あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

2028年 街から書店が消える日 本屋再生!識者30人からのメッセージ

2024-05-29 08:23:26 | 

 業界を一刀両断で斬り捌き、見えない課題も水面に浮上させてくれています。

 この業界は「逆U字型」です。出版社と書店は規模が小さく、その中を取り持つ取次が大きい。だからこそ、業界を変革する力を発揮してほしいのは取次だと思っています。本書でも取次からのコメントが出てこなかったのは遺憾でしかありません。業界の未来予想図をぶち上げてくれれば、末端の街の書店主にも希望が持てる。正味改定やロングセラー商品の買切など、すぐに着手しないと、2028年という期限が前倒しになります。

 書店も他力本願ではなく、自力で復活への道を歩まなければなりません。現状では本だけ販売していても泥沼へ沈下していくだけ。危機を好機に診ないといけません。「イノベーションの端緒は『危機』だ」という言葉は真実でしょう。自らの長所を伸ばす思いで、2029年も笑顔で店頭に立てるように。 

『2028年 街から書店が消える日 本屋再生!識者30人からのメッセージ』(小島俊一著、プレジデント、本体価格1,700円、税込価格1,870円)

 

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風に恋う

2024-05-28 17:11:48 | 

 全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞した千間学院高校の吹奏楽部を取り上げたテレビドキュメントを観て、吹奏楽を始めた茶園基は中学時代に全日本吹奏楽コンクールに進めなかったのを機に吹奏楽をやめる決心をしていました。千間学院高校に入学したのも関わらず。入学後、そのテレビで部長だった不破瑛太郎が吹奏楽部のコーチに就任したのを知り、基は彼からの誘いもあり、吹奏楽部の一員となります。

 瑛太郎は全日本吹奏楽コンクールへ再び導くために、現在の吹奏楽部にカンフル剤を注入することも加味し、1年生の基を部長に抜擢します。男子校だった当時とは違い、共学になり、しかも大学進学校へ軸足を移した学校になったため、練習の時間の確保もままならない状況下、瑛太郎は「勉強も部活も、自分の納得いくように頑張って、他の誰かじゃなく、自分のためにな」と部員に声をかけます。それは瑛太郎自身が吹奏楽に没頭したから。

 部員間の疑心暗鬼もありながらの吹奏楽部の快進撃のドラマは本書に譲り、音楽を追求した基は「大事なものを大事にし続けるには努力しないといけない」という青春ならではの思いを胸にサックスを吹きます。

『風に恋う』(額賀澪著、文春文庫、本体価格810円、税込価格891円)

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哄(わら)う合戦屋

2024-05-21 15:51:37 | 

 室町時代の末期の天文18(1549)年~19(1550)年の中信濃を舞台にした戦国の物語。中信濃は大名になる手前の武士団の群雄割拠の状態で、南部に位置する遠藤吉弘の手腕で内政が行き届き、小さいながらも民から慕われていた領主。但し、軍事面では弱点がある遠藤家に豪傑な武将としても軍師としても名高い石堂一徹が加わることになります。遠藤吉弘には若菜という姫がおり、彼女の魅力も遠藤家には大きな存在となっていました。

 一徹の力量で、遠藤家は四千石から二万四千石までのしあがり、小大名となります。四十万石の武田信玄が中信濃へ攻め入る前に、一徹は中信濃平定へと道を進めるも、吉弘は一徹の策を取らず、中信濃豪族連合軍で信玄に向かいます。さて、その後は・・・。

 一徹と若菜の淡い恋も描きながら、「大志ある者のみが大業をなす」、「蟹は自分の甲羅に合わせて穴を掘る如く、人もまた、自分の器量に見合った穴がある」など、戦国前期の男の生き様はとても面白い。

『哄(わら)う合戦屋』(北沢秋著、河出文庫、本体価格790円、税込価格899円)

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わたしの解放ガイド

2024-05-13 15:34:07 | 

 こころのしくみについて、顕在意識と潜在意識の存在は理解しても、また、それについての幾冊もの本を読んでも、何だかよくわからないままでしたが、今までの蓄積とともに本書で少し視界が広がりました。

 自覚している顕在意識と無自覚な潜在意識がつながると、もやもやしている自分にオサラバし、悩みや不安が気にならなくなり、自分が望んでいることが実現します。では、なぜつながらないか?

 その理由は四つあると考えられています。一つは「自分はこうありたい」と考えているにもかかわらず、「他者を介在させている」ためにもやもやが募ります。自分は変えられるけど、他人は変えれません。そこをよく認識しなければなりません。もう一つは、自分にもっとフォーカスせよ!です。自分のやりたいことを「自分主体の視点」で選択していく。これは『私のすべてを私が許可する“眠りのセラピー”』(七海文重著、CLOVER出版)で書かれていた、「幼児決断」からの決別と同じかもしれません。

私のすべてを私が許可する“眠りのセラピー” - あなたの本の世界を変えましょう! (goo.ne.jp)

 三つ目は「プライベートの優先」、そしてSNSなどの他者の情報に惑わされている現状です。ここにも他者へベクトルが向かう悪循環があります。

 「こうなりたい」「こうしたい」という思いを強く持ち、追求していく、ことこそが自分自身の解放につながるはずです。

『わたしの解放ガイド』(OCO著、ワニブックス、本体価格1,500円、税込価格1,650円)

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書いてはいけない

2024-05-09 12:20:37 | 

 けっして触れてはいけない3つの「タブー」について、ステージ4のガンに罹患している身であえて書いてくれました。

 ジャニーズの性加害の件はその通りの「忖度」の世界です。

 財務省の財政緊縮主義に関しては、言論の自由があるにもかかわらず、財務省の方針に異を唱えるメディアや評論家に対して税務調査という威圧をかけるとは子どものいじめさながらです。『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』(中野 剛志著、KKベストセラーズ)にも「消費を盛り上げるには消費税の減税を行うべき」と書かれていましたが、財務省は自己中なのか全く動じません。小売りの現場で毎日を送る人間にとっては財政緊縮主義は本当に頭が痛いです。

 最後の日本航空123便の墜落事故の原因が書かれている通りであれば、驚くべきことであり、ひた隠しに隠す国、そして、その原因を知るアメリカ政府にゆすられている構図は腹立たしさを感じます。真実を知りたいですね。

 今回の裏金もそうですが、隠す裏にはとんでもないことがあるとしか考えられません。

『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』(森永卓郎著、フォレスト出版、本体価格1,500円、税込価格1,650円)

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こどもを野に放て!  AI時代に活きる知性の育て方

2024-05-05 10:31:51 | 

 私も愛用している登山アプリ「YAMAP」創業者の春山慶彦氏が、養老孟司、中村桂子、池澤夏樹の3氏と自然観についての対談集。春山慶彦氏の読書人生も素晴らしく、山を愛する人は本も読みます。

 「地域で受け継がれてきた自然観や祈りが具体的な行為として再興し、人々の生活に組み込まれていけば、風景・風土はより豊かに、美しくなっていく」と主張する春山氏に対し、3氏ともが話すのは、日本人の自然観と西洋のそれとの違いです。西洋は自然に対峙し、征服する図式であるのに対し、日本は自然に畏敬の念を持ち、人間はその一部であると考えます。西洋の一神教に対して、日本はアニミズムがいまだに根付いているためだと思います。

 但し、日本人もグローバリズムの流れに巻き込まれ、西洋の自然観に染まりつつあります。そこで「自然の中で五感を活かせ!」という提案です。自然を身に感じる日を一日でも多く持ちたいものです。

『こどもを野に放て!  AI時代に活きる知性の育て方』(養老 孟司・中村 桂子・池澤 夏樹・春山 慶彦著、集英社、本体価格1,600円、税込価格1,760円)

 

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Z世代化する社会 お客様になっていく若者たち

2024-05-01 14:11:51 | 

 Z世代と付き合いがほとんどないので興味本位で読んでみて驚きました。書名の通り、日本社会がZ世代化しているとは…。

 Z世代だけではないかもしれませんが、ビジネスにとって重要なのは、テーマパークのように「快楽」を提供するとか、推しへの熱狂によって「幸福感」を抱かせるなど、そういう状況にしかお金を落とさないため、大学でさえもテーマパーク化していると大学で教える著者は述べています。本末なら学びの必要性から取捨すべきですが、ゼミや講義の選択もコスパやタイパから決断するという本末転倒が起きています。

 また、ビジネスの顧客へのもう一つのアプローチは「不安」をあおること。学生たちは就活や、社会に出てからもこのままで良いのか、他の会社や職場の方が自分の成長により良いのでないか不安に陥っている人が多いらしい。

 こういったZ世代への大人たちの対応も怒らない、あるいは怒ることに会社から制限がかけられているために、大人たちも気の毒な立場に追いやられています。

 社会全体が「快楽」「幸福」を求めたり、「不安」を利用して、ビジネスへ誘導される仕組みに組み込まれているのが非常に癪です。人間は置かれた環境で、いかに他者の役に立つか、喜ばれる存在になるかが大事なのに、すべてはビジネス感覚で計られていく~損得だけではあかんと思うけどなぁ~

 

『Z世代化する社会 お客様になっていく若者たち』(舟津昌平著、東洋経済新報社、本体価格1,600円、税込価格1,760円)

コメント (2)
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