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国家と教養

2019-01-01 12:00:00 | 

 兵庫トーハン会50年を記念して、昨年の6月に講演をお願いした、藤原正彦先生の新刊です。本書の最終部にあるように、その講演でも読書の大切さ、書店の存在の大きさをお話ししておられました。今回は「教養」の意味と歴史、これからの時代においての教養を持つことの意義を述べられています。

 教養とは「リベラルアーツ」とも言いますが、これは古代ギリシャにおいて、奴隷にならないためには、自由人になるための技術である教養が必要でした。その後、時代を経て、イギリスやドイツでの教養のあり方は異なりますが、その重要性が低下しています。教養そのものが暇人の時間潰しと考えられ、衰退しています。教養よりも功利性、実利性、即時性に重きが置かれてきました。これは、世界のアメリカ化、グローバリズム、二度の世界大戦の影響と考えられています。

 しかし、教養を持つことに対しての再度の見直しがなされなければならない!それは、膨大な情報に対してのベース、物差しとしての必要性、もうひとつは、民主主義国家においては、主役である人民が選挙民として教養を持たないと、民主主義そのものが成立しないからです。そして、これからの教養には、「人文教養」「社会教養」「科学教養」「大衆文化教養」の四つを重んじるべきと、藤原先生は強調されています。

 教養へ近づくには読書がその人の骨格を担います。本書で引用されている、ロシア作家・チェーホフの言葉で、今年第一回目のブログを締めくくります。

 「書物の新しい頁を一頁、一頁読むごとに、私はより豊かに、より強く、より高くなっていく。」

『国家と教養』(藤原正彦著、新潮新書、本体価格740円)

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