あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

人生100年の習慣

2018-12-31 11:16:48 | 

 「世の中、人生100年なんてまだまだ」と思っていましたが、私の親父が88歳やし、先日は93歳の女性が3年日記を購入するのだから、100歳の方がこれからは珍しくなくなるかもしれません。100歳以上の方を、「センテナリアン」と呼ぶそうですが、彼らの長生きの要因は何かを探ったのが本書。100歳を目指す人は必読です。

 最大の要因は「慢性炎症」の多寡。細胞の老化により、細胞分裂を停止したものは人体にとってはゴミと化しますが、体内の免疫機能が働いて、体外へ除去されます。この除去する能力が低下すると、ゴミは蓄積され、加齢性疾患、例えば、認知症、糖尿病、がん、動脈硬化、パーキンソン病などを引き起こします。この「慢性炎症」の予防には、適切な「食事と運動」が欠かせません。

 食事は、これはその住む場所により異なりますが、日本人であれば、1975年の頃の日本食が良いとされています。そして、「腹八分目」、「動物性蛋白質」は不可欠です。

 運動に関しては、老化予防のための運動であれば、ストレスを感じてしまうので、できるだけ、その日の日課として、家事や仕事など、他人のためになる、楽しいことで体を動かす、さらには少々の負荷を自分の身体に課すことが重要です。

 寿命は遺伝であると言われますが、生活環境の方が大きく作用し、もっと大事なことは、その人の「心のありよう」としています。「『健康で長生きすること』と、『良い感情を抱いたり、人生の目的や意義を意識する』には相関関係がある」のですから、長い人生を送ることは心を満たすことが基本です。「老年的超越」と呼ばれる、センテナリアンの心理的特徴は、次のようなようなものがあります。

 「よいことがあるのは、ほかの人のおかげ」
 「周りの人の支えがあるからこそ私は生きている」
 「私は生かされている」
 「過去にはこだわらない」
 「自分の人生の意義はある」 
 「できないことや細かいことにくよくよしない」
 「昔より思いやりが深くなった」

と、まさに「おかげさま精神」「無為自然」「利他的」が発揮されています。禅的、老子的と言ってもいいでしょう。「超越」できる心こそ、培っていかなければなりません。

『百寿者の健康の秘密がわかった 人生100年の習慣』(NHKスペシャル取材班著、講談社、本体価格1,300円)

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ガラスのなかのくじら

2018-12-24 15:47:38 | 

 街の中のすいそうで住んでいる、くじらのウェンズデーはすいそうしか知りません。つまり、海の存在も知らない。名前のウェンズデーは日本語の水曜日であり、週の真ん中。すべてのものの真ん中に自分がいると思っているウェンズデー。

 ある日、とおくの、とおくに、あおいものが見えたので、ジャンプすると、そのブルーは自分にとってかけがえないものに思えてきたので、さらに高くジャンプします。ウェンズデーのジャンプは見学者からは喜ばれます。

 パイパーという女の子がウェンズデーに伝えます。

 「あなたの ほんとのおうちはここじゃないわ あなたのほんとうのおうちはうみよ」

 困惑したウェンズデーは最大級のジャンプをすると、すいそうから飛び出し、そのまま海へ流れていきました。ジャンプして見た、このあるブルーに到達していました。そうです、うみのまんなかへ戻ってきたのです。

 思い切って行動したらいいんだよ!誰にも帰る場所があるよ!自分の身を投げ出せる、自由を感じる場所が、ということが教えられますね。考え方によれば、ジコチュウでいるよりもみんなと一緒の方が素敵だよ!っていうメッセージにもなります。

『ガラスのなかのくじら』(トロイ・ハウエル&リチャード・ジョーンズ 作、椎名かおる 訳、あすなろ書房、本体価格1,500円)

 

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禅に学ぶ人生の知恵 澤木興道名言集

2018-12-24 15:28:06 | 

   澤木興道氏は明治13年生まれ。幼い頃に両親を失い、貧しい養父母に育てられ、17歳に永平寺にて出家。各地の道場を転々とし、「移動僧堂」、「宿無し興道」と称された有名な禅師。禅は一般的には難解と感じられるも、彼の名言は比較的理解しやすく、禅の本質が表現されています。例えば、

 「今! 今! 今! 一生が今の連続である。」 → 過去はなく、未来はまだ、今があるだけ。

 「とにかく『ただ』する。座禅ばかりでない。何もかも『ただ』する。」 
 → 凡事徹底。雑念入れず、集中する

 「自分に自分を自分で自分する」 → 人の評価を気にせず、自分らしく生きる。

 「安心とは足るをしることをしる日暮らしである。あべこべに、足ることを知らぬ日暮らしが煩悶(はんもん)である。」 → 執着せず暮せ!

 「あなた方が見ているところで善人ならば大したものではない。あなた方が見ていないところで善人が本当の善人である。」
 → 評価されるために善行をするのではなく、生きる使命のために善行をせよ。

など、ストレートで、こねくり回していません。難しく考えず、この名言集から禅を学ぶのもいかがでしょうか?

『禅に学ぶ人生の知恵 澤木興道名言集』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、本体価格1,400円)

 

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座右の書『貞観政要』

2018-12-23 15:40:42 | 

 『人生の教養が身につく名言集』(出口治明著、三笠書房、本体価格1,400円)を以前に読んだとき、出口さんがとても素敵な言葉を紹介してくれました。その言葉の掲載している中国古典が本書です。それは、

 「それ銅をもって鏡となせば、もって衣冠を正すべし。古をもって鏡とすれば、もっと興替(国の行く末)を知るべし。人をもって鏡となせば、もって得失を明らかにすべし。朕つねにこの三鏡を保ち、もって己の過ちを防ぐ」(李世民)

 この意味は、ひとつ目の鏡は自身の容姿を観る、つまり、良好な健康状態やリーダーとしての振る舞いを見ること、ふたつ目の鏡は歴史を学び、目の前の課題解決に役立てる、3つ目はリーダーに諫言してくれる人をそばに置くことです。

 この言葉を発した、唐の2代目皇帝・李世民の言動を記録させた『貞観政要』には、それ以外にも多くの名言で満ち溢れています。例えば、

 「君主(リーダー)は、部下に支えられ、頼るしかない寄生階級」

 「何もしないのが理想のリーダーである。何もしなくても組織が成り立つのは、適材適所に人を配置できているから。リーダーは部下の適性を視る目を持たなくてはならない。」

 「そして、任せたことは任し切れ!」

など、まさしく組織運営における要ですね。そして、「あらゆる組織の急務は、後継者を選ぶこと」であり、一番難しいとしている点は、組織の永続における最難関かもしれません。

 また、組織において、リーダーの器以上のことはできないから、器を大きくすることが必至だと思っていましたが、出口さんの考えは斬新です。

 「人の器のおよその容量は決まっていて、簡単に大きくすることはできない」

から、「器の中身を捨てる」こと、「空っぽの状態に戻せ」と提唱しています。器に入っていた考えや志向、価値観に囚われず、謙虚になって、新しい考え、部下からの直言を取り入れる上司になれということです。素直になるのは難しいことですが、これこそが人の度量でしょう。

 本書はリーダーだけの書ではなく、部下の直言が君主に採用されるためのノウハウなど、臣下が読んでも参考になるし、目指すリーダー像も描けます。出口さんが「座右の書」としている、『貞観政要』は非常に高価値のある古典ですね。

「座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」(出口治明著、KADOKAWA、本体価格1,500円)

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人生を変える80対20の法則

2018-12-17 15:48:26 | 

 昨日開催の、井戸書店の「大人の人間学塾」の課題図書でした。500ページの中でも、第1部と第3部を読んでの、読書会でした。輪読後も多くの意見が噴出しました。

 まず、80対20の法則とは、

 「投入の20%が産出の80%、原因の20%が結果の80%、努力の20%が報酬の80%を生む。ビジネスの世界で、(中略)売り上げの80%をもたらすのは、20%の製品であり、20%の顧客である。利益の80%もやはり、20%の製品、20%の顧客がもたらしている。」

です。

 そして、80対20の法則の利用法として、80対20分析と80対20思考をあげられていますが、私が思うに、80対20思考を常に持ち、80%を生むにはどの20%に注目するべきかをまず検討することが大切です。無駄な努力をするのではなく、「最小の努力で、人生の主導権を握る」ことを念頭に置くことが、豊かな人生に導くでしょう。そこでヒントになるには、

 ・広く浅くではなく、取捨選択する
 ・多くの分野で平均点を取るのではなく、1つの分野で突出した成績を上げる。
 ・日常生活では、できる限りアウトソーシングを勧める。
 ・いちばん得意とすること、いちばん楽しいと思うことだけをやる。

ではないでしょうか。

 とは言え、例えば、組織の中で、20%の利益や仕事しかしない分野に位置づけられた場合はどうすればよいのか?本当にそれらの人は不必要なのか?そんなことはないでしょう。その人たちの存在があればこそ、80対20の法則は活きるはずであり、100%対100%はあり得ません。組織の中では、リーダーが、組織員を適材適所に配置する力を発揮すべきであり、そこで活躍する人がいれば、組織は活性化するし、組織員の多くは幸せを感じるでしょう。

『人生を変える80対20の法則 』(リチャード・コッチ著、 仁平和夫・高遠裕子 訳、CCCメディアハウス、本体価格1,800円)

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緑のなかで

2018-12-14 15:39:37 | 

 北海道のH大学、つまりは北海道大学を舞台に、東京からH大学へ入学し、工学部3回生の啓太が所属するサークルや北大の寮生活を満喫しながらも、東京の実家で母が失踪する事件や、高校の同級生との交流を絡めながら、自分の進むべき道に迷う姿を描いています。

 まずは、北海道の大地、キャンパス、寮が見事に書かれています。活字を追うだけで、脳内に情景が浮かんできます。その美しい後景の前で、母との関係、自分の進路、そして、友だちとの友情や自死など、子どもから大人へ成長する啓太の心は、その前景として揺れ動く。特に、どう生きるかについて、啓太は

 「正解なんてないんじゃないか?あ、いや、今のおれたちで正解なんじゃないか?(中略)それぞれが、みんな正解でいいんじゃないだろうか。」

と吐露します。彼自身、子どものころから、レゴいじりが好きで、その作品を双子の弟の絢太(あやた)に絶賛されてから、建築に興味を示し、橋建設の道へ進む。つまりは、子どものころからの積み重ねで、今の自分が形作られ、その延長線上に将来の自分が現れるのでしょう。そういう意味では、一日一日が大切ですね。いくつになっても、今の自分を見つめましょう!

『緑のなかで』(椰月美智子著、光文社、本体価格1,500円)

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ふくびき

2018-12-10 15:19:45 | 

  兵庫県書店商業組合は12/2(日)に「くすのけしげのり講演会」を開催しました。講演後の謝辞を担当していましたので、前日に予習を兼ねて、クリスマス絵本コーナーに陳列している本書をレジで読みました。読み進むうちに、あかん!レジで読んだらまずい!涙がにじんでくる~油断するとボロボロになりそうでした。

 当日も、くすのき先生が「ふくびき」を読み聞かせてくれ、会場でもうるうるしていました。

 昨日の論語塾で、論語を教える代わりに、集まってくれた子どもたちに「ふくびき」を読み聞かせしました。論語塾で読むに値する絵本です。

 姉と弟はおかあさんに、バックをプレゼントしようと、クリスマスイヴの日に商店街へ買いに行きました。持って行ったお金は80円。もちろん、買えるはずもなく、肩を落とす姉はポケットにある福引の券を取り出して、ふくびきの3等賞品のバックをあてるべく、ふくびきコーナーへ行きました。しかし、手に持っていたのはふくびき補助券1枚だけ。ふくびきに参加することもできず、二人は家路につきます。郵便ポストの下に、ふくびき券が落ちているのを発見した姉は、ふくびきに再度、挑戦する。今度は3等賞を当てるが…。

 姉の正直さ、ふくびきコーナーに集う大人たちの優しさ、そして、子どもたちの母への思いやりの気持ち、どれも温かい気持ちを芽生えさせてくれます。おかあさんにとっては、この二人の子どもこそが「さいこうのクリスマス・プレゼント」。モノではなく、目の前に座る我が子こそがいとおしい存在なのです。

『ふくびき』(作/くすのきしげのり、絵/狩野富貴子、小学館、本体価格1,500円)

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名古屋円頓寺商店街の奇跡

2018-12-05 14:41:53 | 

 商店街で賑わっているのは、本当に数少ない。当地、板宿の商業地もシャッターが下りるまま、開かずのお店も見受けられます。商店街、市場の店舗は専門店であるだけに、店を失うということはその商品についてのプロを町は失うことになります。スーパーやコンビニ、インターネット通販でも、選ぶ自分しか頼る人はいないので、結局は売れている物を買うことになります。そういう意味でもプロのいる店の存在は大きいと思います。

 本書で取り上げている、名古屋円頓寺商店街も、後継者不足でシャッター街化していく過程にありました。しかし、甦る道筋をつけたのが、「よそ者」である、建築家の市原さん。一度閉じたシャッターを開けるために、大家さんと借り手をコーディネートしつつ、物件をリノベーションして、店を徐々に増やしていく。入店するお店もオリジナル性の高い、つまり、円頓寺商店街でないと買えない店舗が生まれていく。また、「長く続く店=老舗があることを大切にする」、だから新規店舗も長く続くことを目指す。

 また、イベントとしてパリ祭を興し、そこでの出店者もここにしか出店しない業者しか入れない。七夕ではないが、年に1度の出会いを楽しむお祭りにしています。

 市原さんの言葉は今の商店街には重要です。

 「客を集める繁盛店がたくさんあるのが、活気ある商店街です。(中略)店を誘致する時の判断は、老舗に成り得るポイントがあるかの見極めだと思います。それにはまず個性的で業態に特徴があるかということ。もうひとつは、ファンやサポーターを得られるカリスマ性のある店主であること。言い換えれば、感度の高い店主ということです。」

 「訪ねる楽しみ、そして、住まう喜びのある街」にすることこそが、独自性を発揮できる商業地になるのでしょう。

『名古屋円頓寺商店街の奇跡』(山口あゆみ著、講談社+α新書、本体価格800円)

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新釈 猫の妙術

2018-12-03 13:41:06 | Weblog

 主人公は勝軒(しょうけん)という剣術者。彼は猫の言葉を解し、猫と話し合える。帰宅すると、彼の家の座敷の隅に大鼠(ねずみ)がいるのを発見。彼の飼い猫である白猫が追い出そうとするも、鼠の方が強く、手強い。白猫は、鼠取りの優れた技を持つ、向こう隣の黒猫に依頼するも歯が立たず、気で相手を威嚇する、米屋の虎猫も追い払われ、心の術を持ち合わせる、長屋の灰猫も鼠に噛みつかれる始末。最後に、「武神」の噂を持つ古猫に御出ましを願うと、いとも簡単に大鼠を咥(くわ)えて、座敷外へ運んでしまいました。

 勝軒と4匹の猫は、古猫になぜ退治できたか、その奥義を尋ねました。

 「技の見かけは妄想と知れ。技の修行を通じて、そこに隠れた道理こそを我がものとせよ。」

 「道理に合った気こそが相手を打ち負かす」

 「心の内の道理の声に耳を済まして待てばよい。待てば、勝手に『感』が動き、気がおぬしらを動かす。」

 これだけでは理解に苦しむため、老荘思想や禅の教えを紐解きながら、古猫の妙術を解説しています。

 まずは、道理を得るために技を磨く稽古を積む
「勝ちたがらない」⇒負けなければよい
「そうしよう」とする「念」、考えることをせず、心の「感」に従う
「感」を身につけるのも、稽古の積み重ねしかない
執着を捨て、何が起ころうと柔軟に変化する心を磨け

 相手が戦いたくないと思わせる存在になるためには、どんな状況にも対応できる泰然自若な心を持つことこそが人の成長の到達点でしょう。

『新釈 猫の妙術 武道哲学が教える「人生の達人」への道』(佚斎樗山 著 、高橋有 訳、草思社、本体価格1,300円)

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