あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

「幸せ」について知っておきたい5つのこと

2015-01-25 17:04:48 | 

  『幸福学』という学問の範疇が心理学や経済学、社会学から生まれています。心理学においてもどちらかと言えば、ネガティブな心理を研究していましたが、ポジティブな心理学こそが人が生きていく上で大切なこと、また、グローバル経済下においても人が幸せに暮していく上でいかに考えていけばよいか、そして、人間関係の構築次第で幸福感が変わることなどの研究結果が新しい領域を拓いています。

  本書は、NHK「幸福学」白熱教室の内容を書籍化したものですが、「幸せのレシピ」を解き明かしてくれます。それは、

 「人との交わり(social)・親切(kind)・ここにいること(present)」

の3つが大切な条件になります。つまり、「人との結びつきの強さ」、「人への親切な行動と人やモノへの感謝」、「目の前のことに集中する」ことが大前提になります。

 その上で、幸せになるための収入金額やお金の使い方、仕事と仕事の関係、挫折や逆境からの立ち直り方、そして、最後に人間関係の築き方と幸せの相関について、多くの知見をもとに書かれています。読めば想定と違うと思いますが、これでこそ人間なんだと感じること必至です。

 本書に合わせて、『幸せのメカニズム』(前野隆司著、講談社現代新書、本体価格800円)、『ごきげんな人は10年長生きできる ポジティブ心理学入門』(坪田一男著、文春新書、本体価格720円)、『幸運と不運には法則がある』(宮永博史著、講談社+α新書、本体価格933円)も併せて読んで頂けると、「幸福学」は深まります。

『「幸せ」について知っておきたい5つのこと NHK「幸福学」白熱教室』(NHK「幸福学」白熱教室制作班、エリザベス・ダン、ロバート・ビスワス=ディーナー共著、KADOKAWA,本体価格1,500円)

 

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新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方

2015-01-22 16:14:02 | 

 イスラム国で邦人が人質になり、日本国に対して身代金を要求する事態になりました。私たちは新聞や雑誌、ネットでの情報で世界の情勢を知りはしていますが、インテリジェンスとしての活用をしていないため、記事の渦に呑まれるばかりです。池上彰さんと佐藤優さんの二人のプロに教えを乞い、いかに情報を活用すれば良いかが書かれたのが本書です。

 書名の通り、世界は常に戦争への危険に満ちています。日本は大変に平和な国であることは、日本人にとってはとても誇らしいですが、平和だからこそ、世界の喫緊の情報を知っておく必要があります。それでは、どのように情報に触れればよいか。

 まずは、『民族と宗教を勉強しよう』 ~ 日本人は単一民族の国を維持し、島国で他民族が押し寄せるのには困難であり、宗教にも寛容なアニミズムの持ち主ですので、民族と宗教に疎いですが、これが第一関門になります。この第一関門に深く関係しているのが『歴史』です。民族として過去を引きずって現在を生きている以上、これを押さえておかなければなりません。これらを知るには、関連する書籍の力を借りなければなりません。

 そして、お二人の情報源は新聞、公式筋のネットですが、特に興味深く読んだのが、「国際面のベタ記事」を無視せず、「それを読んで、あとは自分なりに推理したり、他の情報と照らし合わせてみたりして、何かが見えてくる」ことを実践されています。

 最後に、戦争論の必要性について、池上さんが気になることを言っています。それは、

「それぞれの国にとっての『過去の栄光を再び求める動き』が剥き出しに出てきている」

状況になっていることです。中国の海洋進出は明の鄭和の大航海を彷彿とさせ、イスラム国はイスラム王朝の復活を目指しているのが好例です。安倍首相の「積極的平和主義」もいつぞの日本の栄光なのでしょうか?

 とにかく、ボゥーと情報に接するのではなく、自らの頭の編集能力を駆使して、インテリジェンスに高める習慣が仕事にも活きてくるはずです。


『新・戦争論  僕らのインテリジェンスの磨き方』(池上彰・佐藤優共著、文春新書、本体価格830円)

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仕事に効く 教養としての「世界史」

2015-01-19 16:39:46 | 

 著者の出口治明さんは、幼少の頃から本に親しみ、何がお土産にしたら良いかと問われたら、「本」という一文字で済んでいたということは、『本の「使い方」』に書かれています。

 その出口さんの好きなジャンルの一つである世界史を、今まで読んできた書籍、そして、現地に訪れて見聞したことを1冊にまとめたのが本書です。

 クール・ジャパンと日本の独自の文化に世界から注目が集まる中、日本の歴史についても認識を求められます。しかし、日本の歴史は日本だけで進むことはなく、世界の影響を受けたうえでの日本の歴史の歩みとなります。そのためにも、世界の歴史の流れを知ることは必要不可欠です。本書を読んで、そのことの重要性を再確認しただけでなく、世界史の大きな流れを知りました。それは、

 「過去の歴史を、GDP人口気候変動という視点から見つめ直すこと」

です。国には盛衰があり、それは経済が関係していること、また、異民族の侵入によって、民族の大移動や国の形が変わること、また、それらに一番影響を与えているのが気象の変動であることは洋の東西に関係なく起こっています。

 出口さんの提示する、世界と日本を理解する世界史10の視点はあなたの頭をリフレッシュしてくれます。

 『仕事に効く 教養としての「世界史」 』(出口治明著、祥伝社、本体価格1,750円)

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ブログ紹介棚

2015-01-13 17:06:56 | お店

  昨年11月4日の投稿への、ぽんぽこさんのコメント

 「店頭にブログで紹介された本をまとめたコーナーがあると助かります。」

というご意見を実現することができました。年末を迎えることもあり、棚の移動は難しかったのですが、1月4日に棚を移動して、ブログ紹介書籍コーナーを本日開設しました。

 場所は店奥の事務所入口前、北に向かっていただけると正面一番上の棚です。現在は、昨日投稿した『依存症ビジネス』を含めて7点を展示しております。

 ぽんぽこさん、ありがとうございました。

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依存症ビジネス

2015-01-12 10:51:50 | 

  新年の初売セールの日、神戸・元町を歩きましたが、複数(7~8個)の大丸のショッピングバックを持った人と多くすれ違いました。お買い得なのは理解できますが、本当に欲しいものなのかなぁと感じつつ、「依存症」のことを考えてしまいました。というのも、現在の依存症はひょっとしたら誰もが罹患しているのではないか。iPhone、スイーツ(砂糖)、麻薬、危険ドラッグ、処方箋薬、お酒、SNS、買い物、ゲーム、ギャンブル、オンラインポルノと、多種多様なものが手の届くところに入手可能な状態で存在し、私たちを誘惑しています。

 これらを依存しているとき、脳内には快楽物質のドーパミンが満ち溢れているらしい。「ドーパミンは『好き(嗜好 liking)」という衝動よりも、『欲しい(希求 wanting)』という衝動のほうに深くかかわっている」のだから、さらに求める行動へ移るのでしょう。そして、恐れるべきことは、「依存症の力学とと自由市場の力学には、あまりにも共通点がありすぎる」という分析です。ストレス社会の下、人々は意志力を弱め、逆に企業は人の心理を読み、さらには依存症の専門知識を学習、応用し、ビジネスに取り組む構図が描かれています。

 新年2日に取り上げた、『資本主義の終焉と歴史の危機』では、経済は成長を目指すため、新しい市場を求め、スピードを競う。それも征服してしまうと、現在の顧客にさらに購入してもらう方向に進む。そして、依存症は発生すると考えるのも不思議ではないのかもしれません。人は信念を持って、常にシンプルを目指さなければ、消費経済の渦に巻き込まれるでしょう。

『依存症ビジネス 「廃人」製造社会の真実』(デイミアン・トンプソン著、中里京子訳、ダイヤモンド社、本体価格1,700円)

 

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自分のアタマで考えよう

2015-01-03 13:31:49 | 

 3年前の本ですので、既にお読みの方も居られるでしょう。昨年12月21日に投稿した、『本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法』(出口治明著、角川oneテーマ21、本体価格800円)に本書が紹介されていたので読んでみました。

 私もうちのスタッフに「自分で考えや!」と言う手前、どのように考えるのかを学ばないといけないなぁと以前から感じていました。著者・ちきりんさんの「独自の視点を生み出す源となっている『思考の方法論』」を知ることによって、ズバッと視界が開けました。「情報に対して、どのように自分のアンテナでキャッチし、取り入れ、それをどのような筋道で加工・分析しているのか」を11の考え方でまとめています。

 その中で、私が特に注目したのが情報に対する習慣です。

 ● 情報に対して、「なぜ?」(情報の背景を知る)と「だからなんなの?」(過去の結果による情報から次に何が起こるか、それへの対応策は?)

 ● 縦と横に比べてみよう → 縦は「時系列比較」=歴史的観点を働かせる 横は「他者との比較」 もちろん、比較の対象、項目を選択してからです。

 ● 情報に対して、「フィルター」が大事 自分の独自のユニークなフィルターを見い出し、それで勝負する

 独自の思考法と言っても、それは情報への対応能力であり、情報にどう向き合うかの習慣が付いているかどうかに寄るでしょうね。自分の明確な方法を体得する必要を感じました。そのためにも11の思考法を毎度活用したいなぁと思います。

『自分のアタマで考えよう  「知識」にだまされない「思考」の技術』(ちきりん著、ダイヤモンド社、本体価格1,400円)

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『資本主義の終焉と歴史の危機』

2015-01-02 11:53:22 | 

  慌ただしい年の瀬に衆議院議員のアベノミクス選挙があり、「景気回復、この道しかない」というキャッチフレーズの安倍自民党は圧勝しました。他の道は本当にないのか?と思いながら投票しました。グローバル経済の進展で息苦しさばかりが募るのは私だけではないでしょう。本書を読めば、別の道も考えないと大変になるのではと思いましたし、そのためにもしっかり読んで考える日本人が増えなければなりません。

  現在の社会と経済の状況、特に短期金利のゼロ金利状況を過去の歴史に顧みると、「長い16世紀」に同じことが起きています。経済の低迷のために、利子率=利潤率2%以下の政策をイタリア・ジェノヴァが取ることにより、「陸の国」スペイン帝国の中世封建国家から、覇権が移動した「海の国」イギリスは、大航海時代の恩恵を受け、新しい市場であるインドの地理的「空間」を開拓し、好況をもたらしました。

  それでは、ゼロ金利、デフレの現代は、BRICSの新市場が開け、アメリカのIT・金融革命、イギリスの金融革命が出現し、国民国家の経済から世界を一つの市場とするグローバル経済の展開が進みましたが、バブルが弾け、世界が一瞬にダメージを受け、新しく開拓できる「空間」がほぼない状態に陥っています。これが「資本主義の終焉」と呼ばれる所以です。また、「決定権は市場が握る」とする資本が国家を動かすことになり、国家は主導権を譲り渡すことになりました。厚く存在した中間層は没落し、一部の富者と、幸せの感じることのできない大多数の貧者が生まれています。平等が維持できず、民主主義の危機が迫っています。

  終焉期を迎えた資本主義をいかにランディングさせるか?このままで進むと、過剰生産能力を抱えた中国でのバブル発生が全世界をブラックに染める可能性が高く、資本主義の暴走に歯止めをかける必要が生じます。

  資本主義経済体制よりも守るべきは市民社会、国民主権、民主主義であるとするならば、強欲なグローバル資本主義を捨て、循環型の脱成長社会を目指す道を探るべきであると締めくくっています。

  グローバル経済は強者と弱者の二者を作り、弱者を徹底的に打ちのめす、すなわち、「強者であらずんば」と宣言する平家の如くであります。ここは東洋の思想を付加し、二元共存できる社会を創出する手引きを、「地域」から見出さなければならないと思います。

 『資本主義の終焉と歴史の危機』(水野和夫著、集英社新書、本体価格740円)

 

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