あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

城を噛ませた男

2014-03-23 15:30:10 | 

 久しぶりに歴史小説を読みました。前々から気になっていた、伊東潤氏の『城を噛ませた男』が文庫化したので、手に取ってみました。

 表題を含め、戦国を舞台にした短篇5作品はどれも大変面白い題材で、登場人物が生き生きと表現されていました。下剋上で、生きるか死ぬか、そして、一つの行動が吉と出るか凶と出るかの状況下で、自分の持てる力を存分に発揮する姿は、それが死につながろうとも美しいものです。

 私は、『鯨のくる城』に描かれていた、小田原・北条の水軍の一派である鯨漁師の軍団が素敵だと思いました。数で圧倒的優位に立つ豊臣水軍に対し、手も足も出ない北条方の中にあって、この鯨漁師が一泡喰らわしてくれます。知恵を磨き、鯨を味方に付けての大胆な行動は、読み手の胸をスッキリしてくれます。

 2012年『国を蹴った男』で第34回吉川英治文学新人賞を、そして、昨年には『巨鯨の海』で第4回山田風太郎賞を受賞した伊東潤氏の、他の作品を読みましょう!

 『城を噛ませた男』(伊東潤著、光文社文庫、本体価格660円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二宮金次郎に学ぶ生き方

2014-03-15 16:56:44 | 

  二宮尊徳の教えは現代にも通じます。それは彼が経営者であったし、多くの地域再生事業に携わったからでしょう。二宮金次郎七代目子孫の中桐さんは二宮金次郎の「水車」の話をまことにわかりやすく説明してくれています。

 水車は水の力で動きます。水中では水の流れに逆らわず、水の流れと同方向に動きます。つまり、現状の真っただ中に我が身を置き、その状況をよく観察する、知ることを促しています。

 水から空中(水面上)に上昇すると、川の流れとは反対方向に動き、「逆らう」のです。ここでは、「知恵を絞り、技術を駆使し、工夫すること」、つまりは「実践すること」につながります。

 置かれている環境に逆らわず(愚痴など言わずに)、いかに自分の力を発揮するかが、金次郎の真骨頂でしょう。

 「川という現実にまっすぐに飛び込むことで徳に出会い、知恵とパワーを手に入れ、次にはこの大いなる川の流れから這い出し、川に『逆らう』ことに向かう。」 時代の流れに流されるだけではなく、自分の心眼を磨き、いまここで何ができるか懸命に考え、実践する姿勢が問われています。

 『二宮金次郎に学ぶ生き方』(中桐万里子著、致知出版社、本体価格1500円) 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人生を癒す百歳の禅語

2014-03-11 15:35:00 | 

 101歳まで生きられた禅僧・松原泰道和尚による禅語の解釈は非常にわかりやすい!

 まずは、「禅」とは?からスタート!「禅」とは「心を安定する」という意味があって、人の心をいかに自分のコントロール下に置くかが重要です。人には煩悩が必ずありますが、「煩悩のマイナス価値をコントロールしてプラスにしていく」ことをマスターしていくことですね。『退歩で学べ』で教えられたように、「悪を無記に善に転ずる」という視点、物事の本質を捉えることが必要です。

 そのためには「自分の心中の受信装置」、つまり、「自分の心の中の感受性」を高めていくことを説いておられます。例えば、禅語の「眼横鼻直(げんのうびちょく)」は「眼は横に、鼻は縦についている」という当たり前のことですが、この当たり前を凝視すると、違う地平が開けてくる。よく考える姿勢、習慣を持てば、眼や鼻の機能、そして、それらにも仏性があることまでわかってきます。

 松原和尚によれば、考えるためには「読書」はなくてはならないと書かれています。「読書をしてものを考えれば、謙虚にならざるをえない」とまで言っておられます。

 『人生を癒す百歳の禅語』(松原泰道著、致知出版社、本体価格1600円) 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

囚われない練習

2014-03-03 16:40:08 | 

  中曽根康弘、安倍晋三、石破茂などの政権トップが参禅に訪れる、東京都台東区にある全生庵の平井正修住職による一冊。全生庵は、幕末の三舟の一人、山岡鉄舟による創建による臨済宗のお寺。その七世重職による、、禅語を紹介しながら生き方を述べる、優しくも厳しいコラムです。

  四十八の禅語が取り上げられ、その言葉から、仕事、人間関係、物質的な豊かさ、健康・身体、そして、自分らしく生きる術について語られています。私が一番印象に残ったのは

 「啐啄同時

です。「啐」とは、卵の中にいるヒナ鳥が内側から殻をつつくこと。「啄」は親鳥が卵の外側からつつくことです。同時につついたときに、殻は初めて割れ、ヒナ鳥は誕生します。上司と部下の関係に置き換えれば、上司が部下の成長を見逃さず、絶妙のタイミングで援助してあげる、それまではただただ「待つ」だけです。上司がしたら速いのは当然ですが、待つ忍耐こそが部下の成長を促します。これがなかなかできません。このような場面に出くわした、「啐啄同時」と口ずさめるようにします。

 禅語は生きる上での、本当に奥深い、心の叫びだと思います。

『囚われない練習 人生を変える禅の教え』(平井正修著、宝島社、本体価格1500円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする