あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

易経 夢をもつってどういうこと? 陽の巻

2020-03-31 14:39:50 | 

    四書五経の一つ、易経はたいへん興味深い教えであることがわかりました。

 小学5年生の乾太(けんた)は、夏休みの宿題の作文「将来の夢」が書けずに困っていたとき、おじいちゃんがくれた『易経』の本を開いてみたら、突然、龍の世界へ導かれ、易経の教えの通り、夢を育み始めます。物語を読み進めると、易経の龍の教えを紹介、子どもが夢を持ち、夢に向かう人間の成長、また生き方において、非常に示唆に富んでいることがわかります。

 龍は天に登って雲を呼び、大地に恵みの雨を降らせ、動植物にはなくてはならない存在と考えられています。すべての生き物に役立つことを夢見る龍は力を蓄えるために、深い水の奥に潜み隠れる「潜龍(せんりゅう)」から、目の見えるようになった「見龍(けんりゅう)」となります。「見龍」は師匠である「飛龍(ひりゅう)」の教えを乞い、師匠の真似をすることで成長し、夢への階段を一歩登ります。そして、前へ進む「乾」と、反省する「惕」の文字からなる「乾惕(けんてき)」になると、師匠から離れ、自ら学びます。失敗が先生であり、成功しても「惕」を忘れません。次に、「飛龍」になるため、跳躍を試す「躍龍(やくりゅう)」に進みます。ここで失敗を繰り返しても、自分の志を強く持ち、人のためになりたいという欲望が「飛龍」へ導きます。「飛龍」は自分以外のすべてが先生であり、役立つ存在かどうかが自身の指標であり、夢を叶え続けるためには、雲という仲間が必要になってきます。

 この成長論は自分だけでなく、人材育成においても、かなり重要な教えです。謙虚に学びたい。

『易経 夢をもつってどういうこと? 陽の巻』(竹村亞希子・都築佳つ良著、新泉社、本体価格1,800円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

下山の時代を生きる

2020-03-30 11:44:22 | 

   世界はグローバル化、そして、アメリカ中心の思考、つまりは単一的なものさしで計られてきました。しかし、その反動はコロナウィルスの世界的な、しかも瞬時の広がりかもしれません。

 しかし、コロナウィルス感染拡大のため、結果的になった人的な鎖国。また、地球環境問題からも、エネルギー多消費では地球を維持出来かねないため、地産地消、物的にも鎖国が良いと提唱している鈴木孝夫先生。また、「現代口語演劇理論」を生み、演劇の観点から欧米が優れ、日本が劣っていることは決してないと談じる平田オリザ。この二人による対談は、これからの日本のベクトルを示唆してくれます。

 地球的規模の課題の解決には、勝敗を決する二元論ではなく、すべてが協調的で生かされる反二元論が必要です。そこで活きるのが日本文化であり、日本の思考法、つまり、アニミズムの精神です。また、日本語を使うと、外国人は優しくなる傾向があり、それを「タタミゼ効果」と言い、そのためにも日本語を広め、国連の公用語にすることが大切と説かれています。そのためにも、日本の良さの発信力が問われます。

 また、日本憲法論は、第二次世界大戦後の戦争放棄から、日本なら出来る、地球を救う、「地救原理主義」に立脚して改憲すれば、世界から尊敬されるはずとはとても挑戦的でありながらも、頼もしい。

『下山の時代を生きる』(鈴木孝夫・平田オリザ著、平凡社新書、本体価格740円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

漆の実のみのる国

2020-03-20 16:34:52 | 

 代表的日本人の一人、ケネディ大統領が尊敬した政治家、上杉鷹山。山形県の同郷である藤沢周平氏による鷹山の姿は美しい孤高の人です。上杉米沢から見れば極小藩の日向高鍋藩の次男坊から、財政難の極貧藩の藩主になり、「領民と苦楽をともにする身構え」を保持しつつ、改革を推し進めましたが、なかなか改善ははかどらない。なおかつ、次々に引き起る天災に疲弊をするばかり。しかし、「人間的なあたたか味を重視した施策」「人間を重視する藩政」は他藩主からも評価されました。そこには「道義の道」が息づいていました。

 彼の未達だった改革の道筋は、仕事に結びつくものが多い。

 「農は国の基本だが、農中心の藩経営はもはや成り立たなくなった。外から資金を導入して、産業をおこす、そういう時代になったのである。」

 「農」を「本」と変えれば、まさに井戸書店にも適用することは間違いなし。鷹山は米だけでなく、漆、桑、楮を植樹して、国力を向上させようとしながら、特に高値で売買される漆の実のみのる国を目指すことが本書の書名になったのでしょう。不易流行はいつも必要です。

『漆の実のみのる国』(藤沢周平著、文春文庫、本体価格上巻550円、下巻560円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本屋を守れ

2020-03-17 16:18:11 | 

 藤原正彦さんの読書論であり、教育論でもあり、日本人論にも当たります。

 今回突き刺さった言葉は、「初等教育の目的はただ一つ、『自ら本に手を伸ばす子供を育てること』しかない。」としていること。実際には、デジタルへの誘惑だけでなく、実際にスマホに触れ、教科書もデジタル化への道を進もうとしています。デジタルはツールであり、本質はアナログにあり、デジタルを使用することでの便利さとの引き換えに、人間としての資質を損なう可能性が高い。「本への愛着を破壊する教育は、まさに亡国の政策」とまで断じています。

 本屋は守られる存在になるのではなく、資源の乏しい日本では唯一の資源である日本人が高い人間力を保つためには読書しかない、だから、本屋は必要であるになってほしい。

『本屋を守れ 読書とは国力』(藤原正彦著、PHP新書、本体価格900円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする