あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

よっぽどの縁ですね

2017-06-20 14:30:57 | 

 奈良で有名なお坊さんと言えば、薬師寺の高田好胤さん。生前にはテレビにも多く出演されていました。その高田好胤さんにスカウトされた、東京都江東区、浄土宗重願寺の次男坊だった大谷徹奘・薬師寺副執事長は年間400回の講演を全国で行われておられます。その「心の授業」を活字化した書籍は、仏の道に従った、幸せへの道筋を著しています。

 お寺での教科書であるお経には「人生の歩き方」が説かれています。幸せの定義は

「身心安楽(しんじんあんらく)」

と述べられています。「身」には五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)があり、それらは外の刺激に反応します。その反応の仕方はもっと欲しいという欲望であったり、他と比較して自分には不足しているという気持ちを抱いてしまします。しかしながら、これでは「心」が落ち着かず、自分の精神の世界を静めるには

「与えられたものを受け止める心」「いまここに満足する心」

を持てば良い。そうすれば、身も心も安らかに、楽になるわけです。

 幸福感を持てるには自分の人間関係が良好であれば問題はありませんが、個々に価値観が違うためになかなか納得できる関係を築けません。そこでお経から導き出した平和の言葉が、書名にもなっている

「よっぽどの縁」

です。「歓宿縁」(宿っている縁を歓べ)や「百千万劫難遭遇」(ありえないような出会い)という経文から、どんなに嫌な人間との関係も引き受けろという教えに只々平伏すしかありません。そのためにも、「自分で自分の心に目覚める」という「自覚悟」の悟りを持つことが大切になります。非常にシンプルな幸福へのステップを、我々も踏んでいきましょう!

『よっぽどの縁ですね 』(大谷徹奘著、小学館、本体価格1,204円)

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閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済

2017-06-18 15:12:46 | 

 日本国は成長戦略を推進し、日銀は量的緩和、マイナス金利にし、デフレ回避、失われた20年を打破しようとしています。しかし、経済が回復した実感は感じられず、この成長教を信じていいのかわかりません。

 近代を支えてきた資本主義は「蒐集」をすることにより成り立つ仕組みであり、周辺から中心へ富を集める形で発展してきました。そのモットーは

「より遠く、より速く、より合理的に」

であり、オランダ、イギリス、そしてアメリカのような海へ活路を見い出す資本帝国です。市場がアフリカにまで到達し、フォロンティアがなくなると、電子・金融空間を生み出し、投機マネーとデジタルの市場で圧倒し、グローバリゼーションを促進させました。さらには、同国民を中心と周辺と分け、格差をつくることで富の集中をしてきました。

 しかしながら、成長することが是である資本主義自体が低、あるいはマイナス成長を示し、ドイツや日本のようにマイナス金利を取らざるおえない体制になっています。日本はアメリカ従属の成長策を選択する一方、ドイツはEUという一つの経済圏を生み出し、一つの経済圏を生み出し、

「より近く、よりゆっくり、より寛容に」

を目指す、「閉じた帝国」へ歩んでいます。つまり、富の自己増殖も無理であるから、「定常」な「一定の経済圏で自給体制をつくり、その外に富(資本)や財が出ていかないようにすること」が求められます。

 地域の商店街でも、個人経営の店が減り、大型店やチェーン店が増えています。地域で富が循環する仕組みであれば、その地域人の多くは幸せに暮らせるでしょうが、富が外(日本であれば、本社の多い東京や、amazonであればアメリカのシアトル)へ流れ、たぶん2度と帰ってきません。その意味でも「閉じる」意味は大いにあるでしょう。これぞ、ローカル化でしょう。「より寛容」になれば、宗教上の戦いもなくなるでしょうし、全人類が地球人として生きる思いが大切だと思います。

『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(水野和夫著、集英社新書、本体価格780円)

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日本一めんどくさい幼稚園

2017-06-14 15:39:25 | 

 『ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか? 不便益という発想』(川上浩司著、インプレス、本体価格1,500円)

http://blog.goo.ne.jp/idomori28/e/25de720a3f261068d7e403d5f385a26b

同様、書名からして「めんどくさい」幼稚園になんか不人気に違いないと思いきや、4000人超を卒業させた、20年もの実践保育で、子供の成長のためにをモットーにして、「めんどくさい」ことを丁寧に行っています。

 脳科学の知見をベースに、脳の発達段階に従った保育をし、、「目に見えない根っこを太らせる教育」を行っています。その根っことは、

「困難なことでも挑戦できる」「努力し続けられる」「最後までやり抜ける」

という認知できないものです。年少では、自分で食事、着替え、トイレができるように、「身辺自立」を目指し、年中では、「努力すれば結果が出る」ことを知るために、4段の縦の跳び箱に挑戦させます。年長では自己肯定感を高め、主体性を育て、自分で考え、課題に対して、仲間と相談し、決定できる所を成長の着地点にしています。年長のレベルは会社での人材育成に匹敵し、めんどくさいことをやることが将来の自分の姿を形作っていきます。

 人間の心を育てることはやんごとなきことであり、近道はありません。神戸の国民教育の師・森信三先生が、「教育とは流れる川に字を書くようなもの」とおっしゃているように、教育者や親がめんどくさいと諦めるのは簡単ですが、子どもの未来にはつながりません。

『日本一めんどくさい幼稚園』(原田小夜子〔武蔵野幼稚園・柚木武蔵野幼稚園 園長〕著、三五館、本体価格1,300円)

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青虫は一度溶けて蝶になる

2017-06-08 16:36:53 | 

  「仏教的人生学科 一照研究室」での、藤田一照和尚のお話を、研究生徒の一人の桜井肖典さんが導いていく書籍。禅の難しい言葉は使っていませんが、藤田和尚の言葉が哲学的で理解しにくい部分もありますが、禅的に見た生き方を説いています。

 人生の質的変化を求めるには、

「パラダイム(認識の基本的枠組み)」を変化すべき

と考えています。そのパラダイムとは「僕らの人生を駆動するOS(オペレーティングシステム)」であり、「知らず知らずのうちに生きる土台にしてしまっているようなfundamentalな部分に対して、シャープな問題意識を持つ」ことを提案しています。そろばんで言う、「ご破算で願いましては…」という感覚で、既存の自身の認識の仕方をゼロベースにするわけです。

  それをなぜすべきか?無垢のままで生まれた人間は、人間だけが使用する言葉の意味に執着したり、生きる社会や成長する段階で受けた教育で画一的に成り下がっている可能性が高い。特に、現代では「アメリカンファースト」というような、ベクトルが自分へ向くばかりで、なかなか社会や自然全体へ目を向けることがしづらい状況になっています。

  これを藤田和尚は解りやすく表現しています。

I の OS から We の OS への変換
「分離」 から 「つながり」への変換

つまり、「『分断』ではなくて、『つながり』のヴィジョンを持って生きていくこと。それをあなたの人生というフィールドで、あなただけのやり方でやっていくこと」です。

  青虫が蝶になるには脱皮という過程を通ります。幸せに生きるには、我々人間も精神的に脱皮が必要であり、その手立てに禅を用いよというススメです。

『青虫は一度溶けて蝶になる 私・世界・人生のパラダイムシフト』(藤田一照・桜井肖典・小出遥子著、春秋社、本体価格1,600円)

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好きなことだけで生きていく。

2017-06-04 08:02:39 | 

  本書の「おわりに」にご自身で書かれている、メディアの彼へのイメージである「金の亡者」「超合理主義」「えらそう・威圧的」に侵されていた私もホリエモンの本は食わず嫌い状態でした。しかし、今回、本書を読んでみて、彼の主張は私の考えに近いことに気付きました。

 書名からして、「そんなこと無理!」と端から思っている人も多いことでしょう。けれども、そうして生きていかないと人生ハッピーになれない環境がもうそこまできています。それは

人工知能、AIの進歩

です。つまり、人間の行うことは人工知能に置き換わっていく時代がひたひたと近づいています。「あらゆる分野において皆さんの想像以上のスピードでテクノロジーが発達し、(中略)これまで普通にあった職業がなくなる。」からこそ、「個人がそれぞれ自分の頭で考えて生き抜いていかなければならない時代」です。人と同じことや使われることで稼ぎを得ていることから脱却すべし!ならば、自分が好きなことに有限な自身の時間を集中せよ!という結論に落ち着きます。

 では、どのようにすればよいか?これにホリエモンは3つのステップがあると述べています。

①作業にはまる
②思いを持って毎日発信する
③油断しない

 その上で、「地道な努力だけでは足りない」から、「どこかでトリッキーな行動を起こしたり、極端なアイデアを発信したり、人とは違うことをしないといけない」と忠告しています。注目してもらえるための行動をしなければ、努力の虫にだけで終わる残念な結果しか生まれません。

 AI時代には誰もが自立の道を歩まなければ生きていけない。その突破口を開く一助に本書はなるでしょう。

『好きなことだけで生きていく。』(堀江貴文著、ポプラ新書、本体価格800円)

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