幻冬舎から『一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い』が出版され、また脚光を浴びていらっしゃる篠田桃紅氏。墨による抽象画が新しい領域を拓き、外貨準備もない1956年にアメリカ・ボストンのギャラリーの展覧会の招きで渡米、2年間アメリカに暮らし、多くの出会いが必然を招き、世界的に高い評価を得るに至った、現役の美術家です。本書を読めば、彼女は只者ではないと理解いただけると思います。それは、
「常識の世界に暮らさなかった」
「一貫して(自分に)正直でいた」
「自分に依るほかないから、人と異なるものを、なんとか一つ持って生きていこう」
など、女性にとっては、生まれては父母に従い、嫁いでは主人に従い、そしては老いては子に従う、「三従の道」が真っ当な生き方の時代に、「自分に依って生きる」道を歩まれました。全くの「非属」の人です。だからこそ、
「自由な気持ちで、さまざまなものと接する。何かにとらわれて、その範囲でやっていると、いいものまで見えなくなってしまう。自由な視点を持っている、つねに持ち続ける。」
姿勢を崩されない。禅僧のような視点でクリエイトしていくことは我々も参考にしなければなりません。
『百歳の力』(篠田桃紅著、集英社新書、本体価格700円)