あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

碁盤斬り 柳田格之進異聞

2024-06-27 17:03:38 | 

 只今、ロードショー中の『碁盤斬り』は落語の「柳田格之進」をベースにした作品。実直で曲がったことの嫌な浪人・格之進の囲碁の物語に、彦根藩在籍当時のストーリーを加味した話にぐっと引き込まれました。

 裏長屋で娘のお絹と貧しい暮らしを送る格之進。書や篆刻を作り売り生計を立てようとするも、お絹の縫物の手間賃の方が足しになりながら、さりとて真っすぐな性格はそのまま、囲碁と少しの酒を楽しみに長屋住まいを楽しんでいます。囲碁の対局を通して質屋の萬屋の源兵衛と親しくなったが、月見の宴を楽しむ日に萬屋の離れで二人は碁盤を挟んで対局しますが、貸していた五十両が戻り、源兵衛の手元に手代が渡すも、源兵衛が小用をした折に五十両の行方が分からなくなります。格之進が盗んだのではないかという嫌疑を萬屋はかけるも…。このあたりは落語そのものです。

 格之進が覚えのない罪をきせられた事件を理由に彦根藩を去る前、妻が琵琶湖で自死してしまったその訳も分からなかったが、当時の同僚が真相を格之進に伝えることから、仇討ちの旅に出ます。ここからが落語に付け加えられたストーリーで緊迫した場面が続きます。

 さて、囲碁を通して、人とはが語られています。「碁を打てば人間が磨かれます。自ずと気品が備わってくるものです。それが勝負の本当の目的のように思うのです。」勝ち負けに終始すれば、心が卑しくなります。「正々堂々嘘偽りなく」は今の世にも響きます。

『碁盤斬り 柳田格之進異聞』(加藤正人著、文春文庫、本体価格720円、税込792円)

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いのちのひろがり

2024-06-26 14:27:12 | 

 生命誌を提唱している中村桂子さんの思いを絵本にしています。子どもたちだけでなく大人も是非読んでもらいたいです。

 家や庭にやってくる昆虫や気持ちを和らげてくれる花々。中村さんは親愛の情を持って話しかけます。その理由を探るために、人間の祖先の旅に出かけます。その終点は一個の細胞です。私たちも母親のお腹の中で精子と受精卵からできた細胞から出発します。

 次には地球の誕生から現代に至るまでの進化の旅に出ます。地球に生存している動植物はどのように生まれてきたか?46億年の時間はとてもドラマティックです。

 最初はすべて細胞から分化していっただけの生物。仲間であることは間違いない。分け隔てなく「生」を謳歌するべきだし、それを阻害してはなりません。人間同士の争いは細胞に対して恥ずかしい行いだということは断言できます。

『いのちのひろがり』(中村桂子・文、松岡達英・絵、福音館書店、本体価格1,300円、税込価格1,430円)

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ありがとうの神様

2024-06-24 16:39:22 | 

 お亡くなりになって12年経ちますが、まだ売れ続けています。これはスタート地点が分かりやすいからだろうと思います。

 人間は「こうなりたい!」と願うものですが、いまの時点の自分をすべて受け入れて感謝の念を抱こう!~「思い通りにならなくていい」「こうなりたいという思いさえ持たなければいい」と述べてます。つまり、競争や他人との比較を避けて、「いかに喜ばれる存在になるか」に焦点を絞れと。頼まれごとは素直に実行することで、信用を得る。

 「ありがとう」を言い続けると、「ありがとう」と言いたくなる現象が引きおこるのなら、幸せにつながるということです。「不平不満」「愚痴」「泣き言」「悪口」「文句」はNG。何があっても「ありがとう」です。

『ありがとうの神様』(小林正観著、ダイヤモンド社、定価1,600円、税込1,760円)

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左脳さん、右脳さん。 あなたにも体感できる意識変容の5ステップ

2024-06-21 16:07:57 | 

 ある日突然、思考が消えて、完全なるマインドフルネスになった著者・ネドじゅんの体験談であり、意識変容への手順を説いています。これはまさに潜在意識への到達であり、その先にある全体、大自然への融合の道筋が書かれています。

 その一歩として、「呼吸」があげられています。「エレベーターの呼吸」は本当に気を静める深呼吸であり、雑念を振り払い、「過剰になった思考を収め、身体の内側の生命エネルギーと触れ合える」状態に達します。それを邪魔するのは思考です。本書では「左脳さん」こそが意地悪な存在。「右脳さん」の働きを全開にすることが幸せを導きます。

『左脳さん、右脳さん。 あなたにも体感できる意識変容の5ステップ』(ネドじゅん著、ナチュラルスピリット、本体価格1,400円、税込価格1,540円)

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きみのお金は誰のため

2024-06-21 15:25:33 | 

 「お金」の存在は有難がれるし、みんなが欲しいと思っています。その先入観を打ち砕く、「お金の教養小説」です。

 投資会社の上司から錬金術師の話を聴いてくるように言われた久能七海は、そのお屋敷の入り口を、たまたま出会った中学2年の佐久間優斗に尋ねました。案内すると土砂ぶりの雨に遭遇し、二人して屋敷に入りました。屋敷のボスは二人に「お金」について語り始めました。それは、

ーお金自体には価値がない。
ーお金で解決できる問題はない。
ーみんなでお金を貯めても意味がない。


というお金の謎を開陳。その一つ一つに、彼ら二人に問いかけながら解説を行っていきます。その内容は本書に譲り、ボスの視点は全体から俯瞰したものであり、「現在は過去の蓄積で成り立っている」や「投資によってできるのは、あくまでも未来の提案でしかない」など、自利ばかり考える人間には多くの刺激を与えてくれます。また、買い物ひとつにしても、「自分の行動の影響を理解した上で選択する」という延長線上に「街の本屋」の減少について書かれていることには驚きつつも、気にかけて下さっているのかと思えば、著者を応援したくなります。

『きみのお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と社会のしくみ』(田内学著、東洋経済新報社、本体価格1,500円、税込価格1,650円)

 

 

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元気じゃないけど、悪くない

2024-06-17 17:26:45 | 

 著者の旦那さんが私の高校時代の同級生と酔っぱらって当店にお越しになられた。これも出会いです。そこで「嫁の本です。」と紹介してもらいました。読まんと申し訳ない。

 2020年初夏を過ぎ、心身の調子を崩され、にっちもさっちもいかない。更年期か、はたまた身体のどこかに変調をきたしているのか、病院嫌いな私からは考えられないほどの各専門医院へ通院され、また、心の変調には読書からオンラインでのコミュニケーションや講座視聴まで、元気になるまでの遍歴を記録されています。一番つらかったであろう「めまい」の原因究明には読者の一人として拍手を送りました。

 もちろん、健康第一です。その上で何事もケセラセラで、なるようにしかならないという「ええかげん」な心持の人の方が生きやすいかなぁ~と感じました。また、「HELP!」と叫べる人間関係を築いておかないとあきませんね。その意味でも、健康な時には「喜ばせる」存在になりたいですね。

 私は悩まない質ですので、本書に参考文献として書かれている本たちに興味をそそられます。これまで手を伸ばさなかった分野ですもの。

『元気じゃないけど、悪くない』(青山ゆみこ著、ミシマ社、本体価格1,900円、税込価格2,090円)

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ぼくは古典を読み続ける 珠玉の5冊を堪能する

2024-06-17 14:31:00 | 

 著者は古典を読む3つの理由を教えてくれます。

 ひとつは「世界がわかる」こと。「人類が過去に残してきた記録」を知り、今にどう活かすかが大切です。
 それに「楽しい人生になる」ということ。過去の多くの知識を基に考えることが「楽しい人生」につながります。
 最後は「世界とつながる」ことができます。古典は全世界で読まれています。同じ話題でコミュニケーションが生まれます。

 本書では、『種の起源』『ソクラテスの弁明』『地底旅行』『市民政府論』『歎異抄』の書かれた裏側とその本の重要性を懇切丁寧に書いてくれています。バックグラウンドを知れば、それぞれの古典に対してより深く興味を持つことが出来ます。

 また、Q&A方式で、古典への向き合い方やこの5冊への質問、読書論など、読書の世界を広げてくれています。

『ぼくは古典を読み続ける 珠玉の5冊を堪能する』(出口治明著、光文社、本体価格1,600円、税込価格1,760円)

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軽量登山入門

2024-06-11 15:40:41 | 

 荷物が重いとつらいし、事故にもつながります。軽量化し「快適」に歩くことを主眼に置くと、危険につながるのではないかという懸念もありますが、そこは明確な視点を持って軽量化を提案されています。つまり、

 「死なないために持つべき装備」と「快適のためだけに持っていってしまっている装備」の仕分け

こそが重要であり、「死なないために持つべき装備」は削らず、どれだけ軽量化できるかです。本書には軽量化への細かい提案や指摘があり、著者の1泊2日の山行装備の総合計重量が3.8㎏とは驚きです。ザックは749gって、私のそれの半分程度です。無事に戻ってくるためにも熟読します。

『軽量登山入門』(栗山祐哉著、Gakken、本体価格1,600円、税込価格1,760円)

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老いの品格 品よく、賢く、おもしろく

2024-06-10 15:35:55 | 

 老年精神医学の観点から高齢者を35年間診てきた著者がなりたい老人像は、「品よく、賢く、おもしろく」をもった人です。老いと闘える間は闘い抜きながらも、「できなくなっても、できることを活かしていく」、つまりは「じたばたしない」~素直になるということでしょう。あるがままを受け入れる心根が必要です。ここまでが品よくです。

 賢い人とは、「自分の考えをアウトプットする」、そのためにはインプットが必要になります。そして、「その人のもつ人生哲学や経験が人間的な『深み』や『幅』につながっているか」がキーになるかと思います。

  おもしろい人はいくつになっても好かれます。著者は高田純次推しです。

 あんな人のようになりたいというモデルをもてばいいのかなぁと思います。

『老いの品格 品よく、賢く、おもしろく』(和田秀樹著、PHP新書、本体価格930円、税込価格1,029円)



 

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