荘子を理解するのは難しい。これは現代人にインストールされている価値観とは真逆のような座標軸を持っているからだと思います。通常なら「役に立ちたい」と思い、そうなるように努力しますが、
「無用の用」
では、有能な人は誰かも期待され、自分自身も期待に応じようとがんばりますが、そんな人の存在があればこそ、「いっそ無用で無能で無益なほうが、争いもなく、疲れもせず、混乱も少なく、のんびりと人生を過ごせる」という考えが生まれるのです。
また、日本人は他人の目を気にするため、世間一般の常識に沿うことを心掛けますが、荘子は「相対的な価値観に振り回されたり惑わされたりすることなく、自分のいる場所を見つめ直しつつ生きる」ことを奨めています。これが流されるな、流れろ!の書名の通りの
「無為自然」
です。
情報革命、AI人工知能の進展で、過去の価値観は通用しなくなる激動の時代には、個人にとっていかに生きるかを考えることも頭の片隅に置いておくべきかと考えます。難解と捨て去るのではなく、「ケセラセラ、なるようになるさ!」という気持ちだけは持っておきたいですね。
『流されるな、流れろ! ありのまま生きるための「荘子」の言葉』(川崎昌平著、洋泉社、本体価格1,200円)