四書五経の一つ、易経はたいへん興味深い教えであることがわかりました。
小学5年生の乾太(けんた)は、夏休みの宿題の作文「将来の夢」が書けずに困っていたとき、おじいちゃんがくれた『易経』の本を開いてみたら、突然、龍の世界へ導かれ、易経の教えの通り、夢を育み始めます。物語を読み進めると、易経の龍の教えを紹介、子どもが夢を持ち、夢に向かう人間の成長、また生き方において、非常に示唆に富んでいることがわかります。
龍は天に登って雲を呼び、大地に恵みの雨を降らせ、動植物にはなくてはならない存在と考えられています。すべての生き物に役立つことを夢見る龍は力を蓄えるために、深い水の奥に潜み隠れる「潜龍(せんりゅう)」から、目の見えるようになった「見龍(けんりゅう)」となります。「見龍」は師匠である「飛龍(ひりゅう)」の教えを乞い、師匠の真似をすることで成長し、夢への階段を一歩登ります。そして、前へ進む「乾」と、反省する「惕」の文字からなる「乾惕(けんてき)」になると、師匠から離れ、自ら学びます。失敗が先生であり、成功しても「惕」を忘れません。次に、「飛龍」になるため、跳躍を試す「躍龍(やくりゅう)」に進みます。ここで失敗を繰り返しても、自分の志を強く持ち、人のためになりたいという欲望が「飛龍」へ導きます。「飛龍」は自分以外のすべてが先生であり、役立つ存在かどうかが自身の指標であり、夢を叶え続けるためには、雲という仲間が必要になってきます。
この成長論は自分だけでなく、人材育成においても、かなり重要な教えです。謙虚に学びたい。
『易経 夢をもつってどういうこと? 陽の巻』(竹村亞希子・都築佳つ良著、新泉社、本体価格1,800円)