーの掲げたビジョンの実現へ邁進します。

 「 リーダーは、自分の右側にいる人のことも、左側にいる人のことも、見守ろうとする。たとえ自分とは意見を異にする人がいても、その人たちが快適に暮らせるのであれば、自分のことは二の次にする。リーダーは自分の時間、エネルギー、カネ、ときには皿に載った料理さえ、私たちに与えようとする。いざというときには、リーダーは最後に食べる。」

 現代の企業文化である「業績依存症」に強烈な鉄槌をくらわし、すべてを抽象化する数字よりも人々の気持ちを思いやれ!というメッセージは、企業だけでなく現代社会への熱い稲妻のように思えます。ドーパミンを追い求めるように駆け巡らされている現代人のための書と考えます。

『リーダーは最後に食べなさい! ―最強チームをつくる絶対法則―』(サイモン・シネック著、日本経済新聞出版社、本体価格1,700円)

 

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マーケット感覚を身につけよう

2015-03-11 16:55:26 | 

  大学3回生の次男坊が就職活動のために帰省しました。来年度卒業生から就職活動は学業を優先し、3回生の3月からとなりました。山口県下関市の大学に在籍し、九州の会社を志望するのかと思いきや、やはり、生まれ育った関西の方がいいのでしょう。大阪や神戸の企業合同説明会に参加していました。

  私が就職活動したのは、今から30年前。その頃は、リクルートから電話帳のような業種別の企業説明本が自宅に送られ、その中から志望企業にハガキを書くという方法でした。企業からは会社の資料と説明会の日程が送付されてきました。あるいは、理系で見られるような、大学の先生の紹介や、大学学部の卒業生からの勧誘を受け、人事部へつなぐ方法でした。いわゆるアナログなやり取りですね。その典型はコネですか。

 次男坊の就職活動を傍目から見ていると、リクナビやマイナビ、日経就職ナビなどの就職活動サイトを見て、興味のある企業にネット上でエントリーをするというペーパーレスの世界。合同説明会に行って、企業の話を聴き、さらに詳細に尋ねたい場合は企業独自の説明会に参加するしくみ。我々の時代と比べて、かなり便利になり、人が介在するよりもネットの情報が活かされます。つまり、学生はどこの企業にも応募でき、企業側は全国から学生の応募を受け付けることが出来ます。

 ちょうどそのとき読んでいた、『マーケット感覚を身につけよう 「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法』に同じことが書かれていました。就活は、「自分で取引相手を探し、個別に条件交渉をする相対取引から、不特定多数の取引参加者との競り合いによって、条件交渉をする取引市場取引へ移行した」わけです。この市場化は何も就活だけでなく、社会全般に広がっています。それを可能にしたのがインターネットの普及です。「不特定多数の需要者と供給者のマッチングを容易にした」基盤です。

 我々書店業界にもアマゾンというネット書店の登場で、相対取引をしている地域の書店は駆逐される一方です。入手スピードという便利さでは太刀打ちできません。「これからの社会は、どんどん市場化していく。それを避けることは、もはや不可能だ」とまで言われています。

 こんな中で生き残っていくには、他ではない価値を提示するしかありません。特に、忙しい現代人には世に溢れている中からモノを選ぶことを面倒と考える人がいて、そんな人には「誰かに選んでもらうという価値が今後ますます重要になる」らしい。セレクトショップは自分に最適なものを選んでくれる店として、その店の目利き力にお金を落としてくれるのです。私も日本酒を飲みたいけど、自分にはどれが合うかわからない時は専門店のチョイスとアドバイスが購買の決め手になります。

 書籍は一日に約200冊程度の新刊が発行されます。商品の渦、洪水の中からダイヤモンドを見つけるが如く、自分が読みたいと思う本を選び出さないといけません。もちろん、広告や口コミによって、食指は動かされますが、書店側も自店のお客さまが誰であるか理解し、書籍の仕入れをしていかなければなりません。望むらくは、この目利き力をメディアやネットで紹介してもらえば、市場化の波に乗れるのでしょうね。他力ではなく、まずは自力で目利き力を磨きましょう!そのためには商品知識を得るために読書に励みます。

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クロネコヤマト 人の育て方

2015-03-05 15:46:13 | 

 経営者の悩みの一つは人材育成。「何度言ったらわかるんだぁ!」と心の中で思っても、口には出せず、悶々とするのが現状です。この難問に対する解決の手引きが本書です。クロネコヤマトさんの凄さを知りました。

 クロネコヤマトさんのお客様との接点はセールスドライバーです。ただのドライバーではありません。会社の理念である「世のため、人のため」を実践するべく、「個々のセールスドライバーが自分で考え、自分の裁量で判断・実行し、体験を通じて中身をつくっていき、「現場に託し、会社が後押ししていくのがヤマトグループの『全員経営』です。」つまり、社員が理念を共有し、それを軸にして、自律的に働ける環境アプローチをしっかり形作っています。サーバント・リーダーシップを会社が担保しているしくみつくりは素晴らしい。

 その根本は、人に対して、数字や成果を求めるのではなく、「人間性を重視する」スタイルです。「『数字の魔力』から現場を守り」、「サービスが先、利益は後」を優先順位に定め、ブレない経営陣こそが社員のやる気を削がない第一歩です。会社の資源で人こそが大切であることは当たり前でしょうけど。学ぶべきことが多い1冊でした。

『クロネコヤマト 人の育て方』(水迫洋子著、KADOKAWA、本体価格1,400 円)

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心を癒す禅の教え

2015-03-03 18:01:59 | 

 現代社会は自分をじっくりと見つめることができない。注意を自分に向けようにもあまりに多くの情報に流されているのが現状ではないでしょうか。そして、勝ち組と負け組、富裕層と貧困層のように、二元が対立する構造になり、全ての人々が幸せになれない。こんな時代には「禅」の考えや行動原理が向いており、実行すればスキッとします。

 日本最大の禅寺・妙心寺は臨済宗妙心寺派全国3400寺の頂点の大本山。その最高幹部「管長」を務める嶺(みね)老師の教えは非常に理解しやすい。禅の根本は、「生きとし生けるものはずべて、仏性(きれいな心)を持っている」ということから、それを導くために座禅を組み、意識を自分に向けることの大切さを訴えています。座禅を組めば、無駄な考えを省き、単純になれる、これこそが「禅」の漢字の「つくり」である「単」です。シンプルな生き方こそが情報やモノ過多の時代には不可欠な視点です。

 また、「生きていれば、よいこともあれば、悪いこともある」というように、二元を共存することに重視する禅なら、楽な思考で生きることが出来ます。一方だけでなく、それに対立するもう一方も存するという、ものさしを我々が持つことこそが今を生きる術ですね。

 座禅だけでなく、禅の本を読むだけでも、私にはスッキリとした気持ちになれ、幸せです。

『心を癒す禅の教え』(嶺 興嶽著、SB新書、本体価格800円)

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